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【プロ野球】ヤクルト増田珠の声出し、マオリの「ハカ」はアリ?

オールブラックスの「ハカ」
ラグビーワールドカップ2023決勝の南アフリカ戦で、ハカを披露するボーデン・バレット(右)、アーロン・スミス(中奥)、リエコ・イオアネ(左)=写真:ロイター/アフロ
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2024年プロ野球ペナントレースも開幕から1カ月半。5月末からはセパ交流戦が始まります。プロ野球では、試合開始直前に行なわれる「声出し」という慣習があります。選手が円陣を組んで、指名された選手が短いスピーチや、モチベーショントークをしてチームに気合を入れる。会社の「朝礼」にも通じるものがありますね。2023年3月のWBC決勝の米国戦前には、大谷翔平がロッカールームで「(大リーガーに)憧れるのをやめましょう」とナインを鼓舞してから「さあ、行こう!」と締めた「声出し」は伝説です。

目次

「ハカ」で4連勝 ヤクルト増田内野手の思い

そんな声出しをめぐって先月から今月にかけて、「成果」を出した選手がいます。ヤクルト・スワローズの増田珠(ますだ・しゅう)内野手(24)。今季初めて1軍に昇格した試合前に声出しの担当に指名され、そこでなんと、ラグビー・オールブラックスの試合前の儀式として有名な「ハカ」を披露したのです。

勝てば、げんを担いで声出し担当は継続するため、増田がハカで気合を注入し続けたヤクルトは今季初の4連勝を飾りました。

増田は長崎市出身。神奈川・横浜高から2017年ドラフト3位で入団したソフトバンクを昨シーズン限りで戦力外となり、今季からヤクルトに活躍の場を求めています。増田は「チームを盛り上げられるように」という一心でムードメーカーに徹し、声を張り上げて、真剣にハカを舞っています。昨シーズンまで在籍したソフトバンク時代からハカを声出しに取り入れていたそうです。

「ハカって、ニュージーランド、オールブラックス、マオリ族の大事な舞だと思うんで…。今日はぼく、本気でやるんで。気持ちギュっとして、今日勝ちましょう!」

増田はそう叫んでチームを鼓舞します。ある日はヤクルトのユニホームの下に着ていたオールブラックスのTシャツ姿になってハカを踊る気合の入れようでした。

ヤクルトでは増田に共鳴する選手が次第に増えていき、最大10人でハカを舞った日もありました。増田は今月、プレーでもここまで(5月11日現在)6試合に出場し、8打数2安打2得点とチームに貢献しています。(下に記事が続きます)

「なんでハカ?」「マオリに対して失礼」

ところが、SNSを中心に一部では「なんでプロ野球でハカなの?」「マオリ族に対して失礼」「民族的、文化的な背景を理解しているのか」などといったニュアンスの批判や「もっとクオリティを上げてほしい」「周りの選手がニヤニヤしているのがちょっと…」などというツッコミがありました。

一方、それらに対して「ふざけてやっているわけではない」「スポーツの垣根を超えてハカを取り入れてくれて、ラグビーファンとしてもうれしい」などという好意的な反応も見られ、議論は思わぬ広がりを見せています。念のため、懇意にしている球団職員に聞いてみると「増田は礼儀正しく、素晴らしい選手ですよ。決してふざけてやっていないですし、球団は問題視していません」という答えが返ってきました。(下に記事が続きます)

「そこにリスペクトがあれば大丈夫」

東芝ブレイブルーパス東京・ブラックアダー監督
ニュージーランド出身の東芝ブレイブルーパス東京・ブラックアダーHC(右)とリッチー・モウンガ(原田写す)

ハカはニュージーランドの先住民マオリ族伝統の舞い。戦いの前に足を踏み鳴らすなどして自らの力を誇示するもので、ラグビーワールドカップで3度優勝の同国代表「オールブラックス」が試合前に行う儀式として世界に認知されました。オールブラックスが初めてハカを披露したのは1905年のイギリス遠征。それ以来、現在でもその伝統が受け継がれています。

そこで、オールブラックスの元主将で1995年から2000年にかけて25試合(テストマッチ12試合)に出場した経歴の持ち主、ラグビー・リーグワン東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダーヘッドコーチ(HC)に2024年5月10日、東芝府中グラウンドで聞きました。

「日本のプロ野球選手が試合前、ハカで気合を入れるのはアリですか?」

ブラックアダーHCはヤクルトの増田がハカを舞ってチームを鼓舞していることを知りませんでしたが、言葉を選ぶようにこう話しました。

「そこに(マオリへの)敬意とリスペクトがあれば全く構わないと思います。ハカというのは、ラグビーだけのものだけではありません。団結を強め、相手を威嚇するように思われがちですが、もともとは感謝や敬意を表す舞いです。ニュージーランドでは結婚式などのセレモニーで余興として舞うこともありますよ」

キーワードは「敬意」と「リスペクト」。おふざけではなく、あくまで真剣に舞うことが「文化盗用」や「侮辱」と受け止められない前提です。セリーグで現在、同率最下位と出遅れているヤクルトが浮上するためにも、増田にはなんとか1軍に定着してもらいたい。そしてハカでも、プレーでもチームを引っ張ってもらいたい。そう願っています。

ラグビーワールドカップ2023決勝、南アフリカ戦でのハカ

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