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【ハンドボール】豊田合成が5連覇、初代リーグH王者。勝利信じて疑わず

リーグH初代王者となった豊田合成ブルーファルコン名古屋=2025年6月15日、久保写す。以下同じ
リーグH初代王者となった豊田合成ブルーファルコン名古屋=2025年6月15日、東京・代々木第一体育館で、久保写す(以下すべて)
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ハンドボールのリーグHプレーオフ男子ファイナルは2025年6月15日、東京の代々木第一体育館で行われ、豊田合成ブルーファルコン名古屋が31-27でブレイヴキングス刈谷を下し、リーグ5連覇。リーグH初代王者となりました。MVP(最高殊勲選手)にはヨアン・バラスケスが選ばれています。

目次

決勝は5年連続同一カード

日本ハンドボールリーグ時代から、しのぎを削る愛知の両チーム。豊田合成とトヨタ車体の2強は、リーグHになっても圧倒的な強さを誇ります。ファイナルを毎年僅差で勝利してきたのが豊田合成ブルーファルコン名古屋。リーグH元年の2024~25年シーズンこそ序盤に星を落としましたが、レギュラーシーズンを2位で通過し、リーグ5連覇を目指します。

一方ブレイヴキングス刈谷は、毎年のようにあと一歩が届かなくて、銀メダルで終わっています。リーグH元年をレギュラーシーズン1位で通過した今シーズンは、優勝へ向けて大きなチャンス。2019年以来6年ぶりとなる悲願達成なるか。注目のファイナルは2025年6月15日17時にスローオフとなりました。(下に記事が続きます)

前半6分:吉野樹の4連続得点で、刈谷がスタートダッシュ

スタートから気合十分だった吉野樹
スタートから気合十分だった吉野樹

「今年こそは」と気合の入るブレイヴキングス刈谷。立ち上がりから勢いがありました。前半2分からはエースの吉野樹が4連続得点。積極的に前を狙います。6分5-1と刈谷がリードを奪いました。日本代表でもブレイヴキングス刈谷でも、吉野は勝負の責任を背負って打ち続けます。

前半19分:戸井凱音の突進 合成が反撃

186cm95kgの恵まれた体を攻守に生かせるようになり、戸井凱音は開花した
186cm95kgの恵まれた体を攻守に生かせるようになり、戸井凱音は開花した

前半18分6-10で最初のタイムアウトを取った豊田合成ブルーファルコン名古屋。前半19分に3枚目DFに入る戸井凱音が速攻で得点を挙げました。恵まれた体でのドリブルからの速攻は迫力満点。いつも練習前のアップで、選手一人ひとりと握手して声をかける合成の田中茂監督ですが、戸井にだけは張り手をするのだとか。「なんのためにこの体があるんだよっていう愛情表現です」とのことですが、こういう時のためにあるのです。フィジカルを生かしたDFとカットインに特化して、今シーズンの戸井はチームに欠かせない選手になりました。

前半30分:バラスケス、ノータイムフリースローで得点

刈谷の高い壁を打ち破った、ヨアン・バラスケスのノータイムフリースロー
刈谷の高い壁を打ち破った、ヨアン・バラスケスのノータイムフリースロー

前半終了のブザーが鳴り、残すは合成のノータイムフリースローのみ。打つのは身長197㎝、キューバの至宝ヨアン・バラスケス。刈谷の高い壁を打ち破り、14-15としました。バラスケスは「あの場面を表現するのは難しいな。レギュラーシーズン最後のジークスター東京戦でも、ノータイムフリースローを打った(この時はGK岩下祐太に止められている)経験が役に立っているのかな。ただゴールに入れたい気持ちだけで打ったよ」と、少し照れ臭そうでした。合成の選手たちはロッカールームで「これだけ内容が悪くても、前半を1点ビハインドでまとめられた。後半勝負で絶対勝てる」と確信していたと言います。(下に記事が続きます)

後半0分:陣地とお互いの思惑

ラース・ウェルダーヘッドコーチ(ブレイヴキングス刈谷)
ラース・ウェルダーヘッドコーチ(ブレイヴキングス刈谷)
田中茂監督(豊田合成ブルーファルコン名古屋)
田中茂監督(豊田合成ブルーファルコン名古屋)

ラース・ウェルダーヘッドコーチ(ブレイヴキングス刈谷)と田中茂監督(豊田合成ブルーファルコン名古屋)

後半になって、陣地が入れ替わります。合成は右サイドがベンチに近い側。刈谷は左サイドがベンチに近い側になりました。この陣地は、合成にとって「風上」と言っていいでしょう。右の2枚目にエースキラーの藤勢流を入れやすくなります。「風下」だった前半を1点ビハインドで耐えて、当初のプランどおり後半勝負に持ち込みたいところ。田中監督は「ウチは色んな選手を使って、プレータイムを分散させながら、前半を戦えた。相手はバックプレーヤー3枚がほぼ出ずっぱり。足を使ったDFができれば、必ず逆転できる」と踏んでいました。

一方の刈谷は、左の2枚目に富永聖也を入れて、エース吉野の負担を減らしたい思惑があったようです。ラース・ウェルダーヘッドコーチは前日の準決勝で、選手交代に関して興味深いコメントを残していました。「スペインは時間帯で区切って選手交代するけど、スカンジナビア(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)はフィーリングを重視する。調子がいいと思った選手は、長く使うんだ」

スペイン留学経験のある田中監督と、デンマーク出身のラースヘッドで、選手交代の判断基準が違うようです。 

後半7分:刈谷が7人攻撃を仕掛ける

7人攻撃の判断を託された吉野
7人攻撃の判断を託された吉野

後半の入りで逆転され、17-19となった刈谷は、7人攻撃で勝負をかけます。リーグ随一の強度を誇る合成DFの唯一の弱点が7人攻撃への対応。過去にも2020年の日本選手権決勝では、大崎電気が7人攻撃を60分間続ける奇策に、最後まで苦しんでいます。

7人攻撃ではポジションチェンジでレフトバックの吉野がセンターに移動し、打つかさばくかの判断を任されていました。吉野は「7人攻撃は5月のジークスター東京戦から通用していたし、練習もしてきたので、僕が責任を持って判断してコントロールしたいと思ってやりました」と言います。最近の吉野からは「判断」という言葉がよく出てきます。ただ点を取るだけでなく、年々視野が広くなってきました。(下に記事が続きます)

エースキラー藤勢流の働き

前に出たら戻る。藤勢流の運動量が、相手のテクニカルミスを誘発した
前に出たら戻る。藤勢流の運動量が、相手のテクニカルミスを誘発した

合成が逆転できた要因のひとつは、藤の2枚目DFです。右の2枚目で運動量を出して、刈谷のエース吉野に圧をかけていました。「吉野には前半だけで5点もやられていたから、徹底してアウトに持っていって、GKの中村匠に止めてもらうようにしました。前半は向こうのサイド切りにもやられていたから、(右の1枚目を守る)出村さん(直嗣)や朝野(暉英)には『(相手のレフトウイングを)入れさせないで』とお願いしておきました。その分、僕は相手のエース吉野をしっかり守れました」

2024年12月の日本選手権決勝に続いて、刈谷はレフトウイングを切らせて、前に出る藤の裏にできたスペースを狙ってきました。切りの動きがうまい藤本純季だけでなく、フィニッシャータイプの杉岡尚樹も積極的に切ってきました。そこを簡単に切らせないことで、藤は迷いなく前に出られたようです。相手の7人攻撃に対しても「どうしてもDFが1枚足りない状況になるから、僕が1人で2人を守る。バックプレーヤーとピヴォットの両方を守る意識でやりました。心がけたのは、出たら必ず下がる。7人攻撃にも引かずに攻めるけど、出っぱなしにならないよう動きました」と、基本を徹底していました。

後半20分:中村匠、連続セーブ

準決勝の不振から抜け出し、決勝の中村匠は大活躍だった
準決勝の不振から抜け出し、決勝の中村匠は大活躍だった

後半15分21-20から、合成が4連続得点で一気に突き放します。その間にはGK中村の連続セーブもありました。刈谷の富永がクイックスタートで攻めてきたシュートに、スライディングで反応。ベテラン左腕・渡部仁のミドルシュートは、体の中心で止めました。「今シーズンは調子のよくない日が多くて、今日も昨日のよくない流れを引きずっていたところもありましたが、何も考えずに相手の腕だけを見て判断することに集中した結果、調子を取り戻しました」と中村は言います。純粋にボールに飛びつく時の中村は絶好調。止めたあとのルーズボールにも「もうひと飛び」ピョコピョコする姿が見られました。(下に記事が続きます)

後半28分:バラスケスのパスカットからエンプティゴール

攻守にハードワークしたバラスケスは最高殊勲選手に選ばれた
攻守にハードワークしたバラスケスは最高殊勲選手に選ばれた

残り2分を切ったところで、合成DFにビッグプレーが生まれました。左の2枚目を守るバラスケスが、長い腕を伸ばして飛ばしパスをカット。そのままエンプティゴールを決めて30-24としました。それにしても、バラスケスの最高到達点はどれくらいあるのでしょうか? 勝利を決定づけるパスカットでした。

古屋悠生「優勝に何の疑いもなく取り組んだ」

優勝記者会見より。左から中村、古屋悠生、田中監督、バラスケス
優勝記者会見より。左から中村、古屋悠生、田中監督、バラスケス

31-27で勝利した豊田合成ブルーファルコン名古屋はリーグ5連覇。リーグH初代王者になりました。キャプテンの古屋悠生は「苦しいシーズンだったし、今日も苦しい試合だったけど、優勝に対して何の疑いもなく取り組んできた結果、優勝がついてきた」とコメントしました。

この表現は含蓄があります。「勝って当たり前」というおごりではありません。正しいことを積み重ねて、「最後は必ず自分たちが勝つ」という揺るがない信念です。そこに一瞬でも「勝てるのかな?」とか「勝っていいのかな?」といった疑念が挟まると、プレーにも影響します。これぞ勝者のメンタリティ。勝つためのマインドセットが、豊田合成ブルーファルコン名古屋には浸透しています。

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