サッカー日本代表DF瀬古歩夢(25歳)が、2025-2026シーズンに欧州5大リーグのフランス・リーグ・アンに初挑戦する。成長著しく森保ジャパンの救世主になりうる逸材だ。2026年6月11日開幕のワールドカップ北中米大会まで1年を切った。日本代表でのステップアップを期して大勝負に打って出た守備の要について考察する。
ル・アーヴルと2年契約
フランス1部リーグ・アンのル・アーヴルACは7月23日、日本代表DF瀬古歩夢(25歳)をグラスホッパー・クラブ・チューリッヒから獲得したことを発表した。自由契約での移籍で、契約期間は2年。
スイスはUEFAランキング16位の中堅国で、フランスへの移籍は大きなステップアップとなる。
瀬古歩夢は、セレッソ大阪のアカデミー出身で2017年に若干16歳でトップチームデビューすると、2022年1月にスイス・スーパーリーグのグラスホッパーに移籍。スイスでは、センターバックの他、守備的MFとしてもプレーし主力として活躍した。
新加入するル・アーヴルACは2季連続で15位。2025-2026シーズンの現実的な目標はリーグ・アン残留だろう。守備の時間が長くなることが予想され、瀬古歩夢にとっては自分を高める絶好の舞台となる。(下に記事が続きます)
個性を磨いて武器をつくれ
瀬古歩夢を端的に表現するなら「器用でポリバレントなディフェンダー」。日本代表ではセンターバックでのプレーがおなじみだが、守備的MFやフルバック(サイドバック)でもプレーが可能だ。
2023年に日本代表デビューを果たし7試合に出場。この数年で台頭してきた楽しみな選手だ。現状では、けが人が出た際のバックアップ的な位置づけになっている。2026年に開催される北中米ワールドカップ前の最後の1年で序列を上げて本大会での出場を果たすことができるだろうか。
身長186cm・体重81kgはセンターバックとして十分なサイズだが、日本代表にはさらに長身の選手がいる。瀬古歩夢は、身体的に高い、強い、速いといった何か飛び抜けたものがあるわけではない。あらゆる要素を備えており何でもそつなくこなすタイプで、インテリジェンスを使ってボールを奪うプレーヤーだ。
瀬古歩夢の本職はセンターバックながら、中盤の細かいビルドアップもお手のもの。突然けが人が発生した際にも柔軟に対応できるユーティリティー性を備えており、チームにとってありがたい存在になっている。
日本代表のセンターバックのなかで今、アンカー(中盤の底)をプレーさせたら瀬古歩夢は随一だろう。しかし、キャプテン遠藤航といったアンカーを専門とする選手もいる。
瀬古歩夢の特徴であるポリバレントさが生かされるのは、けが人発生といったアクシデントやシステム変更の際だ。場合によってはエッジが効いた代表選手のなかで埋もれてしまい、出場機会を逸することも考えられる。日本代表で主力に定着しているセンターバック陣は、それぞれに強烈な武器を持っている。(下に記事が続きます)
あと1年でひと皮むけるか
瀬古歩夢が日本代表で先発を勝ち取るためには、何か強みとなる武器が必要だろう。
年齢的に身体能力はまだ伸びる余地があるが、体作りには年月を要する。この1年で劇的に進化するために瀬古歩夢には巧みな駆け引きや激しさを身につけてほしい。これなら意識次第で1シーズンでも大きく変わる可能性がある。
瀬古歩夢は器用でクリーンなプレースタイルだが、それが国際舞台では甘さにもなりうる。「意図的なファウルをしろ」と言っているのではない。
フランスでは、身体能力と技術を兼ね備えたアフリカ系の選手が多くプレーしている。この厳しい環境で、駆け引きや激しさを習得してほしい。強じんなフランスのアフリカ系選手に月並みのチャージをしてもビクともしない可能性がある。ボールが来る前に準備したり、タイミングを見計らって身体を入れ替えたり、不意に身体を当てたり、心理戦を行ったりして試合巧者になってほしい。
もともとクレバーな選手だが、レベルの高い環境で戦う術を覚えて個性を磨くことで、ひと皮むけた選手になるだろう。1年後にたくましくなった勇姿を見せてくれることを期待しよう。
グラスホッパー・クラブ・チューリッヒ 1886年創設。本拠地はスイス北部チューリッヒのレッツィグルンド・シュタディオン(24,061人収容)。スイス国内リーグで最多27回の優勝を誇る名門。
ル・アーヴルAC 1872年創設。本拠地はフランス北西部の大西洋に臨む港町ル・アーヴルのスタッド・オセアン(25,180人収容)。かつて、アカデミーでフランス代表MFポール・ポグバがプレーした。
リーグ・アン
フランス1部。リーグ・アン最多13回優勝のパリ・サンジェルマン(PSG)1強の時代が近年は続いている。UEFAランキング5位の主要リーグでありながら、多くの有望な選手を輩出する育成リーグの側面も持つ。歴史的な経緯から、アフリカ系の選手が多い。生まれ持った天性の身体能力とハングリー精神、さらにはフランスの優れた育成システムや環境により、数々の名プレーヤーが生まれている。その最たる例は、フランス代表FWキリアン・ムバッペ(レアル・マドリード)。
リーグ・アンでプレーした主な日本人選手:
- 古橋亨梧:スタッド・レンヌ(2025)
- 関根大輝:スタッド・ランス(2025-)
- 伊東純也:スタッド・ランス(2022-)
- 中村敬斗:スタッド・ランス(2023-)
- 鈴木唯人:RCストラスブール(2023)
- 南野拓実:ASモナコ(2022-)
- オナイウ阿道:トゥールーズFC(2021-2023)、AJオセール(2023-)
- 植田直通:ニーム・オリンピック(2021-2022)
- 長友佑都:オリンピック・マルセイユ(2020-2021)
- 昌子源:トゥールーズFC(2019-2020)
- 川島永嗣:FCメス(2016-2018)、RCストラスブール(2018-2023)
- 酒井宏樹:オリンピック・マルセイユ(2016-2021)
- 稲本潤一:スタッド・レンヌ(2009-2010)
- 伊藤翔:グルノーブル・フット38(2007-2010)
- 中田浩二:オリンピック・マルセイユ(2005-2006)
- 松井大輔:ル・マンFC(2004-2008)、ASサンテティエンヌ(2008-2009)、グルノーブル・フット38(2009-2011)、ディジョンFCO(2011-2012)
- 廣山望:モンペリエHSC(2003-2004)
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