日本サッカー協会(JFA)は、男子日本代表が米国で現地時間2025年9月6日にメキシコ代表と、9月9日にアメリカ代表と国際親善試合を行うことを発表した。米国遠征の行程をたどりながら、ひと足早く2026年北中米ワールドカップのシミュレーションをしてみよう。
メキシコでの試合はなし
日本代表チーム「サムライブルー」が9月6日にメキシコ代表と対戦する会場は、カリフォルニア州オークランドにあるオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムだ。普段はアメリカンフットボールや野球が行われており、米国ならではの独特の雰囲気を体験できる。
9月9日にアメリカ代表と対戦するのは、オハイオ州コロンバスにあるサッカー専用スタジアム「Lower.comフィールド」で収容人数は20,371人だ。2試合とも米国で行うことになった。
2026年ワールドカップ全104試合のうち、78試合が米国(11都市)、13試合がカナダ(2都市)、13試合がメキシコ(3都市)で行われる。最も試合をする確率が高い国でのリハーサルだ。米国で試合を行うことは、日本代表にとって移動なども含め非常に良い準備になる。
一方で、やや物足りなさも残る。アメリカ代表との試合を行うスタジアムは、決勝戦を含むW杯本大会8試合が行われるアメフットの球技場「ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアム」の82,500人と比べると収容人数が約4分の1だ。
米国は宿泊施設や交通、インフラが整備されており比較的、治安もよくスポーツをする世界最高レベルの環境が整っている。だからこそ、できることならメキシコ代表とは、メキシコ国内で試合を組みたかった。
開幕戦を含む5試合の会場となるエスタディオ・アステカ(メキシコシティ、87,523人収容)が満員になると圧倒的な雰囲気になる。そこで強豪メキシコを相手にサムライブルーがどのような戦いをするか見たかった。(下に記事が続きます)
本番に即した環境を
森保一監督は「世界トップ基準の環境で試合を行える」と感謝を述べているが、社交辞令だと思いたい。本大会まで1年を切る時期に入ってくるが、ここまできたらトップ基準の環境より、本大会に即した環境で試合を行うことの方が重要だからだ。
インターナショナルマッチウイーク(国際試合週間)は時間が限られており、韓国代表が9月7日にアメリカと、9月9日にメキシコと対戦することも決まっている。日本にとってアウェイでの試合となり、会場の選定は相手チームの意向が強く反映される。また、興行面や治安など米国で開催するメリットも理解できる。
米国でも近年、サッカー熱は高まりを見せているが、ようやくメジャースポーツの仲間入りをしたところでサポーターは節度が伴っている。それに比べて、メキシコではサッカーが最も人気なスポーツであり、サポーターの熱狂度は米国の比ではない。
ラテンアメリカでは、なぜか試合の前夜にアウェイチームの宿舎の外で花火を打ち上げ、大量の楽器や音響機器を動員して夜通しでお祭り騒ぎをする場合がある。相手チームを睡眠不足にさせるために、有志のサポーターが集まって自然発生的に行われているのだ。このようなピッチ内外での緊迫した経験こそ、本当に日本代表が必要としているものではないだろうか。
日本代表の選手たちはヨーロッパや中東で多くの試合をこなして、かなり鍛えられているが、ラテンアメリカでプレーする機会は少ない。アウトローな中南米は、また別世界だ。(下に記事が続きます)
今後のマッチメイクに期待
この時期に本大会の開催地で試合ができることは幸運だが、不測の事態が起こりづらい米国は「ぬくぬく」して、やや生ぬるい環境だ。
ベスト8以降の試合は全て米国内で行われる。優勝を目指す日本代表は照準をノックアウトステージに合わせているということなのだろうか。まだそこまでの底力はなく、グループステージ突破をまずはしっかりと見据える必要があるだろう。
4年に1度しかない大会で、選手やスタッフの経験値は高いとは言えない。どれだけ平常心で臨むことができるかが成功の鍵を握る。
今後の日本代表のマッチメイクだが、抽選の組み合わせも考慮する必要はあるが、メキシコなど中南米の国へ遠征を行うことを期待したい。強豪国の多くの選手がヨーロッパ主要リーグでプレーしているため、欧州で対戦したほうが移動は楽だ。しかし、2026年W杯を目前に控え、ラテンアメリカで試合をすることは極めて重要だ。
対戦国の情報
メキシコ代表
- FIFAランキング(2025年4月3日時点):17位
- W杯戦績:17回出場し、最高成績はベスト8(1970年、1986年)
- 日本代表の過去の対戦成績:1勝4敗0分(5得点9失点)
- ハビエル・アギーレ監督。主力選手は、エドソン・アルバレス(ウェストハム・ユナイテッド)、サンティアゴ・ヒメネス(ACミラン)、ヨハン・バスケス(ジェノア)など。
アメリカ代表
- FIFAランキング(2025年4月3日時点):16位
- W杯戦績:11回出場し、最高成績は3位(1930年)
- 日本代表の過去の対戦成績:2勝1敗0分(7得点4失点)
- マウリシオ・ポチェッティーノ監督。主力選手は、クリスチャン・プルシック(ACミラン)、ウェストン・マッケニー(ユヴェントス)、タイラー・アダムス(AFCボーンマス)、ユヌス・ムサ(ACミラン)、クリス・リチャーズ(クリスタル・パレス)など。
森保監督「現在地を知る絶好の機会」
日本代表の森保一監督コメント:ワールドカップ本番を見据えた世界トップ基準の対戦相手、環境で試合を行えることに全ての関係者へ感謝申し上げます。ワールドカップに向けてチーム強化を進める私たちにとっても非常に重要な試合となりますし、我々の現在地を知る絶好の機会になります。今回対戦するメキシコ代表、アメリカ代表は両国とも世界的な名将に率いられた素晴らしいチームです。他方、我々SAMURAI BLUEとはFIFAランキングで順位(15位)が近く、似通った立ち位置にいると思います。これらの相手にも確実に勝ちにいき、さらに高みを目指したいと思います。2026年のワールドカップ本番で最高の景色を見るための準備を選手・スタッフ全員で行ってまいります。
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