ハンドボールの各ポジションに求められる技術や役割を紹介するシリーズ。2025-2026シーズンのリーグHでプレーする各チームの主力選手の特徴を、役割ごとに分類していきます。第3回はセンターバック(CB)。司令塔、ゲームメーカーと言われるポジションです。学生時代から「才能がある」と言われた選手でも、リーグHで本物のセンターになるには、かなりの時間と経験を要します。
大久保光将(富山ドリームス)速いパス回し

世界のトップ級は、パス回しの速さが違います。速くて正確なパス回しだけで、DFを崩します。日本にもパス回しの速いセンターが増えてきました。
田中大介(豊田合成ブルーファルコン名古屋)は速いパス回しを覚えて、30歳にして日本代表に定着しました。DFの頭をかち割るようなステップシュートと大胆なポストパスが昔からの武器で、強気な反面、ボールを長く持ちたがる傾向がありました。それが合成で鍛えられて、見違えるほど球離れがよくなり、速いパスで相手を翻弄できるようになりました。ゲームメークでの評価を高め、2026年1月のアジア選手権では、センターの1番手で長時間出場しています。イラン戦で見せた決勝ゴールも含めて、勝負の責任を背負える「いい司令塔」になりました。
パスの速さなら、ノルウェー出身のトリム・コルぺルド・ジョンセン(ブレイヴキングス刈谷)がリーグHトップクラスでしょう。速いパス回しと的確な判断が持ち味です。北詰明未と同時出場での7人攻撃は、ブレイヴキングスの新しいオプションです。
大久保光将(富山ドリームス)は立教大学時代はエースでしたが、リーグHで短期間のうちに「センターらしいセンター」になりました。大学4年次には個の強さを重視する大城章ヘッドコーチ(元ソニー監督)と出会い、富山ドリームスでは個の強化が得意な大房和雄監督から学び、パス回しが速くなりました。リーダーシップも含めて、司令塔にふさわしい人材です。(下に記事が続きます)
山城翔(福井永平寺ブルーサンダー)セットOFを整える

パス回しとともにセンターに求められるのが、全体を大きく動かす発想です。味方の足を動かして、セットOFが単発にならないよう意識しながら、全体にまんべんなくパスを配り、得点を伸ばしていきます。
古屋悠生(豊田合成ブルーファルコン名古屋)は周りを使うことに長けたセンターです。大砲のヨアン・バラスケスらを気持ちよく打たせながら、必要なときだけ切れ込みます。右側にズレながらのミドルシュートも、DFとの位置関係を把握して「最悪でもフリースローは取れる」との保険をかけながら、GKをよく見て決め切ります。田中大介とセンター2枚が同時出場し、古屋がアウトへのクロスを仕掛けるのは、2025~26シーズンの新しい技。「クロスはインに行く」定石の裏をかくプレーです。
東江雄斗(ジークスター東京)はスムーズに周りを動かします。ピヴォットの橋本明雄への曲芸パスだけでなく、今季は3枚目を孤立させての1対1でも点を取るなど、雄斗らしいキレが戻ってきました。通算1000得点達成直後にケガが再発したのは残念でしたが、かつてのような支配力をもう一度見せてほしいです。
原健也(ゴールデンウルヴス福岡)は、若いころからセットOFの理解度が優れていました。今季はピヴォットに強力なミトゥン・オイスティン・カトゥラが加わったことで、原のやりたいパス回しができる環境が整ってきました。
山城翔(福井永平寺ブルーサンダー)が集中しているときは、驚くようなアシストを連発します。ピヴォットへのトリッキーなバックパスから始まり、密集で潰されてボールを失いかけたところからゴロパスでライトウイングに飛ばしたり、センターライン付近でルーズボールを拾ってからウイングの仲程海渡へロングパスを通したりと、視野の広さで魅了します。7人攻撃での判断も優れています。
細江みづき(熊本ビューストピンディーズ)2対2が見えている

いいセンターはピヴォットを使えます。ピヴォットとの2対2は、バスケットボールのピック&ロールとほぼ同じ理屈。熟練の組み合わせだと「わかっているのに、止められない」必殺技になります。
橋本駆(レッドトルネード佐賀)は元々が打ち屋でしたが、レットルに入っていいセンターになりました。香川中央高校(香川)、大阪体育大学と2対2の名門を歩んできたから、理解度が高いのでしょう。一度ピヴォットにボールを預けてからリターンパスをもらう、サッカーで言う「ワンツーパス」のようなプレーも得意技のひとつ。香川中央高校の河合哲監督(現高松商業女子監督)お得意のプレーを受け継いでいます。
細江みづき(熊本ビューストピンディーズ)はスペインでの5年間で、見違えるほどポストパスがうまくなりました。スペインに行く前は、シンプルに1対1で勝負する選手だったのに、ここまで視野が広がるとは驚きです。ただピヴォットに落とすだけでなく、背後からのバウンドパスなどオシャレなバリエーションも豊富です。パスミスが少ないのもいいですね。
近内千春(飛騨高山ブラックブルズ岐阜)は、ブルズのなかでは数少ない2対2ができる選手。ラティーダ琉球から移籍してきて、出場機会を増やしています。関洋香(ハニービー石川)は1対1の強さがありながら、2対2もできる珍しいタイプ。2対2の文化のあるハニービーで、もっと出番をもらってもいいと思います。ケガで離脱していますが、岩元侑莉(ブルーサクヤ鹿児島)はピヴォットを視野に入れながらロングシュートが打てる逸材。健康であれば、いずれは女子日本代表に入るだけのポテンシャルがあります。
樋川卓(安芸高田わくながハンドボールクラブ)シンプルに組み立てる

個の強さでDFを2人寄せて、味方を余らせることができれば、難しいフォーメーションはいりません。純正のプレーメーカーではありませんが、シンプルに個の強さを出せるタイプのセンターも現代ハンドボールでは必要です。
樋川卓(安芸高田わくながハンドボールクラブ)は3枚目が守れて、ロングシュートも打てるバックプレーヤー。樋川がセンターに入ることで、攻防チェンジなしでそのまま速攻で押していけます。セットOFでもサイズを生かした1対1などでシンプルに攻めていきます。
伊禮雅太(ジークスター東京)もシンプルな1対1を起点に攻撃を組み立てます。ポジションチェンジでレフトバックの位置に移動してからのアウト割りが得意技。カットインで抜けなくてもDFを凹ませて、味方にロングシュートを打たせます。
土居佳加(大阪ラヴィッツ)球離れがいい

エースは打ちたがりで、ボールを持ちたがります。「長くボールを持って、1対1をやりました。ダメでした。じゃあパスするね」の繰り返しだと、攻撃のリズムが悪くなります。そこで球離れのいいセンターの出番になります。
中央大学から期限付き移籍の武田心稀(アースフレンズBM)は、アース待望の純正のセンタープレーヤー。球離れがいいので、攻撃のリズムを作れます。
土居佳加(大阪ラヴィッツ)はレフトウイングが本職ですが、ここ1年でセンターとしての評価が高まりました。球離れが良く、エゴを見せないプレースタイルで、エースだった喜田ことみ(ベカメント/セルビアに移籍)に気持ちよく打たせていました。
成松沙弥佳(大阪ラヴィッツ)も球離れのいいセンターです。喜田が海外に移籍してからは、土居と成松が同時にコートに立つ機会が増えました。2人のパスワークを得点に結びつけるためにも、前を狙う怖さが求められます。
大阪体育大学から新加入の坂下碧(ハニービー石川)にはカットインもありますが、センターエースの小柴夏輝との違いを出すためにも、ボール回しの上手さで出番を増やしたいところです。(下に記事が続きます)
中井博海(ゴールデンウルヴス福岡)得点力あるセンター

古典的なプレーメーカーがいいのか。それともセンターにも水準以上の火力が必要なのか。議論の分かれるところです。点が取れるセンターは今様だし、点を取ってくれるのはありがたいですが、レベルが上がって攻撃が通用しなくなると、攻撃が淡白になるリスクがあります。
前田理玖(アルバモス大阪高石)は2024~2025シーズンの得点王。1対1だけでなく、ロングシュートも打てて、富山ドリームスでは「困ったら前田」でした。アルバモス大阪高石に移籍してからは「4人目のバックプレーヤー」として、貴重な得点源になっています。アルバモスのホームゲームでは、点を取ったあとに「り~く、りく、りく、理玖前田」のコールが定番になりました。
中井博海(ゴールデンウルヴス福岡)は以前にも期間限定でウルヴスでプレーしていましたが、大卒1年目でキャプテンという大役を任されました。「まだプレーでチームを引っ張れていない」ともどかしそうですが、中井の持ち味はシュート力。無茶打ちを減らして、確率を高めていけたら、さらに信頼を得られるでしょう。リーダーシップは瓊浦高校(長崎)、福岡大学で実証済みです。
飯塚美沙希(三重バイオレットアイリス)は絶好調なら、ロングシュートにカットインにポストパスまで自由自在です。最近はDFでクロスアタックを仕掛けるなど、泥臭いプレーでもがんばる姿が見られます。尾関栞(ブルーサクヤ鹿児島)は大阪体育大学では出番が限られていましたが、短時間で火力の高いプレーができる選手です。
横嶋彩(アランマーレ富山)は得点力のあるセンターの最高峰とも言える存在です。国内レベルでは無敵のミドルシュートがあり、世界で通用するための粘り強いカットインを覚えて、今は結婚、出産から復帰して、徐々に感覚を取り戻しているところ。夜中に子供が目を覚ますので「8時間ぐっすり寝られない」のが悩みですが、これから調子を上げてくるでしょう。「点を取ってなんぼ」の選手ですので、1試合で4~5点は取れるようになれば「本調子」と見ていいかと思います。
尾﨑聖(琉球コラソン)カットインが切れる

1対1ができる選手がセンターにいると、OFの組み立てが楽になります。シンプルに間にはまって切れ込んだり、DFを凹ませて味方にクロスからのロングを打たせたりと、フィニッシュの形が作りやすくなります。
北詰明未(ブレイヴキングス刈谷)はロングシュートもありますが、十八番はジャンプフェイク。9mから打ち込める力があるから、DFはジャンプフェイクに引っかかってしまいます。腕を回してのスイングフェイントやシンプルなカットインも上手です。2026年2月、豊田合成ブルーファルコン名古屋を相手に約3年ぶりに勝利した試合でも、決勝点は北詰のカットインでした。
北ノ薗遼(ブルーサクヤ鹿児島)は小さくてスピードがあって、1対1がキレキレ。ピヴォットのスライドにDFがついて行くと、目の前の広くなったスペースに北ノ薗が切れ込むのが定番です。昔は高速カットイン一辺倒でしたが、最近はピヴォットへのパスなど、プレーの選択肢が広がっています。
レッドトルネード佐賀から移籍してきた尾﨑聖(琉球コラソン)は、2026年2月にコラソンデビューを果たしました。球が回せて、1対1が切れる尾﨑が加わったことで、コラソンのOFが生まれ変わりました。右側のプレーも得意なので、エースの野尻雄偉が厚く守られたときに、右側で尾﨑が間を割るシーンが、これからも多くなりそうです。野尻、尾﨑、ライトウイングの松川兼心と、両手でシュートが打てる選手が揃っているのも、今季のコラソンのちょっとした見どころです。
植垣健人(アルバモス大阪高石)ロングシュート打てる

センターからロングシュートを打ち込めたら最強です。シンプルにロングとポストパスの2択で、相手を揺さぶることができます。中東勢が、日本相手にやっている攻めですよね。日本もやられてばかりではなく、人材を揃えて対抗したいところです。
小林愛(三重バイオレットアイリス)は1日に1本、目の覚めるようなロングシュートを叩き込みます。しなやかなカットインもできるし、東海大学時代はピヴォットだったので切る動きもできるし、3枚目DFもできるしと、スペシャルなツールを揃えているのですが、まだ実戦では安定しません。ポテンシャルを発揮できれば、日本代表のセンターにもなれるはずなのですが。
植垣健人(アルバモス大阪高石)は2対2を熟知していて、なおかつロングシュートが打てる司令塔です。大崎電気時代はピヴォットの森淳との相性がよく、しっかりと「がめる」(位置を取ってスクリーンをかける)タイプのピヴォットと組むとよさが出ます。森に育てられた植垣が、今度は若手の重量級ピヴォット羽渕晴一朗を育てる番です。 (下に記事が続きます)
近藤万春(イズミメイプルレッズ広島)ダブルポストの動き

パスを出したあとにライン際に切って、ピヴォットになる動き、いわゆるダブルポストが上手な選手がセンターにいると、攻撃の幅が広がります。特に相手が立体的なDFを敷いてきた場合に、ピヴォット兼用の選手が動き回ってくれると助かります。
ピヴォットになりたがるセンターと言えば近藤万春(イズミメイプルレッズ広島)一択です。脅威的なクイックネスと、ラグビーのウイングのような独特のステップもありますが、彼女が一番やりたいのは切りの動き。2021年の世界選手権では相澤菜月(チューリンガー/ドイツ)、大山真奈(元北國銀行ほか)、近藤の、実質センター3枚のような布陣が機能しました。パスを出せる選手と組めたら、近藤がライン際に切ってもボールは回ります。メイプルで言えば、ある程度ボールを回せて突破もできる田渕美沙と組めば、近藤の切りの動きも自由にできます。近藤と田渕が同時に出る時間帯は限られますが、出てきたときの相性のよさは注目です。
加納穂伽(イズミメイプルレッズ広島)高い身体能力

スピードに乗ったプレーで勝負できるセンターがいると、いいアクセントになります。高速道路でもハンドボールでも、スピードが出るほどに視野が狭くなりがちですが、そんななかでも周りが見えている選手たちです。
藤田響(大崎オーソル埼玉)は高速ドリブルのなかでも判断ができる選手です。内定選手でプレーしていた時期に輝いて、その後はやや頭打ちでしたが、2025~26シーズンになってようやく本来のよさを取り戻しつつあります。
加納穂伽(メイプルレッズ広島)は、大前典子監督の抜擢に応えて、センターとして充実のシーズンを送っています。前任の酒巻清治監督(現福井永平寺監督)も加納のことを「トヨタ車体にいた津屋大将みたいになれる」と評していました。抜群のスピードに考える力がついて、今が伸び盛り。ルーズボールへの体の入れ方も大前監督好みです。
田渕美沙(イズミメイプルレッズ)は野性的な動きが特徴です。予想外の場所でワイルドなカットインを見せたかと思うと、ピヴォットも見えていて、楽しい選手です。菊地柚葉(飛騨高山ブラックブルズ岐阜)は純正のセンターではありませんが、高い身体能力を生かしたカットインが持ち味です。161㎝でもロングシュートが入るという飛び道具もありますが、実戦ではやや控えめ。OFがうまくいかないときにも崩れずにボールを回せるよう、今季は修行の1年です。
川﨑駿(福井永平寺ブルーサンダー)フィジカルで勝つ

線が細くて、見るからにセンスよさげな選手が、センターをやっているイメージがあります。だからセンターにごつくてパワフルな選手がいるだけでワクワクしませんか? 強いテクニシャンは、究極のセンター像です。
川﨑駿(福井永平寺ブルーサンダー)はピヴォットとバック3ポジションができるオールラウンダーですが、最近はセンターで自慢の筋肉を生かしています。強い1対1で崩したり、切ってピヴォットになったりと、強さを前面に押し出します。日本のハンドボール界には兼任コーチは沢山いますが、川﨑は日本では前例のない「選手兼ストレングスコーチ」です。「トヨタ車体(ブレイヴキングス)時代に相川浩一さん(ボディビルダーで当時のストレングスコーチ)から教わったことを伝えているだけですよ」というものの、自らが手本を示せるのは兼任コーチの強みです。ちなみに当時の「相川道場」で筋トレのトップ3は、笠原謙哉(アースフレンズBM)、渡部仁(ブレイヴキングス刈谷)と川﨑です。3人とも別々のチームになりましたが、「相川道場」のDNAは受け継がれています。3人だけのグループラインでは「今日はこの種目で何キロを何回やった」と報告し合っているそうです。
可児大輝(大同フェニックス東海)は、今年は「強いセンター」枠で紹介します。芳村優太ヘッドコーチは「可児は世界に対抗できるフィジカルの持ち主。こういう強い選手がセンターをやることで、日本は世界と戦える」と言っていました。藤坂尚輝と可児で、大同のセンターがそのまま日本代表のセンターになる日がくれば、大同も王座に返り咲くでしょう。(下に記事が続きます)
樋口怜於奈(HC名古屋)ゲームを支配する

ただ点を取る、ボールを回すだけでなく、勝負のカギを握っている選手です。ある意味10点を取って当たり前。さらに勝負の節目での1本を決めて、チームに勝利をもたらす選手です。
藤坂尚輝(大同フェニックス東海)はキレキレの1対1に、強烈なブラインドシュートで、ビックリするような点の取り方をします。2025年6月のプレーオフファーストラウンド(レッドトルネード佐賀戦)では、3枚目を孤立させての1対1を抜いて、決勝点を挙げました。課題は自分のシュートが入らないときのゲームメーク。1対1もブラインドシュートも若干ギャンブル性が高いので、周りを使って確実に点を取れる術を覚えてくれると、安定感が出てくるでしょう。
松岡寛尚(大崎オーソル埼玉)は火力の高いセンター。海外に行く前は「1試合に10点は取れるようになったから、今はゲームメークを覚えています」と言っていました。当時はレフトバックからセンターに転向して日が浅かったのですが、チェコやマケドニアを経て大崎に戻ってからは、名実ともにゲームを支配するセンターに成長していました。短時間で使っても、先発で長く使っても、瞬発力あるプレーで得点を取り続けます。
小柴夏輝(ハニービー石川)がいるといないとで、チームの得点力が大きく違います。タイプで言えば、東海大学の川村杏奈コーチ(元ソニー)のような「劇場型」の司令塔かもしれません。小柴の恩師でもある川村コーチは、年に数回大当たりする「川村劇場」が持ち味で、1人で北國銀行を倒すくらいの破壊力がありました。小柴には大当たりよりも、淡白なミスを減らして、安定感を身につけてもらえると、ハニービーの戦いが安定します。古武術のようなカットインに、粘っこいステップシュート、一瞬の隙を突くキラーパスと、派手な武器は十分にあるので、あとは「負けない」ゲームメークを。
酒井優貴子(アランマーレ富山)は2枚目DFができるセンターから始まり、フィジカル強化で年々得点力を伸ばしています。オフ・ザ・ボールの動きで無理なくカットインするだけでなく、最近は0歩のステップシュート(「ゼロイチのシュート」とも言う)が冴えています。
樋口怜於奈(HC名古屋)はライトバックからセンターになって、ポテンシャルが開花しました。ピヴォットを視野に入れての2対2ができて、位置取りで勝つアウト割りもできて、速攻でもコートを広く使ってボールを展開できます。年明けからは黒星続きで、ここが勝てるセンターになるための正念場。点が取れないから「私がやってやる」だけでなく「周りになにかさせよう」というアイデアが出てくると、開幕当初の快進撃が再び始まりそうです。
もう1人、大事な選手がいます。2026-27シーズンからリーグHに参入するリエゾン大阪の矢田路人です。湧永製薬時代からの豪腕は衰えることなく、プレーに円熟味が増しています。今はゲームを作って、ロングシュートも打って、チームを1人で背負っています。これで矢田が3枚目DFに入るとなったら、明らかにオーバーワーク。やってやれないことのない選手ですが、せめて守りでは矢田の負担を減らしてあげたいところです。
岡田彩愛(香川銀行シラソル香川)トータルバランス

センターはできないことがあると困るポジションです。選択肢が欠けているよりは「何でもそつなくできる」選手の方が重宝することもあります。
竹内聖空(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)はいい意味でバランス型のセンター。突出した武器はないものの、2枚目DFができて、カットインもできて、たまにロングシュートも入るし、ピヴォットも見えています。
岡田彩愛(香川銀行シラソル香川)は国内だとハイレベルでバランスが取れています。エースと呼ぶにふさわしい得点力があり、自分のマークが厚ければ周りを生かして、チームを勝たせます。ただし世界レベルとなると、バランスのよさが特徴のなさになってしまい、2025年12月の世界選手権では出番を減らしました。何を一芸にして磨いていくのか。もう一段上の選手になるために、これからが勝負です。(下に記事が続きます)
末岡拓美(大崎オーソル埼玉)オールラウンダー

センターは専門職ですが、器用なオールラウンダーでセンターのポジションを埋める場合があります。やれることは限られてきますが、オールラウンダーならではの味が出るので、短時間なら十分にチームのプラスになります。
末岡拓美(大崎オーソル埼玉)はキャプテンを務める人格者。今季は松岡寛尚が加入して、難しい立ち位置になりましたが、他のポジションでもプレーしながら、ベンチでも声を出しています。日本代表に定着するには「2枚目を守れるセンター」で売り込みたいところですが、今は我慢の時。末岡本来のよさである「隙間を埋める」活躍を積み重ねて、チームに貢献していくしかありません。センターでまとまった時間を得たら、前を狙う怖さを見せながら、ボールを配るバランスを見せてほしいです。
佐藤立盛(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)は身体接触がやや苦手ですが、どこでもやれるセンスの持ち主。若い中島遼也のあとから出てきて、さりげなくフォローする役回りで、まだまだチームに欠かせない存在です。ケガで現在はコーチ登録でベンチ入りしている信太弘樹(ジークスター東京)は、究極のバランサーであり、最高のオールラウンダーです。元日本代表のエースが、今では複数のポジションを楽しみながら、チームの隙間をさりげなく埋めています。3次速攻では中央からの2対2で、一瞬の隙を狙って打ち込むロングシュートが高確率で決まります。
布施凜太郎(琉球コラソン)守れるセンター

センターの選手が退場すると困るからか、OF専門にしているチームも多いです。だからこそDFができるセンターは貴重です。センターの選手が守れたら、ボールを奪って速攻に持ち込みやすいので、楽な点数が増えます。
小山哲也(ジークスター東京)はオシャレなプレーが目立ちますが、大崎電気時代は2枚目DFを足がかりにして成長した選手。攻守に気の利いた動きで、スター軍団のバランスを整えます。中島遼也(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)はレガロッソ特有の4:2DFに欠かせない選手。フットワーク力を生かして、高い位置で動き回ります。球際の強さに旺盛な闘争心は、次世代のリーダーにふさわしく、いずれはOFでも1対1を武器にいいセンターになるでしょう。
布施凛太郎(琉球コラソン)は3:2:1DFのトップDFができるので、DFからの流れでそのまま攻めたい場合にセンターに入ります。マークを外さず、そのまま足でついて守り、攻撃ではちょっとオシャレなパスを出すなど、泥臭さと華やかさが同居した選手です。
女子で守れるセンターと言えば須田希世子(熊本ビューストピンディーズ)しかいません。2024-25シーズンのベストディフェンダー賞にも選ばれた、献身的なハードワーカーです。相手のクロスに対して、1人で3人を守ってしまう運動量は絶品です。OFでも脚力を生かした1対1だけでなく、ポストパスなどできることの幅も広がっています。
高比良琉南(アランマーレ富山)途中出場で味が出る

2番手のセンターが優秀だと助かります。先発のセンターが不調だった場合でも、試合を立て直してくれます。ベンチの意図を反映してくれる選手なら、なおさら重宝します。
中村仁宣(安芸高田わくながハンドボールクラブ)はセンターらしいセンター。小さくてパスセンスがよくて、巧さがあります。北陸高校(福井)時代から7人攻撃での判断が評判でした。わくながではセットOFに変化が欲しいタイミングで出てきて、スムーズにボールを回します。
吉本里緒(香川銀行)は高卒で6年間、亀井好弘監督のハンドボールを教わってきた貴重な人材です。ワンポイントで出てきて、亀井監督の意図をチームに落とし込むのが主な役割。思うように選手が獲れなかった「冬の時代」を知る選手なので、吉本には活躍してもらいたいです。川村希咲(イズミメイプルレッズ広島)も単位時間あたりの得点能力が高い選手。カットインやロングシュートに見応えがあります。
高比良琉南(アランマーレ富山)は火力の高いオールラウンダー。レフトウイングもできるし、1対1は強いし、2枚目DFではパスカットに飛び出します。ゲームメーカーというよりは、試合中盤での起爆剤のような存在です。 (下に記事が続きます)
林凌雅(アースフレンズBM)左利きセンター

左利きのセンターは、日本ではなかなか見かけません。男子だと趙範衍(チョ・ボンヨン、元中村荷役ほか)、女子なら樋口真央(元ソニーほか)ぐらいまでさかのぼります。ボールの流れが通常とは逆の左向きになるので、相手は守りにくいはずです。
林凌雅(アースフレンズBM)はリーグHで唯一の左利きセンター。林の得点が入れば、チーム全体の得点もスムーズに伸びるのですが、林自身が止められたときの試合運びが課題です。怖さを見せつつも、もう少し粘り強いボール回しを見せてくれたらいいのですが。
チャレンジゲームズでは、河原脩斗(大同フェニックス東海)が急遽センターに入る試合がありました。ほぼぶっつけ本番だったようですが、無難にこなせていました。これからの大事な試合で「左利きセンター河原」の時間帯があるとおもしろいですね。どのタイミングで吉村ヘッドがこの札を使うのか、注目です。
永野大樹(福井永平寺ブルーサンダー)両利きセンター


世界でもお目にかかれない両利きのセンターが、日本にはいるのです。
永野大樹(福井永平寺ブルーサンダー)は左右両方で強いシュートが打てる、不思議なセンターです。チャレンジゲームズでしか出場していませんが、右手でも左手でもシュートが様になっていました。「両利き登録だけど、右手の方が得意で、左手はサブ」という選手は結構いますが、永野は正真正銘の両利き。酒巻清治監督は「永野には『利き腕を守る』セオリーが通用せんぞ」と上機嫌でした。ケガを治して、リーグHでの活躍を期待しています。
長くなりましたが、以上でセンターバックの紹介を終わります。次回はライトバック。もう少しコンパクトになる予定です。
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