【空手】日本代表、初のオープン選考に | 2032年以降の五輪で復活目指す

男子60㎏級決勝は伊東大希(西濃運輸=左)と南秀之輔(近大)の対戦となり、迫力満点の激戦に=提供:全日本空手道連盟
男子60㎏級決勝は伊東大希(西濃運輸=左)と南秀之輔(近大)の対戦となり、迫力満点の激戦に=提供:全日本空手道連盟
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 憧れの日本代表を目指し、全国から男女337人が殿堂に集った――。2026年2月後半の週末、東京都江東区にある日本空手道会館はごった返していた。2日間の日程で開かれた第4回全日本空手道体重別選手権大会。今年からナショナルチームメンバーを選ぶ初めての選考会となり、優勝者は即日決定。また、16歳以上なら参加がほぼ無条件になったことで、前年より100人以上も参加者が増加。文字通り、世界を目指す体重別の日本一を競う大会に生まれ変わった。

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全日本体重別 世界狙う舞台に再生

初のナショナルチーム選考会として開かれた全日本空手道体重別選手権。女子50㎏級の斉藤光咲(右)ら、フェーズ3のフリーエントリー選手も躍動した=提供:全日本空手道連盟
初のナショナルチーム選考会として開かれた全日本空手道体重別選手権。女子50㎏級の斉藤光咲(右)ら、フェーズ3のフリーエントリー選手も躍動した=提供:全日本空手道連盟

 初日の21日朝。試合開始前に会場に出向くと、すでに熱気がムンムンと漂っていた。1階に全日本空手道連盟の事務局が入る建物は2、4階に5試合場を設置。審判員、係員らが1階級最大45人枠で準備された男女計10階級が始まるのを、今や遅しと待っていた。選手らは、と思えば、空手会館ではスペース的に待機エリアしか設けることが出来ず、隣接する区立第二辰巳小学校の体育館を借り、そこを練習会場にウォーミングアップに励んでいた。

 見渡すと、入り口近くの試合順を告げる集合場所以外には、空手着に着替えた選手たちがそれぞれの荷物とともにひしめき合っている。条件を緩和したことで特に女子は若い高校生が多いように感じた。すると、そこで様子を見ていたのが、昨年6月に就任した全空連の笹川善弘会長だった。

 早速、生まれ変わった新しい大会の狙いを聞いた。「昨年までのこの大会は、優勝しても国際大会に繋がる訳でもない。ナショナルチームに入れるわけでもなく、国内でも先に何もなかった。(空手が初採用になった2021年の)東京オリンピックのレガシーとして始まったが、過去これまでの3回は盛り上がりに欠けた」という。

これまでは推薦で決まっていたナショナルチーム

  確かに無差別でクラス分けのない「形」と違い、「組手」の国内の大会は、元々、大学生までは体重別の全国大会があった。しかし、卒業後、シニアと言われる一般社会人になると、この大会が始まるまでは体重無差別の全日本選手権があるのみ。21年東京オリンピックは基より、昨年までは世界選手権、その他の国際大会への派遣は、加盟団体等からの推薦で選ばれたナショナルチーム内で選考が行われる形が延々と続いてきた。

 「そこで、大会の価値も挙げたかったし、何よりナショナルチームの選考が有力団体の所属選手に偏る傾向もあったので、開かれた形でオープンに、分かりやすい選考にしたかった。地方にいても、力があれば、誰でもナショナルチーム入りが出来るように、と改めた。それに合わせて国際大会の日本代表を選ぶナショナルチーム自体の存在感も、これまで以上に高くしたかった」(下に記事が続きます)

エントリー緩和され、チャンス拡大

 過去3回の参加者は毎年増えてはいたものの、204人、222人、236人だった。エントリーの条件は①フェーズ1 その年度のシニア、18~20歳のU21、ジュニアのナショナルチーム所属選手と全日本選手権優勝者②フェーズ2 地区協議会、実業団、学生連盟、高体連、協力団体から推薦された者、の二つだった。それが今年は新たにフェーズ3として、「それで45人に満たなかった場合、フリーエントリーとする」との項目が加えられた。日本代表を目指すなら、誰にでもチャンスが広がった。反響は大きく、フェーズ3のエントリー数は115人にも。男子の軽い階級は受付開始からわずか10分以内で締め切り状態になったという。

 事前に参加人数が大幅に増えることは分かっていた。だが、会場を過去と同じ空手会館から動かさなかったのは何故か。笹川会長は、「ここは言わば、空手界の殿堂。過去の世界チャンピオンや全日本選手権者の名前も飾ってある。若い選手ではなかなか空手会館に来る機会もないし、その歴史を知ってもらうとともに、事務局もある全空連を身近に感じて欲しかった」と説明した。

笹川善弘会長=提供:全日本空手道連盟
笹川善弘会長=提供:全日本空手道連盟

男子60㎏級・伊東大希「やっと堂々と代表入り」

表彰式は決勝進出者2人で男女2階級ごと。女子55㎏級で優勝した向井瑠杏(M&M company=右から2人目)ら=提供:全日本空手道連盟
表彰式は決勝進出者2人で男女2階級ごと。女子55㎏級で優勝した向井瑠杏(M&M company=左から2人目)ら=提供:全日本空手道連盟

 決勝トーナメントに絞られた22日の最終日。決勝の試合場には観客席も設置された。相手との間合いを詰めるスピード。鋭い突きや蹴りにはどよめきも起こった。息詰まる熱戦の連続に会場のボルテージが上がる。男子で最も軽い60㎏級の決勝には、過去3年いずれも表彰台に上った伊東大希(西濃運輸)が登場したが、惜しくも準優勝に終わった。2年ぶりの優勝こそ逃したものの、24歳の表情は清々しかった。「やっと日本王者が堂々とナショナルチーム入り出来る形が整った。軽量級の選手にも、年齢別のカテゴリーを超えて、誰が今は日本で一番強いか、を決める大会が出来て本当に嬉しい」

 女子で2番目に軽い55㎏級優勝の向井瑠杏(M&M company)は、3歳から空手を始めて23歳で初めて全国大会で優勝したという。ナショナルチームへの挑戦も6度目で初めてかなった。「これで日本代表への道が開けた。世界王者になれるように頑張りたい」と周りからの祝福にうれし泣きした。(下に記事が続きます)

女子50kg級の高3・斉藤光咲「楽しい」

 フェーズ3からの決勝トーナメント進出者は9人。優勝者は出なかったが、大会に初挑戦した若手に話を聞きたいと思い、女子最軽量の50㎏級にエントリーした斉藤光咲(千葉・日体大柏高3年)を取材した。彼女は高校の千葉県王者で全国大会でも活躍。母校で指導する元世界王者で東京オリンピック女子61㎏超級代表の植草歩さんの教え子だ。

 初戦に勝利した後の2回戦で敗れたが、手ごたえはつかんだ様子。「強い選手と戦いたいと思って申し込みました。高校生の試合とは距離感が違ったが、やっているうちに感覚が分かってきた。息も苦しくなかったし、楽しいなと感じた」と明るい声で話してくれた。(下に記事が続きます)

新エンブレムのロゴは「TEAM JAPAN」

新旧エンブレム。右が新しく採用される「TEAM JAPAN」のロゴ入り=提供:全日本空手道連盟
新旧エンブレム。右が新しく採用される「TEAM JAPAN」のロゴ入り=提供:全日本空手道連盟

 選手らには高評価が続いた大会を指導陣はどう見ていたのか。男女の国際大会で日本代表を指揮する古川哲也ナショナルチーム監督に聞くと、こちらもほぼ同意見だった。「これまでナショナルチームにいた選手らも継続して選ばれたし、新人も選ばれた。これにより、またいい刺激が生まれるだろう。空手をやっている多くの人に新しいやる気を起こさせるはずだ。分かりやすい選考システムになってくれた。フェーズ3は良いスタートになったと思う」と話した。

 この大会の10人の優勝者を始め、新年度にナショナルチーム入りする選手らには、もう一つ、新たなモチベーションが誕生することも分かった。これまで「日の丸」の下に「JAPAN」としていたチームエンブレムを日本オリンピック委員会(JOC)の許可を得て、文字のロゴ部分を夏季、冬季のオリンピック代表チームが使う「TEAM JAPAN」に変更することになったのだ。24年パリ、28年ロサンゼルスでは見送られたが、32年ブリスベン以降のオリンピック再挑戦を強くアピールしていくとともに、選手らにも日本のスポーツ界を代表する意識を持ってもらう狙いからだという。

 今年の反響を受けて、来年以降は競技人口の多い男女の軽い階級の出場枠を増やす案も早速、出ている。選手と指導陣の現場、運営を担う全空連にも、新たな活力が感じられた。

 日本から始まった武道に起源を持つ先輩格の柔道は1964年の東京の初採用の後、68年のメキシコは見送られて、72年のミュンヘンでオリンピックに復帰。その後は継続されている。5年前の21年東京でその仲間入りした空手が、文字通りの「TEAM JAPAN」へ復帰出来るのか。新たな挑戦と改革が始まった。

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