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【ハンドボール】デフリンピック日本代表候補キーマン5人 | 初出場へ闘志

デフハンドボール日本代表候補の辻井隆伸(左上)齋亮人(左下)津村開(中央)大西康陽(右上)定野巧(右下)=いずれも久保写す、以下すべて
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2025年11月15~26日に、東京2025デフリンピックが開催されます。日本で初めて開催されるデフリンピックに、デフハンドボール日本代表も初めて出場します。2022年に筑波技術大学で作られたデフハンドボールのサークルを母体に、トライアウトなどで経験者を集めて、代表チームは徐々に形になってきました。代表チームの核になるであろう5人の選手を紹介していきます。

目次

#6 津村 開:攻撃の要となる経験者

2対2の理解度が高く、カットインもキレキレ。津村はデフハンドボール日本代表のOFをリードする
2対2の理解度が高く、カットインもキレキレ。津村はデフハンドボール日本代表のOFをリードする

デフハンドボール日本代表では、頭ひとつ抜けた存在です。真ん中の2対2で相手のDFを崩したり、鋭いカットインで間を割るなど、ゲームメーカーであり、チームで1番の得点源です。小学生ハンドボールの聖地・京都府の京田辺市でハンドボールを始め、京田辺市立大住中学、京都府立桃山高校、大阪公立大学でプレーした本格派。就職で東京に出てきて、デフハンドボールの存在を知り、入って早々に日本代表の中核になりました。

センターで攻撃を統率する津村は「ハンドボールの専門用語に対応する手話がないので、簡単な言葉に落とし込んで、ハンドボールを理解してもらうようにしています」と言います。「大事にしているのはスペースの感覚。2対2なら、自分がスペースを使うのか、それともペアを組む選手(ピヴォット)にスペースを使ってもらうのか。スペースを作る人とスペースを使う人に分けて、相互理解を深めています。たとえばスペースに切れ込んだら、DFが寄るから、そこのスペースは狭くなるけど、別のところが広くなります。『こういう動きをしたら、こういうスペースが増える。そのスペースをどう使ったら、一番効率よく攻められるのかな』といった話をしています」津村がボールを持ってOFが始まるシーンが多い印象ですが、津村自身は「それはあまりよくないこと」と言います。デフハンドボール日本代表の亀井良和監督も、津村の個人技を高く評価しつつも「彼の個人技をチームとして生かせるように、他の選手が組み立てられるようにならないと、攻撃が行き当たりばったりになる」と、組織的なセットOFを求めていました。センターの津村の突破力を周りが使えるようになれば、チームの得点力がさらに上がるでしょう。(下に記事が続きます)

#7 辻井 隆伸:体を張って、チームを引っ張る

高校時代はピヴォットだった辻井だが、デフハンドボール日本代表ではライトウイングでプレーする
高校時代はピヴォットだった辻井だが、デフハンドボール日本代表ではライトウイングでプレーする

4月19日の都立小岩高校との強化試合で、辻井はキャプテンを務めました。試合後のインタビューでは「このような環境で試合をできたのは初めての経験。とても幸せでした」と、多くの観客の前でプレーできたことを感謝していました。

12-19で敗れた小岩高校との試合で、辻井はDFを課題に挙げていました。「健聴のチームと我々デフのチームでは、DFはちょっと違うんですよ。我々は声で指示を伝えられないから、急な動きができません。今日は真ん中でカットインされないようにしたかったのに、守りきれなかった。高校生相手に、もう少し守りたかったんですけど、やはり練習がもっと必要です」

キャプテンの辻井は、デフならではの難しさも痛感しているようでした。「毎日やれる学生の部活とは違うし、ましてや聞こえ方も様々です。耳が聞こえない人は手話で会話するし、補聴器を使えば聞こえる人は声で話したり、コミュニケーションの取り方もまちまちです。コミュニケーションのバリアがあるなかで、お互いにコミュニケーションを取れるようになって、練習がようやく軌道に乗ってきました。向いている方向はみんな同じなので、コミュニケーションのズレをなくして、さらに練習を重ねて、11月のデフリンピックまで仕上げていきたい」と話していました。

辻井から「キャプテンとしての僕はどうでしたか?」と逆取材された時、一瞬返事に困りました。健聴のハンドボールなら「声を出しているのが、いいキャプテン」という大原則があります。周りに声をかけて、チームメートを引っ張っていくのが、理想のキャプテン像です。ところがデフの場合、声がありません。何をどう評価したらいいのか、わかりませんでした。おそらく辻井も、キャプテンとしての立ち居振る舞いに悩んでいるのでしょう。とはいえ、右利きのライトバックという難しいポジションでハードワークする辻井は、間違いなくチームの精神的支柱です。シュート確率をもっと上げていければ、チームの盛り上げ役になれるはずです。(下に記事が続きます)

#9 齋 亮人:周りを活かし、スペースに切れ込む

齋は周りを活かせるタイプのバックプレーヤー
齋は周りを活かせるタイプのバックプレーヤー

川崎市のチームと対戦した2月の練習試合で、ひと際目立っていたのがバックプレーヤーの齋でした。ピヴォットの翁孝嘉がスライドして、DFを連れ去ったスペースに、齋が鋭くカットイン。リーグHで言えば、北ノ薗遼(ブルーサクヤ鹿児島)の得意技のようなプレーをしていました。これは間違いなくハンドボール経験者だと思って話を聞いたところ、中学、高校とプレー経験のある実力者でした。

宮城県の成田中学で、齋はハンドボールを始めました。「荒井啓貴先生にハンドボールの基礎を教わりました。僕の原点です」と言います。宮城の強豪・県立利府高校でもハンドボール部に所属しました。「中学、高校とエースがいたので、僕は『パスを回してあげるから、打ってね』というタイプでした。カットインしかできないし、自分で打つのは性に合いません」と謙遜していましたが、確かなハンドボール観の持ち主です。「パラレルとかクロスといったハンドボール用語に当てはまる手話がないので、ハンドボールの概念を伝えるのは難しいですね。だからパラレルは『並行』、クロスは『バツ』みたいに、シンプルに伝えています」。

高校を卒業後ブランクがあった齋は、デフハンドボールで8年ぶりにプレーしました。「8年ぶりにやっても、プレースタイルは変わりませんね」と、齋は照れていました。控えめな性格ながらも、デフリンピックへの思いは強く、「これまでは世界大会に縁がなかったので、世界の選手とハンドボールする経験を楽しみたいし、やるからには勝ちたい」と、静かな闘志を燃やしています。

#11 大西 康陽:打てて守れる、貴重な左利き

大西は貴重な左利きのシューターであり、3枚目DFでも貢献する
大西は貴重な左利きのシューターであり、3枚目DFでも貢献する

大西がハンドボールを始めたのは2023年の11月から。「筑波技術大学のデフハンドボールのサークルに、ボランティア感覚で参加したのがきっかけです。『彼らの練習相手になれたらいいかな』ぐらいの気持ちで参加しているうちに、仲間との交流が深まり、いつの間にか一緒にハンドボールをやるようになりました」

貴重な左利きの大西は、ライトバックが主戦場。自分の好きなタイミングで打てたら、強烈なシュートを放ちます。4月の小岩高校との強化試合でも、気持ちの入ったミドルシュートを叩き込んでいました。「気合だけは誰にも負けない」と、大西は笑顔を見せていました。とはいえ「多くのハンドボールファンの前でプレーする機会は初めてだったから、気合が入りつつも、ミスが多くなったので、こういった環境にも慣れていかないと」と、反省も忘れませんでした。

大西の隠れたストロングポイントは、左利きで3枚目を守れるところです。左利きの選手が攻守両面で柱になってくれると、チームのバランスが整います。「翁(孝貴)さんとは3枚目を長くやっているけど、他の選手と組む時に『誰がピヴォットを守るのか』をはっきりさせるよう、もっと練習でコミュニケーションを取るのがDFの課題かな。サイドシュートは(打たれても)しょうがない。その代わり真ん中はしっかりと守りたい」。左利きでシュート力があって、なおかつ3枚目でも貢献できる大西は、デフハンドボール日本代表で欠かせない存在です。(下に記事が続きます)

#12 定野 巧:競技歴1年余り、驚異の阻止率

定野を筆頭に、GK陣はデフハンドボール日本代表の強みになる
定野を筆頭に、GK陣はデフハンドボール日本代表の強みになる

手話で積極的に話しかけてくるなど、人柄のよさが目立つGKです。体重約120キロの大きな体で、シュートコースを消してしまいます。最近の日本では見かけなくなった「面で止める」タイプのキーパー。かつて日本代表で活躍した四方篤(元Honda)のようなキーピングで、会場を沸かせます。亀井監督は「定野さんは勇気のあるGK。シュートがくる場所で待っているのはとても怖いのに、それを我慢できるのが彼の凄いところ。GKの一番の資質は勇気ですから」と、GKを始めて1年ちょっとの定野の資質を絶賛していました。

2024年の1月からハンドボールを始めた定野は、当初は体重が140キロ台でした。「2024年の8月に体重が問題だと厳しく指導を受けて、今は120キロ台になりました。これからも減量して、体のキレを出して、もっと早く動けるようにします」と、定野は笑っていました。

今でこそ笑い話ですが、減量を始めた当初は大変だったと、谷口俊GKコーチは言います。「ヒザや足首をケガしてしまうと、デフリンピックに間に合いません。『だから生活習慣から見直していこう』と、定野さんには伝えました。去年の夏、定野さんは泣いていたんですよ。食べるのが大好きなのに、食事を制限しないといけないから。『でも、ハンドボールのために、自分の体を守るために、必要ですよね』といった話をして、トレーニングを続けていくうちに、半年で20キロ以上痩せました。減量にともなって、どんどん動けるようになりました。定野さんの伸び率は物凄いですよ」

GKには水島貴一、大崎英人と経験者が揃うなかで、定野はスタートで起用されるほどの急成長を見せています。「木村昌丈さん(レッドトルネード佐賀)の動画を見て、体の大きい人の捕り方の手本にしています」と言うように、とても研究熱心です。世界に通用するサイズのある定野が当たれば、デフリンピックで勝てる可能性が大いに高まります。

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