男子サッカー日本代表は、キャプテンの遠藤航(33)が負傷で長期離脱することになった。2026年6月11日に開幕する北中米ワールドカップに間に合うことを期待するが、状況は定かではない。ピッチにおける戦術の屋台骨であると同時に精神的な支柱でもある主将を抜きにして戦う準備をする必要に迫られている森保ジャパンは、どこに向かえばよいのだろうか。
左足首、大きくゆがむ
イングランド・プレミアリーグのリヴァプールFCは2月11日のサンダーランドAFC戦にオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイクの得点により1-0で勝利した。この試合で日本代表MF遠藤航は今季初となる先発出場を果たした。右フルバック(サイドバック)として持ち味の粘り強い守備を発揮しアウェイ戦で完封勝利に貢献したが、負傷により69分にピッチを退いた。
遠藤航は、相手の右サイドからのクロスの際に自陣ゴールに戻りながら体を投げ出してボールを左足でゴールラインに掻き出した。しっかりと失点のリスクを回避する好プレーだったが、ボールを弾いた直後に左足スパイクのスタッドが芝に引っかかり、そこに自身の体重が一挙に乗り、足首の関節が大きく歪んだ。交代選手の準備が整うまで気迫のプレーを続けたが、最後は担架でピッチ外へ運ばれた。
見るからに重症が懸念される状況で、多くのレッズ・サポーターが顔を歪めたが、精密検査を経てアルネ・スロット監督は3月の復帰が難しいことを明言。状況は流動的だが2025-2026シーズン中の復帰には含みをもたせた。
リヴァプールFCのプレミアリーグ最終節は、5月25日のブレントフォードFC戦。そして欧州チャンピオンズリーグ決勝は5月30日に開催される。
北中米ワールドカップ・グループFの日本代表は6月14日(日本時間15日)にダラスでオランダとの初戦に臨む。実戦に復帰しても体調や試合感をピークに戻すのはまた別問題であり、ワールドカップで遠藤航が万全な状態でプレーできるかは、かなりギリギリのタイミングだと言わざるを得ない。(下に記事が続きます)
チーム構築の再考を迫られる森保監督
サムライブルーの森保一監督は、主将の負傷による長期離脱により、チームのコアとなる部分で様々な状況を想定する必要が出てきた。
本大会のメンバーに選出できるコンディションに戻ることが理想ではあるが、仮に復調が間に合わなかった場合はトレーニング・パートナーあるいはコーチとしてチームに帯同させて、遠藤航のチームキャプテンという立場は継続すべきだろう。試合でプレーができなくてもチームをまとめ上げる能力を発揮することは可能だ。
ワールドカップまでにマッチフィットネスと試合感が戻れば、もちろん遠藤航は出場選手のローテーションに入ってくるだろう。しかしピッチに立てない場合は、ゲームキャプテンが必要になってくる。これまで遠藤航が不在時にキャプテンマークを巻くことが多かった南野拓実が左膝前十字靭帯断裂という重傷を負い、ワールドカップ出場が微妙な情勢だ。日本は、攻守におけるチームのリーダーなしで世界の大舞台に立たなければならない可能性が出てきた。これまでの経緯を踏まえると、ゲームキャプテンには鎌田大地、板倉滉、久保建英、谷口彰悟などの名前が思い浮かぶ。(下に記事が続きます)
アンカーは誰に?
遠藤のポジションである守備的MF(ボランチ)については、どうだろうか。佐野海舟、守田英正、田中碧、鎌田大地、藤田譲瑠チマが代役として適任だろう。しかし、3月に英国で行われる国際親善試合では、アンカーとして新たな選択肢をテストすることを提案したい。
その選手とは、瀬古歩夢だ。肋骨骨折で一時戦列を離れているが、長期的なコンディションへの影響はほとんどないだろう。主なポジションはセンターバックであり、日本代表では左フルバック(サイドバック)でテストされたことはあったが、守備的MFで起用されたことは皆無だ。では、なぜ本大会目前の差し迫った状況で、残り数少ない貴重なテストマッチをこのオプションに費やす必要があるのだろうか。
一つには、瀬古歩夢の成長が挙げられる。ワールドカップ直前のシーズンながら、リスクをとって欧州5大リーグであるフランス・リーグ・アンに移籍し覚醒している。瀬古歩夢は自分のポジションはセンターバックだと自負しているが、所属するル・アーヴルAC、そして前所属のグラスホッパー・クラブ・チューリッヒ(スイス)では守備的MFも務めている。(下に記事が続きます)
厚さを取り戻すセンターバック陣
これまで、日本代表ではセンターバックのバックアップ的な位置づけにあった瀬古歩夢。新境地を切り開いているが、板倉滉、渡辺剛、高井幸大、鈴木淳之介に加えて、負傷からの復調を見せている伊藤洋輝、谷口彰悟、冨安健洋、町田浩樹など、選手層は厚さを取り戻しつつある。
守備的MFのポジションも佐野海舟の成長などもあり、層は決して薄くないが、瀬古歩夢には他のボランチの選手にない特徴がある。それは高さだ。身長186cm・体重81kgはセンターバックとしてはそこまで大型ではないが、ボランチとしてはかなりの大型だ。世界に目を向けると珍しいわけではないが、日本においてこのサイズは非常に貴重だ。先述のボランチ陣と比較すると頭一つ抜けている。
国際試合で日本に対して、相手は背丈を突いてくる場合があるが、瀬古歩夢が中盤に入ることで、相手の戦略を打ち消すことができる。(下に記事が続きます)
長身のイングランド対策
さらに3月に日本代表が対戦するスコットランドとイングランドは、フィジカルを全面に押し出すスタイルでロングボールを多用してくる。そんな相手に対しても国際規格の瀬古歩夢のサイズがあれば、十分に跳ね返すことが可能だ。
フランスで成功している瀬古歩夢は、次なるステップアップとしてイングランド・プレミアリーグを念頭に入れており、モチベーションは高いだろう。そこでプレミアクラブのスカウトの目に留まれば、さらなるステップアップも夢ではない。しかし、これは瀬古歩夢の個人としての目標というだけではなく、日本代表が来たるワールドカップで高みを目指す上でも有益となる。
世界的に見れば日本は地上戦を得意とするチームだが、イングランドのように空中戦が武器のチームもある。ワールドカップで優勝を目指すのであれば、当然ながらこのようなチームにも勝利を収めなければならない。国際試合でセンターバックが長身なのは、もはや当たり前だが中盤の選手には様々なサイズの選手がいる。瀬古歩夢は長身の国相手の対策としてうってつけなのだ。(下に記事が続きます)
新たな戦術のオプション
そして、瀬古歩夢の本職がセンターバックという点は、森保ジャパンにさらなる戦術的な深みをもたらす。
現代のサッカーにおいて、アンカーの選手がディフェンス・ラインに降りてくることは珍しくない。深い位置でボールを受けてビルドアップをすることもあれば、相手の攻撃選手をマークしながら臨時で後方に引いてきて守備を強化することもある。
瀬古歩夢はアンカーとセンターバックの両方の適性があるため、臨時ではなくほぼ半々で両方の位置取りをしても、チーム力が歪(いびつ)になることはない。例えば、試合開始時は【3-4-2-1】の中盤でプレーし、途中で【4-1-4-1】のセンターバックとなり、そしてまた元のシステムに戻すといったことも可能になる。
試合終盤に相手がゴール前にロングボールを放り込んでパワープレーでゴリ押ししてきた際に、瀬古歩夢をディフェンス・ラインに吸収させて4バックにするようなシーンが想定できる。
中盤の底から前に出る佐野海舟と守備を固める瀬古歩夢のゴールデンコンビを是非見てみたい。そしてそれは遠藤を長期離脱で欠く日本代表にとって力強い戦術オプションになるだろう。

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