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【マラソン】ウガンダ女子選手、無念の死 | パリ五輪出場から3週間

2024年 パリ五輪 陸上女子マラソンで力走するウガンダのレベッカ・チェプテゲイ選手=2024年8月11日、写真:アフロ
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パリ五輪最終日(2024年8月11日)に行なわれた女子マラソンに出場したウガンダのレベッカ・チェプテゲイ選手(33)が今月初めに死亡した。知れば知るほどおぞましく、目をそむけたくなる事件だが、この記事を読んでくださるスポーツを愛する皆さんとも一緒に考えたい問題なので敢えて記すことにする。

目次

ガソリンを浴びせられ、火をつけられる

チェプテゲイ選手の死亡を公表したウガンダ陸上競技連盟の9月5日の投稿

ウガンダ記録の2時間22分47秒の記録を持つチェプテゲイ選手はパリ五輪で精彩を欠いて2時間32分14秒の44位に終わり、トレーニング拠点ケニア・トランスゾイア県の自宅に戻った直後の9月5日に死亡した。

事件が起きたのは9月1日。地元警察はチェプテゲイ選手が交際相手の男からガソリンをかけられた上に火をつけられ、全身の75%に大やけどを負って重体となり、死亡したと発表した。容疑者の元交際相手の男もチェプテゲイ選手がなくなった同じ病院で9月9日に死亡した。2人はケニア西部のトレーニングセンター近くにあるチェプテゲイ選手の自宅の土地をめぐって争っていたと海外メディアは伝えた。(下に記事が続きます)

「暴力は男らしさ」 稼ぐ女子選手がターゲットに

この事件の背景には個人間の「土地をめぐる争い」以前に根深い問題がある。

第1にアフリカが抱える男女格差だ。特に東アフリカでは「暴力は男らしさ」という伝統的な考え方の名残により、いまだに女性への暴力が許容される地域も多く、深刻な被害にあう女性が後を絶たない。伝統や慣習によるものだけでなく、女性には土地所有権がない国があるなど、女性に不利な法整備もまかり通っている現状がある。

法よりも通過儀礼が優先され、幼少期から15歳ぐらいまでの女子を対象に結婚の条件として「女性性器切除(FMG)」が慣習として行われている国も30ヵ国近くあると報告されている。貧困から逃れるために親が女の子を人身売買し、労働を強いられ、性的に搾取されるケースも後を絶たない。五輪の代表に選ばれるような女性トップアスリートもひとたびアフリカに戻れば、男性から迫害を受ける弱い立場であるのが現実だ。

第2に「スポーツの男女平等」で稼げるようになった女子トップアスリートが、男性の搾取の対象になっている問題だ。チェプテゲイ選手は2022年のイタリア・パドバマラソンでの優勝をはじめ、クロスカントリーやハーフマラソンで賞金を獲得してきた。人権団体は、特に貧富の格差があるケニアで女子選手が獲得する賞金を目当てに、男性による搾取や暴力が起きるリスクが高いと指摘している。(下に記事が続きます)

「男女平等」五輪の皮肉

チェプテゲイ選手が出場したパリ五輪は皮肉にも「ジェンダー平等」の理念を高らかに掲げた大会だった。参加した選手は五輪史上初めて「男女同数」に。しかも、五輪ではこれまで男子マラソンが「大トリ」の種目として定着してきたのが、パリ五輪では初めて女子マラソンが陸上の最終種目となり、女子マラソンのメダリストが初めて五輪のフィナーレとなる閉会式で表彰された。

チェプテゲイ選手の痛ましい死は、スポーツの男女平等の理念に現実が追いついていない問題を浮き彫りにした。アフリカに限らず、中東や南アジアの女子選手が虐げられている現実もある。これはマラソンに限らず、すべての競技に関わることだ。私たちがこれからもスポーツを心から楽しむうえで、ジェンダー差別や理念と現実のゆがみは絶対に正していかなければならない問題だ。

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