毎年恒例となった、ハンドボールの各ポジションに求められる技術や役割を紹介するシリーズ。リーグHでプレーする主だった選手の特徴を、2026年も分類していきます。第1回はレフトウイング。味方からのパスをもらわないと点が取れない「待ちのポジション」と言われがちですが、最近では攻守両面で役割が増えています。
佐藤美月(アランマーレ富山)繊細なコントロール

角度のないところからでもコントロールよく打ち分けるのが、レフトウイングの仕事です。それぞれに「生命線」とも言える得意なコースがあり、軸になるコースと対になる武器を見せながら、GKを揺さぶります。
豊島梨奈(飛騨高山ブラックブルズ岐阜)の得意なコースは遠めの上。右利きの豊島から見て、ゴールの右上です。大きいGKが相手でも、遠めの上にピンポイントで通せるコントロールがあるから、クイック気味に打つ近め(豊島から見て左側)のシュートが効いてきます。遠め上への美しさなら国内有数。勝手ながら「豊島梨奈、遠めの上ファンクラブ」を名乗っています。共感してくださるファンはいますでしょうか。
佐藤美月(アランマーレ富山)は「近め、腰横、ボール1個分」に通せるコントロールの持ち主。右利きの佐藤から見て左側。狭いところのさらにGKの腰横ボール1個分に、ピンポイントで通せます。GKが一番やられたくないコースに、いつも同じように回転のいいシュートを決め切る技術があります。アランマーレのGK陣も練習では頭を悩ませているようで、「わかっているのに、止められない」魔球です。
男子日本代表の杉岡尚樹(ブレイヴキングス刈谷)は、王道の「遠めの腰横」が生命線。縦振りのシュートフォームで狙ってくるから、縦の角度もあってGK泣かせです。コースの打ち分けという点では、アルバモス大阪高石の1期生・石黒理久が本当に上達しました。今のシュート技術と跳躍力を保ちながら、体重をあと5キロ以上増やして、DFでの当たりの強さが出てくれば、言うことなしです。 (下に記事が続きます)
神初真郁(大崎オーソル埼玉)スピードスター

レフトウイングは速攻の一番手。速攻で最初に飛び出し、3秒で1点を取って、チームを盛り上げます。若くて走れる選手が入ることで、チームの起爆剤になります。
神初真郁(大崎オーソル埼玉)は2025年途中に加入してから、瞬く間にチームのファーストオプションになりました。速攻での速さは、レフトウイングのレジェンドだった小澤広太監督の現役時代を彷彿させます。前川大樹(安芸高田ワクナガ)も1年目から脚力でポジションをつかみ取りました。アップテンポを志向するチームの方針も追い風になっています。
小泉彩奏(熊本ビューストピンディーズ)は3年目の今季は絶好調で、ハイライトへの登場機会が増えました。昨季限りで引退した尾﨑佳奈(現広報)の「尾﨑セミナー」門下生で、尾﨑からサイドシュートの基本技術を学んだことが、今季の好調につながっていると思われます。作田神音(ブルーサクヤ鹿児島)はレフトウイングらしいレフトウイング。速攻の脚力だけでなく、シュート技術にも確かなものがあります。
細川智晃(ジークスター東京)身体能力で魅せる

レフトウイングは、運動能力の高い選手がよく似合います。スピードに乗ってジャンプして、長い滞空時間でGKを翻弄します。
細川智晃(ジークスター東京)はビーチハンドボール元日本代表だけあって、空中でのアクロバティックな身のこなしが得意です。左サイドを駆け抜ける姿は30歳ながらいつまでも若々しく、高い身体能力でファンを魅了します。2026年2月27日で34歳になる梅本貴朗(レットトルネード佐賀)は「永遠の若手」と呼ばれています。大ケガから復帰しても、躍動感は衰えていません。シンプルに走るだけでなく、ケガする前には回り込んでのミドルシュートを決めるなど、できることの幅を広げてきました。
大田歩果(メイプル)は身体能力の高いレフトウイング。滞空時間の長さはリーグ有数で、1年目から活躍できる力がありました。ただし大前典子監督は「大田は2枚目DFができるように鍛えている」と言います。レギュラーの石川莉子と同じ役割を担えるようになれば、出場機会も増えてくるでしょう。 (下に記事が続きます)
河嶋英里(ブルーサクヤ鹿児島)ライン際で切る動き

サイドからの切りの動きは「トランジション」と言ったりもします。ただ行って、戻ればいいのではなく、相手DFの裏のスペースを狙う嗅覚が重要です。DFが前に出ているのなら、裏のスペースで少し待つなど、状況に応じた判断力が求められます。
この部門で毎年紹介しているのが河嶋英里(ブルーサクヤ)です。ぷよぷよの連鎖のように、行く先々で攻撃の連鎖を起こし、目に見えにくい崩しでセットOFの起点となります。小川稚葉(飛騨高山ブラックブルズ)は小さいけれど、裏のスペースを切ってノーマークになる動きが得意です。純正のフィニッシャー豊島梨奈とは異なるプレースタイルで、棲み分けができています。
アースフレンズBMの小さなキャプテン三輪颯馬も、切りの動きにこだわりを持つ選手。DFの状況を見ながらアドリブで動きに変化をつけます。攻防チェンジでいったんベンチに下がった「自主的退場」のあと、相手のパス回しを背後から狙うなど、一瞬の隙を突くプレーが持ち味です。スピードスターの印象が強い神初真郁(大崎オーソル埼玉)ですが、ライン際の駆け引きも優れています。右2枚目の横にはまり、牽制に飛び出せないような動きをしながら、レフトバックの攻めを手助けします。
田代早斗(大同フェニックス東海)はピヴォット兼用のレフトウイング。体の強さが武器なので、ライン際でも戦力になります。大同特殊鋼OBの松林克明のように、両ポジションで高確率に決められる選手を目指してほしいです。姜在源監督(当時)の大型化の波に飲まれてレギュラーから外れましたけど、松林は勝負強くてクレバーで、とてもいい選手でした。(下に記事が続きます)
徳田百合子(アランマーレ富山)細かい動き

レフトウイングは骨惜しみせず走るポジションですが、ただ走るだけでなく、2次速攻などで気の利いた動きをしてくれると、チームとしては助かります。
徳田百合子(アランマーレ富山)は脚力がありながらも、2次速攻で細かいクロスを入れるなど、気の利いた動きができる選手。走り切れなかった時でも、スカイプレー等のアドリブでフィニッシュまで持ち込めるセンスがあります。アランマーレでももっと彼女の良さが出せるといいのですが。
宮本辰弥(ジークスター東京)は元々がバックプレーヤーなので、フェイント等の細かい動きが備わっています。松下海(ブレイヴキングス刈谷)は1対1が得意なセンターでしたが、チーム事情でレフトウイングになりました。キレキレの1対1は、左サイドで仕掛けてもいいと思います。
細かい動きで思い出すのが、2010年代前半の女子日本代表だった若松里佳(元北國銀行)です。速攻のコントロール役を担い、いったんスローダウンして「セットOFにするよ~」というフリをしてから、ノールックでピヴォットにパスを通すのが得意技でした。いたずらっ子のようなプレースタイルがとてもチャーミングでした。 (下に記事が続きます)
横田希歩(三重バイオレットアイリス)センター兼任

センターだけでプレーすると物足りなさがあるけれど、レフトウイングとの掛け持ちで味が出るタイプの選手です。2ポジションでいい仕事をする「いいとこ取り」で、チームにプラスをもたらします。
所凌央(レッドトルネード佐賀)は、2025年の国民スポーツ大会ではセンターもこなして、優勝に貢献しました。筑波大学時代にレフトウイングとセンターを掛け持ちしていた経験が、12人しかベンチ入りできない国スポで生きました。谷口尊(大同フェニックス東海)は、トップDFや2枚目DFができるのが強み。DFに変化をつけたい時に出場し、レフトウイングとセンターの両方をそつなくこなします。
米澤綾美(熊本ビューストピンディーズ)がバックに上がってくると、グレイ クレア フランシスへのポストパスが見せ場になります。ポストパスが警戒されているから、最近はミドルシュートを狙うようにもなりました。「サイドプレーヤーのロングシュートですよ」と謙遜しますが、1試合に1本、いいアクセントになっています。
三重バイオレットアイリスは2026年の年明けから、横田希歩をレフトウイングとセンターの両方で使うようになり、チーム状態が上向いてきました。歯切れのいいシュートの印象が強い選手でしたが、横田自身は「ロングを打てる力もないし、一発で抜けるような1対1もない」と悩んでいたようです。黄慶泳監督とも話し合い、点取り屋で途中出場するのではなく、2ポジションでプレータイムを伸ばしながら色んな場所で駆け引きする役割に変わりました。この配置転換が功を奏し、横田は攻守に輝きを放つようになりました。特に2枚目DFで動き回り、9mの外でフリースローを取ったり、クロスアタックに行くことで、チームに活気をもたらしています。 (下に記事が続きます)
庄司清志(富山ドリームス)両サイドで仕事

メンバー構成上、両サイドをこなせる選手がいると、とても助かります。ウイングの選手を1枚減らして、他の足りないポジションの選手を入れられるので、ベンチ入り16人のバランスを調節するうえで重宝します。
身長150㎝の箱崎乃映(熊本ビューストピンディーズ)は小柄な選手ですが、確かなシュート技術の持ち主です。左右の両ウイングでよく走り、セットOFでも決め切ります。坪井詩(HC名古屋)はDF型のウイングプレーヤー。左右の2枚目DFに入ることが前提で、両サイドの主力の休憩時間を作ります。
庄司清志(富山ドリームス)は2026年2月14日の福井永平寺ブルーサンダー戦で、リーグ通算400得点を達成しました。本職はレフトウイングですが、節目の400得点は後半29分43秒、ライトウイングでの倒れ込みシュートでした。「僕らしいですよね。外して、外して、最後にようやく決めて」と庄司は笑っていました。八光自動車~ゴールデンウルヴス福岡~富山ドリームスを渡り歩き、「試合に出られるなら」と、本職ではないライトウイングでも全力でプレーして、多くのファンに愛されてきた選手です。富山ドリームスの大房和雄監督も「人間的に一番信頼できるのが庄司」と言っていました。今季限りでの引退を表明している庄司清志のプレーと生き様を、この目に焼きつけましょう。 (下に記事が続きます)
吉留有紀(ハニービー石川)DF力で貢献

DF力のあるウイングプレーヤーがいてくれると、OF型のバックプレーヤーが使いやすくなります。バックプレーヤーを左の1枚目に置いて、レフトウイングの選手を左の2枚目等の重要なポジションに配置すれば、攻守のバランスが整います。
吉留有紀(ハニービー石川)は女子日本代表「おりひめジャパン」のレフトウイングで、国内有数のDF力の持ち主です。以前から絶妙な間合いのパスカットには定評がありました。日本代表のモーテン・ソウバク監督の指導のもと、最近はクロスアタックで相手のセンターをバチンと止める強さも出てきました。世界のトップクラスのセンターを止めて、フリースローを取れるようになれば、日本も世界のベスト8に近づけます。
植松莉子(HC名古屋)はDFでの信頼感があるキャプテン。左2枚目での牽制で、チームを活気づけます。西田瑞歩(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)はセンター登録ですが、試合にはほぼレフトウイングで出場します。西田が左2枚目を守れるから、バックプレーヤーのDFの負担が軽くなります。ケガで出遅れていた當山桃加(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)も守備型のレフトウイング。リバウンド、ルーズボールへの反応がよく、球際を制します。三橋未羽(大阪ラヴィッツ)は、姉の三橋未来(イズミメイプルレッズ広島)同様、パスカットの嗅覚が優れています。藤澤舞子(三重バイオレットアイリス)は2年目のジンクスに陥っていますが、こういう時こそ強みの2枚目DFに注力して、得意のパスカットからきっかけをつかんでほしいところです。
男子では安川大地(琉球コラソン)が、DF力で1年目から出番を勝ち取りました。トップDFで動けるので、高い3:2:1を敷くコラソンのシステムにマッチしています。大阪体育大学から新加入の橘光太郎(大同フェニックス東海)は、184㎝で左の2枚目を守れるのが強みです。2月のリーグ再開から即戦力の働きを見せています。
後藤隼(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)3枚目を守れる

DF力のあるレフトウイングのなかでもスペシャルな存在が、3枚目を守れる選手です。3枚目を守れる大型ウイングは、攻守のバランスを整えるだけでなく、打点の高いサイドシュートでもチームのストロングポイントになります。
矢野世人(豊田合成ブルーファルコン名古屋)は、2枚目と3枚目の両方で使える大型ウイングです。枝でシュートコースを消すだけでなく、ドリブルカットでも長いリーチを生かします。後藤隼(トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城)は、入団1年目からレフトウイングと左の3枚目で不動の地位を築きました。守備力だけでなく、遠めの上に打てるシュート技術も秀逸です。
根路銘泰成(安芸高田ワクナガ)は、使い勝手のいい大型ウイング。ピヴォットでもプレーできるし、3枚目DFだけでなくトップDFでも機能します。宋齋友(ソン・ジェウー、ゴールデンウルヴス福岡)は、攻守のバランスを考えると絶対に外せない存在。石川稜大(ゴールデンウルヴス福岡)も宋と同じ役割ができる選手です。
女子で3枚目を守れるウイングには和田薫(香川銀行シラソル香川)がいます。和田が3枚目を守れるから、左側のバランスが整い、攻防チェンジをしなくても穴になりません。笠泉里(ブルーサクヤ鹿児島)は、2枚目と3枚目の両方で機能します。女子日本代表では、2枚目からのクロスアタックで、相手のセンターを潰します。国内では3枚目にも入り、ピヴォットへのパスを前に回り込んでカットします。
仲程海斗(福井永平寺ブルーサンダー)無形の力

得点数やシュート率などの数字には表れない、不思議な力を持った選手がたまにいます。こういう「無形の力」を持った選手がいることで、チーム全体がうまく回っていきます。
仲程海渡(福井永平寺ブルーサンダー)は言葉と行動で「熱い思い」を伝えられます。どんなに劣勢になっても、シュートを止められ続けても、最後まで戦う姿勢を忘れません。味方のミスにはポジティブな声をかけ、励まします。相手の隙を見つけたらすかさず手を上げ、センターの山城翔からのロングパスを呼び込みます。對馬おとめ(ハニービー石川)は、試合に出せばなにかしらやってくれる選手。レギュラーに吉留有紀がいるため、なかなか出番はありませんが、見た目以上にタフで頼れる存在です。
石川出(琉球コラソン)は2025~26シーズンから覇気を取り戻し、ベンチでもコート上でも精力的に動くようになりました。興南高校(沖縄)時代の恩師でもある黒島宣昭監督の意図を伝えるべく、若手に声をかけるだけでなく、レフトウイングでも手本を示しています。興南高校の初代三冠メンバー石川出。日本体育大学卒業後は、思い描いていたようなハンドボール人生ではなかったかもしれませんが、最後にもうひと花咲かせてほしいです。
石川莉子(イズミメイプルレッズ広島)チームの柱

レフトウイングは脇役のイメージが強いですが、このポジションにもチームの柱と呼ぶにふさわしい選手がいます。攻守両面でプラスをもたらすだけでなく、勝負どころの1本を決めて、チームを勝たせるプレーヤーです。
豊田合成ブルーファルコン名古屋が強くあり続けられるのは、レフトウイングに小塩豪紀がいるからです。角度のないところからでもサイドシュートを決めるし、7mスローは任せて安心。いざとなれば2枚目も3枚目も守れるし、短時間ならバックプレーヤーもできます。男子歴代最多の1,200得点だけでなく、あらゆる面でチームに貢献できる小塩がいたから、チームのモラルが保たれ、決勝戦で数々の逆転勝利を呼び込めたのでしょう。
石川莉子(イズミメイプルレッズ広島)は、2024~25シーズンにキャリアハイの好成績を収め、名実ともにチームの顔になりました。強固な2枚目DFからの速攻に、堅実なサイドシュートで、石川の点数が伸びる時はチームも好調です。石川が止められてしまうと、チームも沈んでしまいます。かつてこのポジションを担った石川紗衣(2024年で引退)のように、勝負の責任を背負って打ち続けてほしいです。
以上がレフトウイングの紹介でした。次回はレフトバックを予定しています。
Pen&Sports ニュースレター(無料)に登録する
スポーツ特化型メディア“Pen&Sports”[ペンスポ]は毎週、無料ニュースレターを配信しています。原田亜紀夫編集長が勝ち負けを伝えるだけに終わらない、舞台裏のストーリーや本質に焦点を当てたコラムをお届けします。読めばニュースの見方が多面的になり、きっと気づきがあるはずです。登録・解除はいつでも可能です。





![Pen&Sports[ペンスポ]スポーツ特化型メディア](https://sports.pen-and.co.jp/wp-content/uploads/2026/01/スポーツを深くしる手書き_白字.png)







\ 感想をお寄せください /