バレーボール国内トップのSVリーグで戦うことを目指して、まさに粉骨砕身の努力を重ねてきた選手たちと、それを夢見てきた関係者やファンの無念さにシンパシーを感じている。男子バレーチーム「北海道イエロースターズ」のことだ。SVリーグの下部にあたるVリーグで今季、レギュラーシーズンを26勝2敗と盤石な戦績で東地区優勝。資金面やホーム試合のアリーナ確保などすべての要件を満たして、3月にはSVリーグからライセンスも交付された。ところが、4月16日に公表されたSVリーグ第2回の判定はまさかの「NO」。立ちはだかったのは「奇数の壁」だった。
昇格降格なし。奇数なら既存クラブ優先
今回、「北海道イエロースターズ」の昇格が見送られた理由。それがSVリーグの以下の規約だ。
SVリーグは偶数クラブにて編成する。(VリーグとSVリーグの)昇降格は無いため、奇数クラブにSVライセンスが交付された場合、既存のSVクラブが優先的に2025-26 SVリーグに参戦する。
北海道イエロースターズのライセンスは序列では11クラブ目だった。3月の時点で財務基準の項目でライセンス判定が保留となっていた同じ北海道の既存SVリーグチーム「ヴォレアス北海道」が増資などの手当てをして、2回目の判定でクリア。最後は椅子取りゲームの10番目の椅子を皮肉にも北海道の同士、ヴォレアスにさらわれる形で、北海道イエロースターズのSVリーグ参入は見送られた。ヴォレアスとイエロースターズの関係は良好で、両チームをともに応援するファンも多い。(下に記事が続きます)
なぜ奇数はダメなのか
バレーボールのリーグで奇数クラブの運営が難しい理由は何か。関係者への取材を総合すると、どうやらそれは「試合が組みにくい」ことに帰結する。
例えば週末に2チームずつが対戦すると単純に1チームが余り、休みになる。しかもそのタイミングは開幕戦かもしれないし、優勝が決まる最終節かもしれない。どうしても偏りが出る。場合によっては休みが連続してしまうケースもありうる。それをできるだけ公平になるように調整しようとすると、週末だけではなく、平日開催も余儀なくされる。そうすると、今度はアリーナや審判の確保が難しい…。奇数クラブのマッチメイクはまさに難解なパズルのため、「偶数クラブで編成する」というSVリーグの前提もわからなくはない。
選手にとって1年は長い
北海道イエロースターズは潔くすでに前を向いている。フロントや監督は残留するV.LEAGUE MENで 「レギュラーシーズン連覇」「V.LEAGUE年間王者」の二冠達成を目指すとホームページで宣言した。郡浩也キャプテンは「SVライセンスを持っていながら、SVリーグで戦うことが出来ないことは悔しく思いますが、まだV.LEAGUEでやり残したことがあるということだと思います」とコメント。チーム全体を代弁するコメントが切なく、胸に刺さる。
20代がピーク、選手の平均寿命が30代前半とされるバレーボール選手にとっては一年一年が勝負。今回SVリーグの昇格が見送られたことによって、移籍や引退を意識する選手がいてもおかしくない。「奇数の壁」は明らかに選手の人生を変える。
ビデオ判定で「アウト」と判定されたボールは「イン」に覆ることはない。ルールの下で行われるスポーツだから、仕方がないと言われればそれまでだが、筆者自身はSVリーグの「奇数の壁」を「割り切る」にはもう少し時間がかかりそうだ。


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