高校ハンドボールの日本一をかけた三大タイトルの一つ、第49回全国高等学校選抜大会は2026年3月29日、大分市で決勝があり、男子は浦和学院(埼玉)が興南(沖縄)を37-35で振り切り、11年ぶり3度目の頂点に返り咲いた。浦和学院の岩本岳監督(31)にとっては、監督就任5シーズン目で初の全国制覇。父で総監督の岩本明・前監督時代には1992年と2015年(北陸=福井=との両校優勝)に2度の優勝を果たしており、選抜大会では父子がともに監督として日本一になった初のケースとなった。
岩本監督「まだ一冠」
決勝を終えた日の夜、岩本岳監督の電話口の声は弾んでいた。
「やっと(日本一)とれました!うれしいです。生徒たちはよくやりました。でも、まだ一冠です。夏までにはディフェンスもオフェンスも、もっと精度を上げていきたいです。インターハイもがんばります」。視線はもう次の目標に向いていた。

1年前の悔しさを振り払った。浦和学院の選抜大会決勝進出は2年連続。だが、前年はまさに打ちのめされた。全国三冠の「一強」時代を築いた駿台甲府(山梨)に力の差を見せつけられ、27-35と大差で敗れた。「100%勝てるチャンスはないと思った」と岩本監督が完敗を認めた試合。「決勝に進んだ時点で、去年はちょっと満足感すらあったかもしれない」と振り返った。
だが、今大会は違った。2年生13人、1年生9人、計22人でスタートした新チームは粒ぞろいで、手ごたえがあった。2回戦で地元の県立大分雄城台(大分)に30-24で勝ち、好発進すると 、続く3回戦は二松学舎大学附属柏(千葉)を40-25と圧倒した。
準々決勝は大阪体育大学浪商(大阪)に41-33 、そして準決勝でも強豪の瓊浦(長崎)を43-34で下して順当に勝ち上がった。「今大会は決勝に勝ち上がっても満足感は一切なかった」と岩本監督。決勝前夜も興南の試合映像を繰り返し観て、対戦相手を分析し尽くして試合に挑んだ。(下に記事が続きます)
「うちの生徒はイモっぽい」
ただ、やはり日本一がかかる決勝の舞台だ。浦和学院の選手らの立ち上がりの動きは硬かった。
高校生の大会としてはめずらしく、試合前には会場の照明が暗転、スモークが立ち昇る演出のなか、選手一人ひとりの名前がコールされて入場した。興南の選手たちが思い思いのポーズを決めて、楽しそうに入場するなか、浦和学院の選手たちの表情は硬い。
「うちの生徒たちはみんな真面目で、イモっぽいんです。ああいう演出のなかで試合をしたことがないので舞い上がったと思います」と監督。それでも、守備から流れを取り戻し、前半を17-17のイーブンで折り返した。
後半に入って徐々に本領を発揮した。相手の立体ディフェンスをかいくぐって放つ身長190センチの高山飛翼のジャンプシュート、167センチ永丼逸晟のステップシュートを起点に抜け出した。
興南も粘る。31-30と1点差に迫られた後半24分、岩本監督はタイムアウトをとった。リスタートからGKを下げてコートプレーヤーを増やす7人攻撃を仕掛ける。しかも、残り時間とリスクを考慮して、枝の上からズドンと打つ高山を下げて、展開力のあるキャプテンの臼田蒼太を起用して目先を変えた。
その采配がものを言った。数的優位の機会をうかがいながらじっくりと攻め、最後はその臼田蒼太が左45度から確実に決めた。さらにその直後、速攻からパスを受けた櫻田大智も振り向きざまのシュートを決めて連続得点。残り5分を切って3点のリード。大勢は決した。
凡時徹底が指導のベース
「勝つか、負けるかとか、日本一になれるか、なれないかという結果はコントロールできない。コントロールできないことに執着してもしょうがない。だから、戦術や約束事を徹底すること、それを貫くことに集中しよう、と生徒には言い続けてきました」と岩本監督。基本と当たり前を極めることで、最終的に非凡な成果を引き出す「凡時徹底」が岩本監督の指導のベースだ。

優勝の喜びにわく試合後のコート。そろいの黄色いTシャツを着た選手の保護者たちも降りてきて、選手たちに入り交じって岩本監督を胴上げした。選手からも、保護者からも若き監督が愛されているのが伝わった。浦和学院ハンドボール部には生徒の保護者が定期的に食事をしながら岩本監督を囲んで激励する「オヤジの会」もあるのだとか。「まだ31歳の監督の僕に、すばらしい生徒たちを託してくれた保護者の方にも感謝しています。その思いにこれからも応えていきたい」
今後の目標は父、岩本明前監督も成しえなかった悲願のインターハイ優勝、そして土井レミイ杏利、玉川裕康、高野颯太に続くオリンピック選手を育てることだ。

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