ハンドボールの国内トップリーグ・リーグHプレーオフ決勝が2025年6月15日、東京・代々木第一体育館で行われました。女子のファイナルは、ブルーサクヤ鹿児島が27-25で北國ハニービー石川を下し、リーグH初代女王となりました。最高殊勲選手賞には、準決勝から2試合続けて活躍したGKの宝田希緒が選ばれています。
11連覇か、15年ぶりか
リーグHの前身の日本ハンドボールリーグから数えて、北國ハニービー石川はプレーオフで10連覇しています。大幅に主力が入れ替わった2024~25年の第1回リーグHでは、レギュラーシーズン2位とやや苦戦していましたが、プレーオフ準決勝のアランマーレ富山戦に36-24と快勝。伝統の堅守速攻で大差をつけています。やはりプレーオフの大舞台に一番慣れているのがハニービーです。
対するブルーサクヤ鹿児島は、レギュラーシーズン1位通過。プレーオフ準決勝の香川銀行シラソル香川戦は最大7点ビハインドをひっくり返しました。いつも優勝候補と言われながら、プレーオフを制したのは日本リーグ時代の2010年が最初で最後。元韓国代表で、東京女子体育大学からの内定選手だった張素姫(チャン・ソヒ。現富士大監督)が大活躍した時以来のプレーオフ制覇を目指します。(下に記事が続きます)
前半10分:9-3、ブルーサクヤ最高の滑り出し

決勝戦は立ち上がりからブルーサクヤ鹿児島がペースをつかみます。左腕エースの金城ありさがキレのいいシュートを叩き込み、GK宝田希緒が早々に7mスローを2本阻止しました。レフトウイングの笠泉里も絶好調。レフトバックの伊地知亜妃が連続してカットインを決めて、前半10分で9-3とリードを広げます。ここでハニービーが最初のタイムアウトを取りました。
前半15分:石川空のミドルでハニービー反撃開始

タイムアウト後のハニービーは、GK犀藤菜穂の好セーブから徐々にペースをつかんでいきます。前半14分にはライトバックの石川空がステップシュートを打ち込みました。さらには前半15分、センターの松本ひかるがDFの前でスクリーンをかけたところに、石川がミドルシュートを放ちました。2人のらしさが出た得点で、7-10と3点差まで追い上げます。石川は「決勝の前半は、自分の腕が振れる間合いが取れていた」と言っていました。(下に記事が続きます)
前半29分:キャプテン佐原奈生子の速攻で、北國がついに同点に

その後もブルーサクヤリードの展開が続いていましたが、前半の終盤にハニービーが連続得点。前半29分にはキャプテンの佐原奈生子の速攻が右側で決まり16-16。ついに同点に追いつきました。世代交代したチームをまとめるのに苦労してきた佐原。その前に1本速攻を外していましたが、今度は決め切りました。身長180㎝でも速攻で先頭を走れるのが佐原の魅力。お家芸とも言える「堅守速攻」で、ハニービーベンチは盛り上がりました。
後半9分:伊地知亜妃の連続得点もありブルーサクヤ4連取

同点に追いつかれたブルーサクヤでしたが、後半の入りで4連取して、再びリードします。青麗子の7mスローから始まり、服部沙紀の速攻、レフトバック伊地知がアウト割りとミドルシュートで連続得点を挙げました。今シーズンの伊地知はレフトバックと3枚目という攻守のキーポジションを任されて、チームのバランスを整えてきました。レギュラーシーズン1位通過の陰の功労者です。
後半16分:小柴夏輝の芸術的スピンムーブ

ハニービーもじわじわと追い上げ、後半16分にはセンターに入った小柴夏輝が、360度ターンするカットインを決めました。バスケットボールならスピンムーブ。サッカーならルーレット。ハンドボールなら何と呼べばいいのでしょうか。パッシブプレー寸前から、広くなった3枚目との1対1で、鮮やかな個人技を見せつけました。これで20-21の1点差。開幕当初は絶好調だったものの、途中から壁にぶつかっていたルーキー小柴が、大一番で「らしさ」を取り戻しました。小柴は多彩な個人技で点を取れるセンターです。
後半22分:服部沙紀のパスカット炸裂

後半22分、ハニービーの2次速攻で、ピヴォットの尾辻素乃子がセンターの松本へパスを返しました。その瞬間、ブルーサクヤの右の2枚目にいた服部がクロスアタックでパスカット。そのままワンマン速攻で25-22としました。ハニービーの選手が思わず膝に手をついてしまうような、ダメージの大きいプレーでした。伊地知が「今日の決勝で思い出すのは、服部さんがクロスでパスカットした場面」と言うように、勝敗を分けたプレーでした。
服部のパスカットだけでなく、後半のブルーサクヤはDFで足が動いて、相手をわずか9点に抑えています。宋海林(ソン・ヘリム)ヘッドコーチは「相手にシュートを打たせない。ルーズボールには飛び込んででもマイボールにする。選手全員がDFをちゃんとやった結果」と満足そうでした。
後半24分:GK宝田希緒、相手エース止める

もうひとつの見せ場は後半24分。タイムアウト明けのハニービーは7人攻撃を仕掛けてきました。ライトバックの石川が大きくインに動いて、少し左側のスペースに切れ込みます。そこにブルーサクヤのGK宝田が前に詰めて、石川のシュートをセーブ。勝利を決定づけるビッグプレーでした。宝田は「あの場面は必死でした。DFの間から出てきたシュートだったから、前に詰めて、最後は『体に当たってくれ』という気持ちでした」と言います。準決勝に続いての大活躍で、宝田はプレーオフのMVP(最高殊勲選手賞)に選ばれています。(下に記事が続きます)
自分たちの力を発揮できた

27-25で勝利したブルーサクヤ鹿児島は、15年ぶり2度目のリーグ制覇。リーグH初代女王のタイトルを手に入れました。宋ヘッドは「2024年のプレーオフ(準決勝で8点リードを逆転されて敗退)、2024年12月の日本選手権(7点差で敗れる)と、自分たちの力を出せずに自滅してきた。だから、どうやったら選手が壁を乗り越えて、自分たちの力を発揮できるのかを考えながら、練習から取り組んできた。個人個人の心が強くなって、負けず嫌いになったことが、今日の結果にもつながった。一番感謝したいのは、力を発揮してくれた選手たち」と言っていました。
ベンチキャプテンでチーム最年長の河嶋英里も、どうすればコートに立った選手が力を発揮できるかを考えていました。「若い選手は不安や緊張もあったと思うけど、それに打ち克ってコート上で戦えていました。全員が共通認識を持って、リーグH初代女王になる目標に向かって走り切れたことが、この結果につながったと思います。プレーオフ直近まで走り込みを取り入れ、戻りの意識を徹底したことも、相手の良さを封じられた要因のひとつです」
持てる力を発揮したブルーサクヤ鹿児島が、歴史を塗り替えました。北國ハニービー石川の連覇を10で止めて、リーグH初代女王となったこの1年は「語り継がれるシーズン」となるでしょう。
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