第4回IHF車いすハンドボール世界選手権は2026年9月16-20日、スペイン・グラノリェースで開催され、日本代表は初の銀メダルを獲得した。その原動力となったのがエースの諸岡晋之助で、個人でも男子MVPと得点王になっている。世界で通用した戦いについて、帰国後じっくりと語ってもらった。
準々決勝は因縁のエジプト戦
初出場だった2024年に続いて、今回も世界選手権の準々決勝はエジプト戦だった。
「2年前は第3セットの終了間際、右サイドの角度のないところから決められて、1点差で負けています(日本は8カ国中5位)。準々決勝の相手がエジプトと決まって、ミーティングでも『リベンジのチャンスだな』と、みんなで盛り上がりました」
準々決勝の前に、クラス1のはずの村上慶太が、大会のクラス分け担当者から「クラス2に変更」を言い渡された(その後、日本の異議申し立てが認められ、決勝直前に再びクラス1に戻った)。
「だから村上さんと僕が同時に出る4、4、2、1の布陣が組めなくなりました。第1セットは守りを固める意味合いもあって、僕はベンチスタートになりました。ベンチワークは大西満監督と松本賢コーチにゆだねているので、僕自身は『点が必要な時に僕が出るのだから、出るからには全力でやってやろう』と思っていました」
「第1セットは落としましたが(6-10)、第1セット終盤に出た時は『十分やれるな』と感じていました。ちゃんとOFできれば怖くない。あとはどれだけDFできるか。僕の肌感覚では『10点以上取れれば、第2セットは取れる』という見立てでした。第1セットで、こっちの一番強い手札を切らないで、相手の様子を観察できたから、第2セットを取れました(11-9)。負ける気はしなかったですね」

GK含めた守りで勝った

準々決勝の途中で、GKを古矢千尋から永田裕幸に替えたのも効果的だった。
「このあたりの采配は松本コーチの力です。前回大会は僕らが初出場だったこともあり、作戦面でも後手に回っていました。今回は松本コーチがゲームデザインを考えてくれたから、僕らは目の前のプレーに集中できました。初出場だった前回との大きな違いです」
「第3セットはエジプトのエース・マグディ・タラートを全員で止めて、他の選手のシュートをGKの永田さんが止める展開になりました。5-4で第3セットを取って、エジプトにリベンジできました。世界の笛の基準を前回学んで、今回に生かせたから、日本はハードにDFしながらもほぼ退場していません。日本の技術が光った試合でした。ベンチから見ていても、安心感のあるDFでした」
「ディフェンシブなメンバーで試合を作るから、得点力は僕が補わないと、という思いもありました。あとはクラス3の伊藤優也が点を取れるようになり、DFだけの選手ではないことを証明してくれました。クラス4の選手の役割をクラス3の選手が担うのは大変ですが、(伊藤)優也が活躍してくれたから、選手起用がうまく回りました。すべてにおいて、2年前より成長できた大会でした」
ベテラン永田裕幸が存在感

「ミーティングでは松本コーチが『これをやってみよう』と提示して、みんなが意見を出し合って、実際にプレーしてみた感覚も伝えながら、全員で戦術を議論してきました。特に永田さんが『もしこうなったらどうする?』という疑問を投げかけてくれたおかげで、モヤッとした部分を潰せました。100回に1回あるかないかの状況も、永田さんが『こうなったら怖いよ』と指摘してくれました。永田さんは勝負どころをよくわかっているから、チームに落ち着きをもたらすだけでなく、疑問を疑問のままで終わらせない問題提起でチームを活性化してくれました」
「永田さんは、準決勝のポルトガル戦の最後に退場した場面を、とても悔しがっていましたね。審判がパッシブプレーの予告で手を挙げたから、永田さんは『パス4回まではOKだろう』という認識でした。実際はラスト15秒しかなく、審判の裁量でパッシブの笛が鳴りました。永田さんがまだプレーできると思って投げたら、退場になりました。しっかりと時間を使うあたりが永田さんらしいプレーでしたが、永田さんは試合後にずっと、最後の退場を悔やんでいました。永田さんのそういう姿を見て『この人はまだまだうまくなる気なんだな』と思いました」
スペインとの決勝で大爆発
「決勝のスペイン戦ではGK専門のローポインター(クラス2のフランシスコ・ハビエル・カスーロ)が手ごわかったです。持ち点なりのキーピングができるというか、自分の手の届く範囲は確実に止めてきます。スペイン戦の1セット目で最初に止められましたが、それは想定内でした。ローポインターほど止められる部分が限られてきます。『ここは届くんだな』とか『こういう動きをしたら、こう動いてくる』というのを最初に観察できたおかげで、2セット目以降はほぼ決め切ることができました」
諸岡は決勝だけで25得点を挙げている。
「途中から試合に出る以上、1本目から決めるのが理想でしょうが、僕は止められてもOKと割り切っていました。スペイン戦では、相手のGKが引っ張り下を止めていました。でも少し高めの車いすに乗っていたので『バウンドさせたら届かないだろうな』と感じました。2セット目以降は、引っ張り下を打つなら絶対に手のところでワンバウンドさせるよう意識しました。こっちが体を倒した瞬間に、向こうも体を倒してくるので、そこを利用しながら流しにも打ち分けました。第2セットは17-5と、チーム全体で得点が取れました」

「決勝の第3セットは勝てる試合でした。最終的には1点差で負けて(5-6)、悔しさが残っています。圧倒的な差で勝てるくらいの力を備えていないと、 世界の頂点に立てません。今のところ世界選手権はすべて開催国が優勝しているので、そこを超えていくための準備をしていかないと優勝できないのかな」





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