さあ、いよいよ決勝だ。夏の甲子園、全国高校野球選手権はあす土耀日、2025年8月23日10時プレーボールの試合で優勝校が決まる。決勝のカードは日大三(西東京)ー沖縄尚学。東京勢と沖縄勢の決勝は107回の夏の大会史をさかのぼっても史上初。日大三の14年ぶり3度目の優勝か。沖縄尚学の初優勝か。日大三の強力打線が沖縄尚学の2年生左腕、末吉良丞がをどう攻略して打ち崩すのか、注目している。
変わりゆく高校野球、午後10時46分まで試合
今大会を通じて、時代とともに変わりゆく高校野球の「変革」を垣間見た。その一つの象徴が選手の健康を守るため、最も暑い日中の時間帯に試合を避ける「午前の部」「夕方の部」の二部制だ。二部制は昨年から1日3試合の日に導入されたが、今大会は1日4試合の日にも取り入れられた。その甲斐もあって、救護室に運ばれた熱中症の疑いの選手の数は前年から半減したという。
その一方で、物議を醸した側面もある。8月8日の高知中央ー綾羽(滋賀)の第4試合は、その前の第3試合が雨の影響で67分中断したことが影響し、プレーボールが午後7時49分にずれ込んだ。記録が残るなかで史上最も遅く始まった試合となり、延長タイブレークまでもつれた試合終了時刻も、史上最も遅い午後10時46分だった。「高校の部活がそんな時間まで?」という声が私の周囲からも実際、聞かれた。
「残り数分のためにもう一回、甲子園に?」
大会主催者の日本高校野球連盟と朝日新聞社はあらかじめ、午後10時時点で試合が終わらない場合には次のイニングには入らず、原則として翌日に「継続試合」とするとしていたが、その原則をその試合に限って撤廃した。試合前に「継続試合よりは少し延びても最後までやりたい」という両チームの意向を確認していたという。
選手、家族、ブラスバンドを含めた応援団が甲子園球場に詰めかけるなか、「残り数分のためにもう1回来るというのを避けたいという思いもありました」と朝日新聞社の志方浩文高校野球総合センター長。「この時間になったことは大会本部としては反省で、この判断が正しかったのか検証したい」としたが、私自身は臨機応変で総合的に適切な対応だったのではと感じている。(下に記事が続きます)
響いた仙台育英・須江監督のフレーズ
高校野球の試合が深夜に差し掛かることについてのネガティブな意見に、私自身はそんなに目くじらを立てるほどのことではないと思っている。高校時代に留学していたアメリカ・ノースカロライナ州の公立高校では夜20時試合開始のバスケットボールやアメフトのVarsity(学校代表チーム)の試合に友人とドライブして出かけては学校を上げての応援で盛り上がるのが日常だったのを思い出す。
そんなことを思っていた矢先、ある高校野球指導者の言葉にハッとさせられた。それは、沖縄尚学との三回戦に延長タイブレークの末に惜敗した仙台育英の須江航監督(42)の総括の取材で出た言葉だった。
2部制、いいじゃないですか。夜遅いと、いろんな批判の声もあるのは百も承知なんですけど。そんな軽いこと言うなって言われたら怒られちゃうかもしれないですけど、「人生最高の夜更かし」ですよ。夏休みの思い出で、友達と夜更かししたんだって、最高の思い出じゃないですか。全部肯定的に考えています。
須江監督と言えば、2022年夏の甲子園で仙台育英を優勝に導いた際、コロナ禍で部活動が制限され、当たり前だった野球ができなかった生徒の気持ちを代弁し、「青春ってすごく密(みつ)なので」という印象的なフレーズを優勝インタビューで語ったその人だ。その言葉で、2022年新語・流行語大賞の選考委員特別賞を受賞したことを覚えている人も多いだろう。
「人生最高の夜更かし」なんて、コピーライターでもなかなか出てこないフレーズだ。選手と思いを一つにしているからこそ出た、正直な思いなのだろう。毎日あるわけでもない、その特別な甲子園の夜ぐらい、別に夜更かししたっていいじゃないか。管理すること、選手を縛ることだけが教育じゃない。そうとも聞こえた。
選手の安全、健康管理と天候不順による試合の遅れで苦慮した大会主催者も少なからず、救われたのではないか。私自身はその言葉に癒され、ひざを打って共感した。
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