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【ハンドボール】司令塔センターバック47人 | リーグH名鑑2025 vol.3

左から東江雄斗(ジークスター東京)飯塚美沙希(三重バイオレットアイリス)前田理玖(富山ドリームス)小柴夏輝(北國ハニービー石川)関洋香(HC名古屋)=久保写す、以下すべて
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ハンドボールの各ポジションに求められる役割、技術を、2024年9月に発足した国内トップリーグ・リーグHで活躍する選手のプレースタイルとともに紹介します。第3回はセンターバック。司令塔とも呼ばれるポジションで、セットOF(オフェンス)を組み立てるのが主な仕事です。昔は「センターがシュートを打ったら、監督に怒られる」こともありましたが、現代ハンドボールでは攻撃力も求められるようになりました。

目次

飯塚美沙希(三重バイオレットアイリス)球回しのリズム

飯塚美沙希(三重バイオレットアイリス)の落ち着きとキープ力が、接戦の終盤で役立つ
飯塚美沙希(三重バイオレットアイリス)の落ち着きとキープ力が、接戦の終盤で役立つ

センターバックの仕事は、セットOFのリズムをよくすることです。テンポよく球を回すことで、味方の足が動き、攻撃のリズムがよくなります。 

佐藤快(大同フェニックス東海)は、打ち屋がそろい過ぎた大同のなかでは貴重な調整役。ピヴォットへパスを落とせるので、彼が入ると攻撃のリズムがよくなります。球を配るうまさで言えば、中村仁宣(安芸高田ワクナガハンドボールクラブ)は学生時代から名の売れたセンターです。日本人が好むタイプの、小柄でパスセンスのいい司令塔です。飯塚美沙希(三重バイオレットアイリス)は得点力の高いセンターですが、スタートから使わないと力を発揮しにくい課題がありました。しかし昨季後半に石立真悠子コーチがある発見をしました。「飯塚は競った試合の終盤でも慌てることなく、自分のペースでボールを回せるんですよ」。バタバタしがちな終盤の接戦を、ケガから復帰した飯塚の落ち着いたボール回しで締めくくる展開が、今後は増えてくるかもしれません。(下に記事が続きます)

東江雄斗(ジークスター東京)味方を大きく動かす

コンディションさえ整えば、東江雄斗(ジークスター東京)の支配力は今もなお一級品
コンディションさえ整えば、東江雄斗(ジークスター東京)の支配力は今もなお一級品

若いセンターは局所的な2対2やカットインにこだわりすぎるので、味方の足が止まってしまうことがあります。そういう時に年季を積んだセンターを投入すると、全体を大きく動かすプレーでOFのリズムを変えてくれます。

東江雄斗(ジークスター東京)は経験豊富な王道のプレーメーカー。鮮やかなポストパスやトリッキーな左手でのシュートもありますが、味方を大きく動かせる組み立てでチームを救います。局所的な攻めでミスが続いたあとに出てきて、大きなクロスを交えながら、味方の足を動かし、良さを引き出します。原健也(ゴールデンウルヴス福岡)も明確な意図を持った攻めで、セットOFを組み立てます。若い選手が多いウルヴスにあって、作戦盤のようにコート全体を俯瞰できる原の頭脳は欠かせません。

岡佑駿(アースフレンズBM)アップテンポ

岡佑駿(アースフレンズBM)は速い攻めでよさが出る
岡佑駿(アースフレンズBM)は速い攻めでよさが出る

相手に攻防チェンジをさせないようアップテンポで攻めるのも、ひとつのチーム方針です。攻撃回数を増やして、相手が戻り切る前に点を取れれば、ハイスコアゲームを物にできます。

速攻とクイックスタートを多用するアースフレンズBMは、司令塔の岡佑駿のスピードで、攻撃を加速させます。ベンチから出てきて、相手の陣形が整う前にキレキレのカットインで間を割ったり、ステップシュートを打ち抜きます。大阪ラヴィッツのエース・喜田ことみがセンターに入った時も、アップテンポな展開が多くなります。

川端勝茂(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)余計なことをしない

勝ち方をわかっている川端勝茂(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)の力で、レガロッソはもう一度プレーオフに行きたい
勝ち方をわかっている川端勝茂(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)の力で、レガロッソはもう一度プレーオフに行きたい

攻撃回数を減らしてロースコアに持ち込みたい場合は、センターの我慢強い球回しがポイントになります。トリッキーなことはせずに、パッシブプレー寸前までボールを回すことで、相手の足が止まり、味方にも落ち着きをもたらします。

余計なことをしないセンターの代表格は、トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城のベテラン・川端勝茂です。相手に煽られても動揺せずに、淡々とボールを回して、チームを落ち着かせます。ちょっとズレたぐらいでは打ちません。完全にプラス1(1人余った状態)ができるまで、ボールを回し続けます。これはセットOFを深く理解していないとできない芸当です。若い選手ならすぐに手詰まりになって、安直なシュートで終わってしまいます。川端なら要所でのフリースローなどで時間を使いながら、時間をかけてフィニッシュまで持ち込みます。成松沙弥佳(大阪ラヴィッツ)は今季出場機会を増やした2番手センター。田中美音子ヘッドコーチは「ミスが少ないから」としか、成松の起用理由を話しませんが、「ミスをしない」のもセンターの大事な要素です。追いかける展開が多くなるラヴィッツは、速攻で押そうとしすぎたり、トリッキーなプレーに頼ったりで、ボールを失う傾向がありました。余計なことをしない成松がゲームをコントロールしてくれたら、離されずに終盤勝負に持ち込めるはずです。(下に記事が続きます) 

岩元侑莉(ブルーサクヤ鹿児島)2対2で崩す

岩元侑莉(ブルーサクヤ鹿児島)は日本を代表するセンターになれる逸材
岩元侑莉(ブルーサクヤ鹿児島)は日本を代表するセンターになれる逸材

センターとピヴォットの2対2は、セットOFの王道です。バスケットボールのピックアンドロールと同じで、上手な選手がやれば「わかっているけど止められない」必殺の武器になります。

田中大斗(レッドトルネード佐賀)、植垣健人(アルバモス大阪)、橋本駆(レッドトルネード佐賀)と、大阪体育大学OBには2対2が得意な選手が揃っています。田中はダブルポストになる動きも上手です。植垣は重さで勝負するピヴォットがいると、得意のミドルシュートとポストパスの駆け引きが冴え渡ります。橋本は相手の2枚目が高く出てきたら、真ん中の2対2だけで簡単にフィニッシュまで持ち込みます。女子では20歳の岩元侑莉(ブルーサクヤ鹿児島)が、若くして2対2を理解している選手です。ミドル、ロングを狙いながら、常にピヴォットが見えていて、最近は課題だったアウト割りもできるようになってきました。現役時代に韓国代表のセンターだった宋海林(ソン・ヘリム)ヘッドコーチから1対1、2対2の基本を教わるなど、人との巡り合わせにも恵まれています。

北詰明未(ブレイヴキングス刈谷)鮮やかなカットイン

北詰明未(ブレイヴキングス刈谷)は得点力のあるセンターに成長した
北詰明未(ブレイヴキングス刈谷)は得点力のあるセンターに成長した

突破力のあるセンターがいてくれると、間にはまってフィニッシュまで持ち込めます。たとえ間を割れなくても、カットインでDF(ディフェンス)を凹ませることで、バックプレーヤーがディスタンスシュートを打ちやすい状況を作れます。

日本代表の北詰明未(ブレイヴキングス刈谷)は、実業団になってからセンターに転向し、勝てるセンターになりました。ミドルシュートを打てる力があるから、得意のジャンプフェイクでDFを食いつかせて、ワンドリブルでスルリと抜けていきます。伊禮雅太(ジークスター東京)も中央大学卒業後にセンターに転向しました。左側にポジションチェンジした時のアウト割りの強さをベースに、攻撃を組み立てます。尾﨑聖(レッドトルネード佐賀)は1対1に特化したセンター。大きい相手をスピードで揺さぶる「逆ミスマッチ」が持ち味で、鮮やかに抜いたあとに左手でシュートを打ったりもします。北ノ薗遼(ブルーサクヤ鹿児島)は、国内の女子では随一のクイックネスを誇ります。ピヴォットがスライドして、DFを連れ去ったスペースに、北ノ薗が高速で切れ込むのが定番になっています。齊藤詩織(飛騨高山ブラックブルズ岐阜)はブルズのセンターエース。左側にポジションチェンジしてのアウト割りが得意です。(下に記事が続きます) 

前田理玖(富山ドリームス)ディスタンスシュート

今季好調をキープしている前田理玖(富山ドリームス)
今季好調をキープしている前田理玖(富山ドリームス)

シュート力のないセンターはDFから捨てられやすいですが、ディスタンスシュートがあるとわかると、DFの対応も大きく変わります。センターにシュート力があれば、ロングシュートとポストパスのシンプルな二択で相手を揺さぶれます。

得点ランキングのトップを走る前田理玖(富山ドリームス)は、チームでは数少ないディスタンスシュートを打ち込めるセンターです。昨季は途中まで、吉村晃監督のハンドボールを消化しきれず苦労していましたが、1対1で強く行けるようになった今季は、持ち前のロングシュートがより生きるようになりました。じゃんけんのグーチョキパーではないですけど、強い1対1、ディスタンスシュート、アシストの3つがそろってはじめて、駆け引きで優位に立てるのでしょう。可児大輝(大同フェニックス東海)は打てるセンターを目指していましたが、ゲームメークを意識し過ぎるとよさが消えてしまいます。日本代表の藤坂尚輝が新たに加わり、どうやってすみ分けするのか、気になるところです。

樋川卓(安芸高田わくながハンドボールクラブ)は、ミドルが打てて、力強いカットインがあり、3枚目を守れる選手。純正のプレーメーカーではありませんが、攻守のバランスを整える上で欠かせません。シンプルな攻めに徹して、正統派の中村仁宣との違いを出すよう工夫しています。小林愛(三重バイオレットアイリス)は1試合に1本、目の覚めるようなロングシュートを放ちます。センターもピヴォットもやって、DFでも3枚目、2枚目、1枚目と色々やらされて大変な1年目ですが、黄慶泳(ファン・キョンヨン)監督は「小林にいろんな景色を見させたい。その経験が絶対にセンターで生きるから」と言っていました。ゲームの全体像をつかむための英才教育なのでしょう。

小柴夏輝(北國ハニービー石川)ステップシュート

ステップシュートもしなやかな小柴夏輝(北國ハニービー石川)
ステップシュートもしなやかな小柴夏輝(北國ハニービー石川)

セットOFで崩しきれないままパッシブプレー寸前になった時、ステップシュートがポンと決まれば、精神的にすごく楽になります。1点が取れた安心感は大きいですし、いい精神状態で次のセットOFに臨むことができます。センターの選手にとって、ステップシュートはある種の精神安定剤とも言えます。

田中大介(豊田合成ブルーファルコン名古屋)は、DFの頭をかち割るようなステップシュートを得意としています。全盛期の白元喆(ペク・ウォンチョル、元大同特殊鋼)も、このステップシュートをよく打っていました。東江太輝(琉球コラソン)はステップシュート主体でゲームを組み立てる珍しいタイプ。トリッキーな選手が多い沖縄出身者のなかでも桁違いに、ステップシュートのバリエーションが豊富です。ステップシュートは打ちすぎると試合のリズムを壊しかねないのですが、東江は最後まで決め続けます。同じ琉球コラソンの田場裕也もステップシュートの名手。コーチ兼任の49歳は「DFの穴があちこちに見えるんですよね」と言っていました。今でもワンポイントで出てきて、「ステップシュートは体力ではない」と、プレーで実証してくれます。

小柴夏輝(北國ハニービー石川)は古武術的なカットインが主な武器ですが、ステップシュートが実は生命線です。自身の得点でゲームを組み立てるタイプなので、ステップシュートで攻撃をリセットできている時間帯は、面白いように点数が伸びていきます。井桁晴香(HC名古屋)はステップシュートが武器のセンターエース。2年目の今季は1対1の強さをベースに、ミドルシュートも交えて、バランスよく得点しています。井桁のステップシュートが決まりだすと、HC名古屋の逆転劇の始まりです。 (下に記事が続きます) 

藤坂尚輝(大同フェニックス東海)ブラインドシュート

日本代表に完全に定着した藤坂尚輝(大同フェニックス東海)
日本代表に完全に定着した藤坂尚輝(大同フェニックス東海)

DFと被った位置から放つブラインドシュートは、相手にとって脅威です。DFとズレていないのにシュートを決められると、DFもGKもダメージを受けます。

日本体育大学から大同フェニックス東海に加入した日本代表の藤坂尚輝は、世界でも通用するブラインドシュートの持ち主です。ノーマークのシュートよりもDFと被ったときの方が、藤坂のすごみがよくわかります。圧倒的なブラインドシュートを生かすためにも、これからは世界でも通用するゲームメークを身につけたいところです。ブラインドシュートで思い出されるのは、元日本代表監督のダグル・シグルドソン(元湧永製薬・現クロアチア代表監督)です。全体にリズムよくパスを配りながら、手詰まりになりそうな場面では長い腕をしならせ、ブラインドシュートを引っ張り(右利きのシグルドソンから見て左側)まで持っていくのが得意技。アイスランド代表キャプテンのダグルさんが日本でプレーし、日本を愛し、日本代表監督を長年務めて、日本の男子を強くしてくれたことを忘れてはなりません。

関洋香(HC名古屋)ピヴォットにもなれる

関洋香(HC名古屋)はライン際でもいい仕事をする
関洋香(HC名古屋)はライン際でもいい仕事をする

ライン際に切ってピヴォットになる動きができるセンターは、攻撃の表と裏が見えています。いわゆるダブルポストになった時に気の利いた動きができると、攻撃の幅が広がります。 

関洋香(HC名古屋)は生粋のセンターバックではありませんが、1対1が切れて、なおかつピヴォットでもいい働きをします。こういった動きを理解しているのは、高松商業高校(香川県)の伝統かもしれません。高松商業OGで、現在は高水高校(山口県)でコーチを務める谷華花(元ソニー)も、切ってピヴォットになる動きが得意でした。「強いテクニシャン」という新ジャンルを開拓している辻菜乃香は、7人攻撃でピヴォットになり、エリア内のパスを片手キャッチでポストシュートに持ち込みます。「身体接触上等」のフィジカルを武器にしながら、少し短めの腕から多彩な技を繰り出す、見ていて楽しい選手です。同じくイズミメイプルレッズ広島では、近藤万春がピヴォット兼用のセンターです。今季はトリッキーな動きを減らして、ボールを持ち過ぎないよう意識しているとのこと。劣勢になるとつい「頑張りすぎる」癖が直れば、チームを勝たせる司令塔になれるでしょう。

酒井優貴子(アランマーレ富山)DF力あり

勝負の責任を背負って、酒井優貴子(アランマーレ富山)は成長中
勝負の責任を背負って、酒井優貴子(アランマーレ富山)は成長中

センターの選手が2枚目DFに入ってくれると、攻防チェンジでメンバーを替えなくて済みます。DFからそのまま速攻で押していきやすくなりますし、ボール運びや展開力でもチームのプラスになります。

谷口尊(大同フェニックス東海)はトップDFができるセンターです。大同伝統の5:1DFのトップで動き回り、チームにエネルギーをもたらします。小山哲也(ジークスター東京)はファンタジスタ系ですが、大崎電気時代はDFで頭角を現わした選手。「2枚目DFの強度」を重視する佐藤智仁監督にとって、2枚目を守れる小山は欠かせない存在です。須田希世子(熊本ビューストピンディーズ)は小さな体で2枚目を守り、球際を制します。相手のクロスに対しても激しくコンタクトを繰り返し、時には「1人で3人を守る」ハードワークで、味方を鼓舞します。

酒井優貴子(アランマーレ富山)は2枚目での気の利いた動きをベースに、2年目の今季は攻撃力が大幅に向上しました。2024年12月の日本選手権では、勝負の責任を背負って打ち続けました。横嶋彩に代わるセンターエースになってほしい選手です。

末岡拓美(大崎オーソル埼玉)オールラウンダー

末岡拓美(大崎オーソル埼玉)はどこでもやれて、何でもできる
末岡拓美(大崎オーソル埼玉)はどこでもやれて、何でもできる

センターバックは本来であれば専門職ですが、本職でなくてもセンターでいい働きを見せる選手がいます。年季を積んだオールラウンダーが、チームのピンチを救います。

佐藤立盛(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)はどこでもできる選手で、今季はセンターの1番手でそつなく試合を作っています。若い頃は「スピードスターになる」と宣言していましたが、30歳に近づいた今は「最高の便利屋」に育ちました。末岡拓美(大崎オーソル埼玉)も使い勝手のいいオールラウンダー。センターで試合を作りつつ、ウイングやピヴォットにも入り、左右のバックでロングシュートを打つこともあります。いい意味で「ポジション不定」で、2枚目、3枚目DFを安心して任せられる守備力が末岡の持ち味。「ポジションをひとつに絞ったら、僕は単なる2番手になってしまうから」と、複数のポジションで試合の隙間を埋めていきます。

日本女子最高のオールラウンダー・松本ひかる(北國ハニービー石川)は、コートプレーヤー6ポジションすべてで得点を重ね、リーグ通算300得点を達成しました。本職はレフトウイングですが、今季はチーム事情でセンターの実質1番手になっています。ちょっと大変な役割ですが、若い小柴夏輝が一本立ちするまでは、松本の力が必要になりそうです。三橋未来(イズミメイプルレッズ広島)は開幕直前のケガが長引き、その間に新沼未央がライトウイングに定着したこともあり、今季はセンターで途中出場しています。フィジカルと賢さがあり、DFでは右の2枚目を守れるので、今の役割でも十分に機能しています。 (下に記事が続きます) 

古屋悠生(豊田合成ブルーファルコン名古屋)賢い組み立て

常に冷静な古屋悠生(豊田合成ブルーファルコン名古屋)。自身の得点力を最後のオプションで隠し持つ
常に冷静な古屋悠生(豊田合成ブルーファルコン名古屋)。自身の得点力を最後のオプションで隠し持つ

最終的にセンターに求められるのは賢さです。攻撃の全体像を理解し、味方のよさを引き出し、常に冷静に判断を繰り返しながら、チームを勝利に導く力が求められます。

古屋悠生(豊田合成ブルーファルコン名古屋)はその時々に組むメンバーに応じて、プレーや戦術を柔軟に変えつつ、勝負の際では自分で打ちにいける勝負根性も持ち合わせています。2024年12月の日本選手権決勝の延長前半、古屋は右側からミドルシュートを叩き込みました。古屋にしては少し強引に打ったように見えたシュートでしたが、古屋は冷静でした。「ピヴォットとの2対2でDFが寄っていたし、相手が横から追いかけてきたから、最悪でもフリースローは獲れると思って、右のアウトスペースを攻めました。僕は冷静じゃないと『いい選手』ではないので」。本当に勝算のある場面でしか打たない自制心と、この日1得点でも大事なところで決め切れるメンタリティがあるから、古屋は「勝てる司令塔」なのでしょう。

出番は限られていますが、ブレイヴキング刈谷のキャプテン・玉城慶也もクレバーな選手です。絶妙のフリーランニングで動き回り、プレスDFを崩します。小さくて賢いゲームメーカーなら、山城翔(福井永平寺ブルーサンダー)も忘れてはいけません。7人攻撃の判断力も含めて、明確な意図を持って攻撃をデザインします。

野田祐希(元豊田合成)7人攻撃

野田祐希(元豊田合成、現アブレイズ)の7人攻撃は、判断に間違いがない
野田祐希(元豊田合成、現アブレイズ)の7人攻撃は、判断に間違いがない

7人攻撃でどうしても紹介したいのが、かつて豊田合成で活躍した野田祐希です。現在は豊田合成のOBチーム、アブレイズでセンターを務めています。アブレイズは「運動量を減らすために」7人攻撃を取り入れているのですが、この7人攻撃が成り立つのは野田のパス回しがあるから。速い展開でズレを作って、ピヴォットにバウンドパスを通したり、両サイドに飛ばしパスを出したりと、とても鮮やかです。究極の7人攻撃を見てみたいという方は、アブレイズの試合を見るといいですよ。2025年2月の全日本社会人チャレンジでも、アブレイズは優勝しています。

以上がセンターバックに求められる役割と、選手の主だった特徴です。次回はライトバックを予定しています。

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