MENU
ニュースレターに登録する

「今週の1本」やイベント案内など、スポーツの風をお届けします。

個人情報の扱いはプライバシーポリシーをご覧いただき、同意の上でお申し込み下さい。

”ペンで、心を動かす”Pen&Co.株式会社が運営しています。

ハンドボールライター・久保弘毅が観た女子日韓戦 | あと1点、パリ五輪へ次こそ

ハンドボール女子パリ五輪アジア予選、日韓戦
24-25で惜敗した日本代表(撮影:多田千香子)
  • URLをコピーしました!

 広島で開催された女子ハンドボールのパリ五輪アジア予選。日本代表(おりひめジャパン)と韓国はともに3戦全勝で、最終日の直接対決を迎えました。総得失点差で上回る日本は、引き分けでもパリ五輪行きの切符が手に入る状況で、宿敵・韓国と息詰まる熱戦を繰り広げました。 ハンドボールライター・久保弘毅がレポートします。

目次

8月23日15:00、入場。GK3人体制で勝負

相澤キャプテンを先頭に、韓国戦を戦う16人が入場(撮影:久保弘毅、以下すべて)
相澤キャプテンを先頭に、韓国戦を戦う16人が入場(撮影:久保弘毅、以下すべて)

韓国戦のベンチ入り16名は以下のとおりです。(代表メンバー22人はコチラ

亀谷永田佐原初見北原服部笠井馬場中山松本犀藤岡田佐々木吉留石川

 前日の中国戦からライトウイングの尾﨑佳奈を外して、GKの馬場敦子を戻しました。亀谷さくら、馬場、犀藤菜穂のGK3人体制は、これまでになかった布陣。2枚目を守れる吉留有紀、笠井千香子、初見実椰子の3人を揃え、かなり守りを重視したメンバー構成になりました。

試合開始:5-0、最高の立ち上がり

守って走れる吉留が、チームに流れを呼び込んだ
守って走れる吉留が、チームに流れを呼び込んだ

吉留の速攻から日本は波に乗り、開始5分で5-0とリードを奪います。GK亀谷が好セーブを見せ、ピヴォットのスタメンに抜擢された笠井が速攻に走るなど、昨日の中国戦でも好調だった2人がチームに勢いをもたらしてくれました。韓国は前半5分で早くもタイムアウトを取りました。日本を率いる楠本繁生監督は「立ち上がりに5点をリードしたけど、ゲームの流れから言って、このまま韓国を突き放すのは難しい。目の前のプレーを一つひとつやっていこう」と、選手に声をかけたそうです。

前半5分:韓国タイムアウト。日本、3枚目DFに甘さ

真ん中の2対2でやられるシーンが、今大会は目立った
真ん中の2対2でやられるシーンが、今大会は目立った

タイムアウト明けで韓国は、ピヴォットのギム・ボウンにパスを落としてきました。3枚目を守る永田美香、佐々木春乃がいる真ん中での2対2。今大会の日本は3枚目のDFの連携がやや甘く、この日もやられたくないところでやられました。佐々木は「わかってはいるけど、韓国はバックプレーヤーが強力だから、前に詰めると、ピヴォットに裏を取られてしまう」と言っていました。

前半11分:ピヴォット笠井、「離れ際」の美しさ

DFから離れてノーマークになり、パスをもらった笠井
DFから離れてノーマークになり、パスをもらった笠井

前半11分になろうかというところで、ピヴォットの笠井がライン際でシュートを決めて7-4としました。この時の笠井の動きが見事でした。相手DFを押し込んだあとにサッと離れて、完全にノーマークになりました。これぞ「離れ際」の極意!笠井の動きを見逃さず、パスを落としたセンターの相澤菜月もさすがでした。 

前半15分:日本、9-6で早めのタイムアウト

須東GKコーチと3人のGK
須東GKコーチと3人のGK

前半15分9-6とリードしている場面で、日本は1回目のタイムアウトを取りました。まだリードしていましたが、韓国の変化を察知した楠本監督は早めに手を打ってきました。韓国は大型ピヴォットのカン・ミュンヘが出てきて、日本のDFの裏でボールをもらいました。幸いGK亀谷がセーブしたので失点にはなりませんでしたが、危ない場面でした。傷口が広がる前に、早めに手を打った感じです。

前半30分終了。15-14と日本1点リード

中国戦、韓国戦と、GK亀谷は大当たりだった

韓国はセカンドメンバーを使いながら、徐々に点差を詰めてきました。前半終わって15-14と、日本が1点リードで折り返します。日本は昨日に続いてGK亀谷、ピヴォットの笠井が絶好調です。ただしこの勢いが60分続くとは思えません。後半へ向けて課題を修正するとともに、次の手を用意しておきたいところです。 

後半4分:韓国、16-16の同点に追いつく

日本のDFの裏を、韓国は利用してきた

後半4分、韓国はピヴォットのギム・ボウンの2次速攻で16-16の同点に追いつきました。日本はそこそこ守れているし、戻りも頑張っていますが、セットOFでの攻め手を欠く印象がありました。昨日まで好調だった岡田彩愛、石川空といった若い力が不発気味で、主力が出ずっぱりになりました。相澤菜月の単発のシュートで食いつなぐ時間帯が続きます。17分には19-21と2点ビハインドとなり、楠本監督はタイムアウトを取りました。

後半20分、7人攻撃から21-21に

次の次の手まで用意しているのが、楠本監督のすごいところ

攻撃が行き詰まっていた日本は、タイムアウト明けから7人攻撃を仕掛けます。GKをベンチに下げて、180㎝の長身の永田と機動力に長けた笠井の2人をライン際に置きました。20分には左利きの中山佳穂が回り込みながら、ピヴォットの永田にパス。「この攻め方なら中山からパスが落ちてくるのはわかっていたから、必死でした」と話す永田が、ライン際で7mスローを獲得しました。相澤が7mスローを決めて21-21。日本が同点に追いつきました。これまでだったらズルズルと離されそうな展開で、もう一度同点に持ち込んだあたりに、日本の成長を感じました。 

一進一退、リュウ・ウニを守る

吉留のシュートブロック(左写真)。永田のシュートブロック(右写真)

その後は一進一退の攻防が続きます。日本はなかなか点数が伸ばせないなかでも、しぶとく守ります。世界的な左腕リュウ・ウニのシュートをDFの枝でブロックします。GK亀谷もDFの枝(腕でシュートコースを限定すること)を利用しながら好セーブ。ケガ明けで、あまり状態のよくないリュウ・ウニを、チーム全体で守れていました。

後半27分、相澤が23点目。際立った「個の強さ」

相澤は苦しい場面でも冷静さを失わない
相澤は苦しい場面でも冷静さを失わない

攻撃では苦しみながらも、7人攻撃からセンターの相澤がカットイン。後半27分、7mスローを獲得して、自分で決めて帰ってきます。苦しい場面でも、個の力で勝負できるのが相澤の強み。味方の得点を伸ばしつつ、最後になれば勝負の責任を背負い、先頭に立ってゴールを狙います。1試合10点取れる得点力を最後のオプションで隠し持つあたりは、究極のセンタープレーヤー像そのもの。世界でも通用する「個の強さ」の持ち主です。

後半29分:大砲リュウ・ウニ、25点目。日本、万事休す

不調だったリュウ・ウニが、最後にロングシュートを決めてきた
不調だったリュウ・ウニが、最後にロングシュートを決めてきた

後半28分。23-24で、韓国が最後のタイムアウトを取ると、直後のプレーでリュウ・ウニが流しにロングシュートを決めて、23-25としました。この1点が日本の「息の根を止める」1点になりました。昨年12月のアジア選手権では、日本戦で1試合19得点をあげた世界的左腕も、この日はやや苦しんでいました。それでも最後の最後に決めてくるあたりはさすがです。日本は佐々木の得点で1点を返しましたが、残り時間を韓国が使い切り、24-25でゲームセット。韓国が勝って、パリ五輪の出場権を手にしました。

あと1点が届かず。アジア予選で五輪出場は決められなかった

17:30、試合後の会見「相手を超えないと」楠本監督

試合後の記者会見で質問に答える楠本監督
試合後の記者会見で質問に答える楠本監督

試合後の会見で楠本監督は「ゆっくりと時間をかけて整理しながら、今日の試合を考えていきたい」と話していました。亀谷の大当たりもあり、GKの阻止率は韓国を上回っていました。後半の点が取れない時間帯では7人攻撃と相澤の個人技で割り切り、「勝つ」というよりも「負けない」戦いを選んだようにも見えました。でも、あと1点が届きませんでした。楠本監督は「韓国に近づいているのは間違いないけど、相手を越えないと、勝ちは巡ってこない」とも言っていました。

日本の女子も強くなったが、韓国の女子は今もなお強い
日本の女子も強くなったが、韓国の女子は今もなお強い

歴代最強の組織力で臨んだおりひめジャパン。今回は「1点の重み」に泣きましたが、いつまでも下を向いてはいられません。このあともアジア大会、世界選手権、さらには来年の世界最終予選があります。パリ五輪への可能性が消えてしまった訳ではありません。足りなかった「何か」を見つけて、次こそは勝ち切れるように。おりひめたちのこれからに期待しましょう。

記録はコチラでご覧ください。

ペンスポニュースレター(無料)に登録ください

スポーツ特化型メディア“Pen&Sports”[ペンスポ]ではニュースレター(メルマガ)を発行しています。ペンスポの更新情報やイベントのご案内など、編集部からスポーツの躍動と元気の素を送ります。下記のフォームにメールアドレスを記入して、ぜひ登録ください。

個人情報の扱いはプライバシーポリシーをご覧いただき、同意の上でお申し込み下さい。

  • URLをコピーしました!

\ 感想をお寄せください /

コメントする

目次