車いすバスケットボールと車いすハンドボールを掛け持ちでプレーする諸岡晋之助が、2026年3月1日から三菱オートリース株式会社所属になると、自身のインスタグラムで公表しました。車いすハンドボールに関しては、国内初のアスリート契約を結んだ選手となります。車いすハンドボール日本代表のエースは、新たな道を切り開いています。
車いすハンド界初のアスリート契約

車いすハンドボール日本代表のエースであり、車いすバスケットボールでも活躍する諸岡晋之助は2026年3月1日より、三菱オートリース株式会社とアスリート契約を結びました。中学時代から思い描いていた「ハンドボールで飯が食える選手になりたい」夢を、障がいを負ったあとにかなえました。今回のアスリート契約についても「三菱オートリースが『車いすハンドボールはこれからの競技だよね』と理解を示してくれました」と、諸岡は嬉しそうに話していました。2026年に開催される車いすハンドボールの世界選手権へ向けて、心強いバックアップを得ました。
即席でも やること徹底

アスリート契約を結ぶ以前から、諸岡のプロ意識はかなりのものでした。2026年1月17日、金沢市で行われたリーグH(ハニービー石川対アランマーレ富山戦)で、車いすハンドボールの前座試合が行われた際も、試合の考え方やチームビルディング等を熱く語っていました。
この日は午前中に車いすハンドボール体験会が開かれ、講師を務めた日本代表クラスの8人が東西に分かれて、エキシビションマッチを行いました。合わせの時間がほぼないなか、当日組んだメンバーと意思疎通を図りながら、諸岡は東軍を勝利に導きました。
「僕らのチームで話していたことは、やることをやり続けていたら負けない。OFでチャレンジしてミスをするのはOK。そのかわりやるべきことをやれば、負けない。僕はロングシュートを外してしまいましたけど、チャレンジはした方がいい」 (下に記事が続きます)
OFが有利な競技の考え方

西軍のGK木村正也は日本代表でもっともスキルの高いGKで、諸岡自身も「僕はキムさんと相性が悪い」と認めています。実際に何本かシュートを木村に止められていましたが、諸岡は早い仕掛けで打ち続けました。
「車いすハンドボールの競技特性上、DFが不利なスポーツだなと感じます。DFは不利なことしかないんですよ。点は取られる。下手な接触をしたら退場になる。OFはどれだけチャレンジしても、シュートを外す以外のデメリットがない。OFはデメリットがない攻めができる。DFは制限されたなかで、シュートを決めさせないことしかできない。ディフェンシブに守る時間帯も必要だけど、OFが有利なスポーツだから、ディフェンシブになりすぎると追い込まれるのも事実です」
攻守の切り替え狙う

確かに車いすハンドボールには、攻撃側に有利な条件が揃っています。4人制なので、1人あたりのスペースが広く、スペースが広いほどOFが有利になります。GKの攻撃参加も可能なので、4対3の数的優位で攻めることができます。車いすだからGKは横に動きにくく、阻止率も高くありません。健常の7人制ハンドボールよりも、ビーチハンドボールに近い「点取り合戦」が求められる競技です。攻撃優位の状況で、どのようにゲームを組み立てるのか。諸岡は続けます。
「攻撃優位だからこそ、取られたら取り返す。点を取られることを悪としない。その代わり、速攻で取り返す。GKの大和田洋平さんには『取られたら、すぐに拾って、すぐにボールを出して』と言い続けました。点を取られた瞬間が、相手が頭を切り替える瞬間でもあり、そこが狙い目でもあるから、(所属のKnockü SC新宿でも)そこを1年間チャレンジしてきました」
「相手が点を取って油断する瞬間を狙う。DFにフォーカスしすぎない。でもDFをおろそかにする訳ではないですよ。日本には車いすバスケで培ったDFがベースにあります。相手の攻めにアジャストする能力もあります。だからそれ以上DFにフォーカスしすぎると、OFで点が取れなくて、DFで自滅するパターンが出てくる。退場を避けようと、恐る恐るDFするよりは、OFでチャレンジをして、やられても速攻でやり返す。OFに時間をかけない。これがOF優位の競技の考え方。今後の日本が目指す方向性かな」(下に記事が続きます)
アジャスト(適応)の次はトランジション(切り替え)

2024年の世界選手権では、諸岡をはじめとする日本代表は「アジャスト(適応)」をテーマに戦いました。初めての国際大会で、理不尽なことも実際にありました。障がいのクラス分けで、ポイントが2のはずの木村が3になってしまうなど、予想外の出来事がありました。そんななかでもどうアジャストしていくかを考えながら、車いすハンドの日本代表は大会を通じて成長しました。次の2026年の世界選手権(9月、エジプト)に向けては「トランジション(切り替え)」がテーマになると、諸岡は言います。
「2024年の世界選手権では、僕たちはトランジションできなかったんですよ。アジャストばかり考えていた。合わせるだけだと、受け身になってしまう。こっちが主導権を握って、試合を展開していくために、切り替え、トランジションが大事になってくる。今日みたいに、初めての組み合わせでチームビルディングをするのも、ひとつのトランジションです。役割のトランジションというか、いつもと違う役割をするために、違う人と話し合って、頭を切り替えていく。今日の組み合わせだと、僕が柱で、GKの大和田さんは大工さん。柱だけでは家にならないから、大和田さんみたいな職人さんがうまく細工して、仕上げてくれます」
実際に盛岡市で大工をしている大和田を例に出しながら、諸岡は役割分担の考え方を語っていました。どんどん点を取って「加点法」で評価されるのが、エースの諸岡の役回り。反対に大和田のようなつなぎのプレーヤーは、極力ミスを減らして「減点法」で評価される役回りです。こういった役割ごとの考え方を理解して、その場のメンバーに応じて、自身のプレースタイルを変えていけるか。役割のトランジション(切り替え)は、長丁場の世界選手権を戦ううえで欠かせません。 (下に記事が続きます)
日本の車いすハンド、世界で勝てる

諸岡は言葉に力を込めます。
「僕らもハンドボールをやっているんですよ。車いすで競技人口は少ないかもしれませんが、やっていること、考えている内容は、リーグHと変わらないところを示したい。技術であったり、体を動かす能力では、健常の7人制と比べたら違うかもしれないが、考え方の部分では負けていない。常に『世界で勝つためにはどうするか』を考えている人たちがいることを見てもらえたら」
初めて参加した2024年の世界選手権では、参加8カ国中5位でした。しっかりと準備をすれば、メダル獲得は十分に可能です。目指すは金メダル。諸岡晋之助は高い意識を持って、これからも車いすハンドボールに取り組んでいきます。
諸岡 晋之助(もろおか・しんのすけ) 1994年6月19日生まれ、東京都出身。明星高(東京)~明星大とハンドボール部に所属していたが、20歳で交通事故に遭い、右手と左足に障がいが残った。その後、東俊介さん(元・ハニービー石川監督)の紹介で、宮城フェニックスの車いすハンドボール体験会に参加。車いすハンドボールを始めるきっかけとなった。また車いすバスケットボールでは東京ファイターズB.Cに所属し、チェアスキル(車いす操作の技術)を磨いた。車いすバスケの2023年度強化指定選手に選ばれている。車いすハンドではKnockü SC新宿に所属。2024年第3回世界選手権に日本代表のエースとして出場し、得点ランキング2位になった。障がいの持ち点は、車いすバスケでクラス3.5。車いすハンドでクラス4。
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