ハンドボールの男子日本一を決める第75回日本選手権は2023年12月17日、仙台市のカメイアリーナ仙台であり、豊田合成がトヨタ車体を29-28(15-14,14-14)で振り切り、4年連続5度目の頂点に立った。豊田合成は26-25の後半26分、日本代表GKの中村匠が、同じく日本代表でトヨタ車体の得点源、渡部仁のシュートを左足で止めるビッグセーブで車体の流れを食い止めると、直後にはキューバ出身のヨアン・バラスケスが連続得点を決めて勝利を決定づけた。最優秀選手賞はそのバラスケスが受賞。6得点とアグレッシブなディフェンスが評価された。観客は1930人だった。
GK中村が好守 豊田合成唯一の日本代表
日本代表がパリ五輪の切符を16年ぶりに自力で獲得した年の頂上対決。決勝はそれにふさわしい好ゲームとなった。主役はパリ五輪行きを決めたアジア予選でも日本代表ゴールを守った豊田合成のGK中村。豊田合成で唯一のパリ五輪アジア予選代表だ。
「パリ五輪を決めて周囲の期待を受けているのを感じるし、チームは4連覇がかかっていた。ラフプレーも多く出たように、チームは少し浮き足立っていた」と振り返った中村。それでも、「悪い流れの時間帯をいかに早めに切るか。その時間を最小限に食い止められるのがいまの豊田合成のいいところ。ディフェンスに声をかけて、自分が止めやすいコースに限定できるように集中した」という。
しびれる駆け引き 代表の盾と矛
試合終盤までこの日、1人で両チーム最多の9得点とキレキレだったトヨタ車体の渡部の個人技に苦しめられた。ファンにとっては、日本代表の「盾」と「矛」が存分に持ち味を発揮し、駆け引きし合うしびれる攻防の連続だった。
中村は渡部に動きを読まれて逆を突かれるシーンが目立ったが、ディフェンスとの連携で徐々に修正。試合終了残り4分の渡部のシュートを阻止したビッグセーブは、ディフェンスの枝にかすったボールを自身の左足で確実に止めた。
「ごめん」じゃなくて「ありがとう」
ゴールを守る最後の砦として、中村は意識していることがある。これまでは試合中に「ごめん」ということが多かったが、それをやめて「ありがとう」というようにしている。「GKのメンタルはチームに伝播する。だから、自分だけは心が折れてはいけないと思っている。ごめんより、ありがとうって言われるとうれしくないですか?そういわれた方も乗ってくる。だから、点を取ってくれてありがとう。コースを絞ってディフェンスしてくれてありがとう、です」。日本代表も、豊田合成も最終ラインから「感謝の言葉」でチームを盛り立て、統率する。
日本代表 虎視眈々と狙う者も
豊田合成の田中茂監督は試合後の記者会見で、日本の「パリ五輪切符」の効果をこう話した。「うちのチームの日本代表はいまGKの中村匠ひとりですけれど、五輪の出場権をとってくれた人と、実際に出場する14人のメンバーは違っていい。中村が代表で活躍して五輪切符をとったことで、虎視眈々と代表入りを狙っている選手がうちにもいる。それは大きなモチベーションになっている」。
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