FIBAバスケットボールワールドカップ2023(日本・フィリピン・インドネシア共催大会)で世界ランク36位の日本は9月2日の最後の試合、カーボベルデ(世界ランク64位)戦に勝てば、無条件でパリ五輪出場が決まる。負けても得失点差や、他のアジア勢の結果次第でアジア1位の可能性は残り、パリ五輪決定がありうる。パリ五輪が決まれば日本の団体球技で第1号。男子バスケットボールとしては1976年モントリオール五輪以来48年ぶりの自力出場となる。
18点差、15点差から格上を逆転「番狂わせ少ない」バスケの常識破る
あらゆるスポーツの中でも番狂わせが起きにくいバスケットボールで、今大会の日本は常識を破る、神がかりの快進撃を続けている。
フィンランド戦(8月27日、世界ランク24位)は最大18点差を跳ね返し、過去11戦全敗だった欧州勢から大金星を挙げた。豪州には力及ばなかったが、続くベネズエラ戦(8月31日、世界ランク17位)は15点差をつけられた状況から、第4Q残り2分を切って逆転、そして勝ち切った。
パリ五輪の出場枠「12」へ、実力以上のモメンタム
3Pシュートを多用する戦術、試合の流れを一気に手繰り寄せるベテラン選手の起用、対戦相手の心をへし折る沖縄アリーナのホームの熱気、大声援。すべてが絶妙にかみ合って、日本の男子バスケは本来の実力以上のパフォーマンスを発揮できていると感じる。
この爆発的で、国民的な高揚感をスポーツで感じるのはいつ以来だろうか。今年3月にMLBの大谷翔平(エンゼルス)が牽引して優勝した野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)以来か。もっと言えば、日本が南アフリカから大金星を挙げた2015年ラグビーワールドカップに匹敵するモメンタム(勢い)とサプライズを感じる。
パリ五輪の男子バスケットボール出場枠は12。今回のワールドカップには32か国が出場していることを鑑みると、かなりの狭き門の目前にまで自力で到達した。さあ、あと1勝だ。
2014年、リーグは分裂状態。バスケ暗黒時代
今からほんの9年前、日本バスケがどうしようもない状況だったのをご記憶だろうか。私が朝日新聞社のスポーツ記者だった2014年、日本のバスケはFIBAから制裁処分を受け、男女の日本代表だけでなく、すべての年代の代表が国際試合に出場できない資格停止処分を受けていた。私は当時、西五反田にある日本リーグの事務所に連日通い詰めた。
日本国内の最高峰リーグが、オールアマチュアのナショナルリーグ (NBL)とbjリーグ (bjリーグ)の2つに分裂していたことがFIBAから問題視されたのだ。他社のスポーツ記者と一緒に、足の感覚がなくなるまでネタを逃さないように立っていた苦しい思い出がよみがえる。
FIBAからすれば、2020年の東京五輪開催が2013年に決まった日本には、強い代表チームを持つ、観客を呼べる国になってもらわないと困る事情があった。しかし、当時の国内バスケットは観客が入らず、競技の普及や育成方針も対立した両リーグによってバラバラで一枚岩ではなかった。もう一度言う。いまからたった9年前のことだ。
それ以前にも2006年にさいたまスーパーアリーナにFIBA世界選手権を招致したが、男子日本代表は見せ場なく予選敗退し、運営は大赤字だったこともFIBAの反感を買っていた。
B.LEAGUE創設、改革。再び国際舞台へ
あれから9年。川淵三郎JBA会長(当時)の強力なリーダーシップのもと、バスケ界はB.LEAGUE創設を含めたさまざまな改革を進めて、今の日本バスケがあるのはご存じの通りだ。制裁から半年程度の短期間でその道筋をFIBAに示すことができたことからこそ、2015年8月にFIBAからの制裁は解除され、バスケットボール日本代表は、再び国際試合の舞台へ戻ることができたのだ。
9年前の日本バスケの暗黒の時代を取材していた立場ゆえ、今大会の日本男子の快進撃、そして沖縄、日本バスケファンのこの盛り上がりをなおさら夢のように感じてしまう。日本男子には五輪を自力で決められる極めて有利な状況を、特別なものと思わず、臆せず、気負わず、自然体でプレーしてほしい。今夜こそ、All’s well that ends well. (終わり良ければすすべて良し)だ。
世界ランク64位でも軽視できないカーボベルデ
さて、今夜日本が対戦するカーボベルデは世界ランキング64位で、日本の36位を下回るが、日本が苦戦したベネズエラを破っていることもあり、油断できない。
チームの大黒柱は身長221センチの超大型センター、エディ・タバレ(31)だ。現在はスペインリーグのレアル・マドリードでプレーするビッグマンは、過去にNBAアトランタ・ホークス、クリーブランド・キャバリアーズなどでも活躍した。ゴール下の競り合いに強く、日本はリバウンドで苦戦しそうだ。周りを活かす状況判断にも優れており、警戒しなければいけない選手だ。
カーボベルデ共和国とは:北西アフリカの島国
北西アフリカの西沖合に位置する群島によって構成される島国。10の島(うち9島が有人)と8の小島からなる。総面積は4033平方キロと日本の滋賀県程度。人口は56万人あまりで東京・八王子市より少なく、FIBAバスケットボールワールドカップ出場32か国で最少。「カーボベルデ」はポルトガル語で緑の岬の意味。首都はプライア。温暖な気候で農業(サトウキビ、バナナなど)、漁業(マグロなど)が基幹産業。オリンピックはアトランタ大会以降、夏季五輪に毎回選手を派遣しており、2021年東京五輪には新体操にMarcia Alves Lope、競泳にTroy Pinaが出場した。
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