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【社会人野球】井貝星良。東海理化を支えて13年、東海屈指の巧打者

井貝星良。東海理化を支えて13年、東海屈指の巧打者
井貝星良が所属する東海理化は2023年、12年ぶりとなる都市対抗野球出場を果たした=久保写す、以下すべて
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プロになるほどのエンジンの大きさはなかったけれど、技術、頭脳、精神力ではプロと引けを取らないベテランが、社会人野球にはいます。井貝星良もその一人。彼が所属する愛知県豊川市に本拠地を置く東海理化は、激戦の東海地区予選を勝ち抜き、12年ぶりとなる都市対抗野球(2023年7月)出場を果たしました。東京ドームでは都市対抗初勝利を含む2勝をあげて、初のベスト8進出。快進撃を支えたのが13年目のベテラン・井貝でした。

目次

4の4、すべてファーストストライク

ミート力はあっても、当て逃げしないのが井貝のよさ

県岐阜商業高で甲子園に出場した井貝は、高卒で東海理化に入り、早い段階から主軸を任されていました。プロからは声がかからなかったものの、4年目の22歳でキャプテンになるなど、文字通り「東海理化の顔」と言える存在でした。

井貝のすごみは、その類まれなる打撃センスにあります。若いころからコンタクト能力は図抜けていました。それこそ「センター前ならいつでも打てる」と言わんばかりの技術の持ち主。積極的にファーストストライクを仕留めにいって、それでいて崩されることがほとんどありません。かなり昔になりますが、井貝が4打数4安打した試合を現地で見たことがあります。打ったのは全部ファーストストライク。真っすぐも変化球もドンピシャのタイミングで振り抜き、芯で捉えていました。そんな高度な技を見せつけられたら、ファンになってしまいますよね。それ以来、私は井貝の打席を見るのが楽しみになりました。

延長10回、ライトオーバーの併殺打

勝負の責任を背負って、打ち続けてきた

井貝のすごさはミート力だけではありません。彼は大事な場面で打ってくれる男です。チャンスの打席での集中力が飛び抜けています。東海理化には井貝のほかにも左の好打者が何人かいますが、勝負どころで井貝以上に期待できる選手はいません。長打力はなくても、ずっと中軸を打ち続けてきた井貝には「大事な場面ほど集中力が上がる」不思議な特徴があります。ひと言で言えば勝負強い。勝負がかかった場面の方が、迷いなく打てているようにも見えます。

 2年前のJABA静岡大会で、延長10回タイブレークになりました。前の打者が送りバントを失敗して、1死一、二塁で4番の井貝に打席が回ってきました。ゲッツーがあるので打ちにくい状況ですが、敬遠されないから、東海理化にとってはむしろ好都合な場面。井貝はストレートを捉えて、ライトの頭を越す一打を放ちました。ところが走者2人が自重していたため、打者走者の井貝との間が詰まってしまい、結局走者が2人ともアウトになってしまう珍事が起こりました。

ライトオーバーの併殺打になった井貝は、チェンジになった瞬間、がっくりと肩を落としていました。「これ以上どうすればいいんだよ…」といった表情にも見えました。

 ちなみにその試合は、延長11回に東海理化が相手のエラーと四死球で2点を奪い、勝利しています。井貝も報われたことでしょう。いいチームだけど、ほかよりもやや戦力の劣る東海理化で、井貝はいつでも孤軍奮闘。勝負を背負って打ち続けていました。 

自チームで12年ぶりの都市対抗

2番DH井貝。この攻撃型の布陣がはまった

今年の都市対抗野球では、東海理化の12年ぶりの出場が話題になりました。いつも補強選手で出ていた井貝にとっては入社1年目以来となる、自チームでの都市対抗です。当時を知る選手は、井貝のほかにいません。12年前にエースだった川脇輝生は投手コーチになり、正捕手だった山根直輝は監督としてチームを率いています。

 今年の井貝は手のケガなどもあり、予選であまり調子が上がらず苦労していました。それでも大事な試合ではやはり頼りになります。本大会1回戦のかずさマジック戦では2番DHで出場し、チーム最初のヒットを放ったのが井貝でした。ファウルで粘ったあと、1ボール2ストライクから左投手のスライダーをセンター前に運んで出塁すると、5番畔上翔(Honda鈴鹿から補強)の二塁打で先制のホームを踏んでいます。初回の2点で試合の主導権を握った東海理化は6対4で、都市対抗初勝利を手にしました。

都市対抗で初勝利「手も足も出ない投手はいない」

突破口を開いた井貝の一撃(1回戦かずさマジック戦)

先制のホームを踏んだ井貝は、多くの報道陣に囲まれながら、初勝利の喜びを噛みしめていました。

「結局は元に戻しましたけど、予選が終わってから今日までの約1カ月で試行錯誤しながら、自分の打撃を微調整してきました。ユニフォームのデザインが変わったタイミングで1勝できて嬉しいですね。12年ぶりに東京ドーム行きを決めた時とは、また違った喜びです」

 若い選手が増えて「歳を取ったな」と感じる一方で「手も足も出ない投手はいない」と言い切るほど、自分の打撃技術には自信を持っています。

「自分は4打数ノーヒットもなければ、4打数4安打もありません。4打席あるなかで、相手投手にアジャストして結果を残していくタイプです。その代わり長打はありませんよ」

いやいや、それは謙そんでしょう。あなたが4打数4安打した試合を、私は目撃しています。若い頃と変わらず「手も足も出ない投手はいない」と言えるのは、抜群のバットコントロールが錆びついていないからです。

「ホームランはない」と言いつつ先制2ラン

東京ドームで先制2ランを放つ(2回戦JR四国戦)

続く2回戦のJR四国戦でも2番DHで出場した井貝は、初回に先制2ランをライトに放ちました。2日ほど前に「ホームランはない」と言っていましたけど、一発を打つ力はあるじゃないですか。

「相手投手の球種を頭に入れつつ、一、二塁間が広かったので、強く一、二塁間に打つイメージでいました。打ったのはストレート。ちょっと詰まっていたので、(柵を)越えてよかったです。東京ドームはホームランが出やすいと言われていますし、走者一塁でひっぱたきに行った結果、ひっぱたける球が来て、自分が出せる最大限の飛距離がたまたま出た感じです」

自分の身の丈をよく知っていて、打つ根拠がしっかりしています。なんでも打ててしまう「天才肌」かと思いきや、取材をすればするほど「読みの鋭さ」に驚かされます。 

相手の一番いい球を、一振りで仕留める

タイミングの合った一振りで、相手投手を攻略する

なぜ一振りで仕留められるのか。抽象的な質問に対して、井貝は自分の言葉でその理由を語ってくれました。

「相手の一番いい球を狙っていきたい。自分は追い込まれても三振が少なく対応できるタイプなので、相手の決め球を頭に入れて仕掛けていった結果が、一球で仕留める形になっているんだと思います。初球から手が出る時もあれば、相手の決め球を見たいがために、甘い球に手が出ない時もあります。でもホームランになる球を狙ったりするのではなく、三振になる可能性を消去しながら、ボールを選んで打っている感じです」

最高と最悪の可能性を削って、中間の結果が多く出るようにしたのが、今の井貝のスタイルなのだと言います。「相手の一番いい球を狙う」あたりに、長年中軸を担ってきたプライドが感じられました。

一振りに根拠。凡退でも内容のある打席

これは「拾っただけ」と言うセンター前ヒット

一振りに根拠があるから、井貝は結果だけに一喜一憂しません。2回戦の第3打席では、四国銀行から補強された3番手・菊池大樹のスライダーを初球から芯で捉えましたが、いい当たりのライトフライに終わっています。

「菊池投手の(スライダーがいいという)情報は、事前に入っていました。相手の一番いい球を狙いにいくというか、その球で打ち取られないように打席に入った結果、内に入ってくるスライダーを初球からしっかり巻き込めました」

2打席目の「拾っただけ」のセンター前ヒットよりも、このライトフライの方が雄弁でした。確かにファーストストライクから仕留める「井貝らしさ」が凝縮された打席でした。これからも彼のバッティングを楽しみに見ていきたいと思います。

 井貝星良(いかい・せいら) 1992年9月10日生まれ、岐阜県出身。身長170㎝、体重80kg。内野手、右投げ左打ち。県岐阜商業高~東海理化。入社以来、東海理化の中軸を担ってきたヒットメーカー。三塁手、遊撃手、中堅手、左翼手と、チーム事情でポジションを転々としながら、打線の核であり続けている。右手の有鈎骨の手術の影響で、今年はやや不調だったものの、12年ぶりとなる自チームで出場した都市対抗野球では結果を残した。一振りで仕留める集中力は社会人最高峰。

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