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【ハンドボール】日本代表・杉岡尚樹「全員もがき、役割全う」男子アジア選手権

日本ーイラク戦より=2026年1月25日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:日本ハンドボール協会ⒸJHA/Yukihito Taguchi)
日本ーイラク戦でガッツポーズする杉岡尚樹=2026年1月25日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:日本ハンドボール協会ⒸJHA/Yukihito Taguchi)
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クウェートでの第22回男子ハンドボールアジア選手権を4位で終え、世界選手権の切符を獲得した日本代表は2026年1月31日に帰国した。帰国直後の成田空港で、準決勝進出を決めたイラク戦で大活躍だった杉岡尚樹(ブレイヴキングス刈谷)に話を聞いた。イラク戦での勝負を決めたシュートから代表チーム全体のことなど、ベテランの域に入ったレフトウイングは、思いの丈をすべて打ち明けた。

目次

節目の1本を決め切れた理由は

POMを受賞した杉岡尚樹=2026年1月25日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)
イラク戦のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた杉岡。プレゼンターは桃山学院高校(大阪)の先輩でもある、日本代表の市村志朗団長だった=2026年1月25日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)

杉岡尚樹(ブレイヴキングス刈谷)は、日本代表のレフトウイングの一番手。攻守の切り替えが早く、速攻でのスピード感は31歳になった今でも衰えを知らない。最大の武器は高確率なサイドシュート。2024~25年のリーグH元年には、日本リーグ時代も含めて歴代最高記録のシュート率88.3%を記録している。縦振りのシュートフォームから正確に打ち分け、特に腕を内ひねりさせながら突き上げるループシュートは、杉岡の代名詞とも言える。

ほぼ完璧なレフトウイングとも言える杉岡の唯一の泣きどころが、勝負どころでの1本だった。たまにしかシュートを外さない選手だから、節目でのシュートミスがどうしても目立ってしまう。確率がいいのは誰もがわかっている。欲しかったのは、理屈を超越した勝負強さだった。

2026年1月のアジア選手権で、杉岡に変化が見られた。大会通してあまり調子がよくなかったにもかかわらず、準決勝進出(=世界選手権出場に出られる4位以内)がかかったメインラウンドのイラク戦で7本すべてのシュートを決める大活躍を見せた。後半26分29-28の場面では、相手の息の根を止めるサイドシュートを決め切った。30-29で逃げ切った試合だから、杉岡のサイドシュートが事実上の決勝点と言っていい。 

勝負のかかった大一番の土壇場で、彼が何を考え、突き抜けたのか。イラク戦の振り返りを中心に、アジア選手権を通しての自身の成長や、チームの成長などを語ってもらった。

今までで一番大変だった大会

日本ーバーレーン戦より=2026年1月27日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:日本ハンドボール協会ⒸJHA/Yukihito Taguchi)
日本ーバーレーン戦より=2026年1月27日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:日本ハンドボール協会ⒸJHA/Yukihito Taguchi)

2025年11月のマケドニア遠征で右手小指を骨折してから、なかなか結果がついてこない時期が続いていました。12月の日本選手権でも準決勝でレッドカードになってしまって、チームも敗退するなど、不運というか、ムズムズするような結果でした。代表合宿中もそんなに悪い感覚はないのに、試合になると納得のいかないパフォーマンスができていなくて。日本代表で90数試合出場させてもらっていますけど、今回の代表活動が今までで一番ハードでした。 

自分の納得できるパフォーマンスができないもどかしさもあったし、チームに対する申し訳なさもありました。前回のアジア選手権(2024年1月)では8割決めたシュート(20/25=80%)が、今回は7割ぐらい(15/22=68.2%)だったり。そういったところも含めて、一番ハードな大会だった気がします。(下に記事が続きます)

イラク戦で見えた光明

日本ーイラク戦でシュートを放つ杉岡尚樹=2026年1月25日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:日本ハンドボール協会ⒸJHA/Yukihito Taguchi)
日本ーイラク戦でシュートを放つ杉岡尚樹=2026年1月25日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:日本ハンドボール協会ⒸJHA/Yukihito Taguchi)

そんななかでも「なんとかしなきゃ」ともがき続けて、イラク戦でああいうパフォーマンス(7得点でシュート率100%)ができたのは、自信につながりました。大会のなかで自信を得られました。なぜそれができたのかを、考えないといけませんね。あの試合は、周りが気持ちよく打てるパスを出してくれました。その前の韓国戦とかイラン戦では、当たられながら打つというか、自分の体勢で打てていませんでした。イラク戦は気持ちよく自分のタイミングで打てて、1本入って、2本入って、気持ちも自然と乗ってきました。あの試合は世界選手権の切符がかかった試合でしたけど、僕にとってもターニングポイントでしたね。

「いつパスが来ても100%の精神状態で決めてやる」というのは、どんな試合でも同じですけど、イラク戦は気持ちモヤモヤが払拭されて、前半だけで6点取れました。 (下に記事が続きます)

勝負を決めた1本

前半に決めているからと言って、後半外していいってことはないですからね。(チームの30点目を決めた)あの場面では、水町孝太郎(豊田合成ブルーファルコン名古屋)がボールを持った瞬間に「アイツは絶対ここで俺をチョイスしてくるな」と感じました。同学年だから響き合うものがあったのかわかりませんけど、水町からパスが来るとわかったから、そこで気持ちがグッと固まりました。 

打ったコースは遠めの腰横。ここが僕の基本です。遠めの腰横があって、そこから変えていくのが、僕の組み立てなので。あの場面はちゃんと跳べて、GKも遠めがまだ空いている状態だったので、そのまま自分の一番得意なコースにぶち込みました。思ったよりもGKの手が下がってきて「ヤバいな」と思ったんですけど、抜けてくれました。

イラク戦のハイライト。1分35秒過ぎに、杉岡のサイドシュートあり(クウェート国営放送スポーツ公式Xより)

勝負どころを決め切って

イラク戦は最後まで集中できていたし、ああいう状態を常に作りつづけないといけないですね。今回もすごい経験をさせてもらったので、これをどう次につなげていくか。長くやっていれば、誰にでも浮き沈みはあると思うので、とにかくやり続けることですかね。

これまでと何が違ったのか。う~ん。相手あってのことなので、相手がよかったパターンもあるし、自分が悪かったパターンもあります。でも、慌てて早く打ってしまったりとか、自分が悪かったパターンはなくさないと。自分が100%の状態で行って、もしそれで止められてしまったら、それはしょうがない。トニー(・ジェローナ男子日本代表監督)がいつも「100%で行け」と言うように、いつも100%に近い状態を出すための準備の大切さですかね。結果は100%で行った「その先」にあるので。「それが出せたら、大丈夫だ」というところまで、普段のトレーニングから自信をつけていかないと。今回改めて感じました。(下に記事が続きます)

イラク戦終了直後の杉岡のインタビュー(ハンドボール日本代表公式Xより)

国際大会独特の雰囲気

日本ーサウジアラビア戦より=2026年1月17日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)
日本ーサウジアラビア戦より=2026年1月17日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)

大会のなかで殻を破れたという意味では、今までにない大会でした。調子がよくないなりにやれた大会でした。国際大会の独特の雰囲気はありますね。僕も含めて、普段決めているシュートが決め切れない。特にシュートは課題のひとつで、国内で通用しているパフォーマンスが、国際試合で通用するとは限らない。僕だけに限らず、今回はみんな、大会を通して苦しんだんじゃないかと思います。

(グループリーグ2戦目の)サウジアラビア戦(24-27で敗戦)のあと、みんな沈むところまで沈みました。事前合宿ではサウジアラビアに勝っていただけに、選手たちも「どうする?」「自分たちのやってきたことは間違っていたんじゃないか?」と不安になりかけました。でもトニーは冷静に「やることを変えずに、もう一回集中しよう」と言ってくれました。「恐れるな。周りがどうこう言おうと、恐れた時点で負けなんだから、思い切りいけ」とも言っていました。 (下に記事が続きます)

最大5点差をはね返したイラン戦

メインラウンド日本ークウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)
メインラウンド日本ークウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)

そういう出来事もあって、(グループリーグ3戦目の)イラン戦は色々なことがありながらも、気持ちを見せた戦いができました。それでもまとまりがなかった訳ではないんですよ。でも、うまくいかない。「ヤバい、ヤバい」で、おのおのがバラバラな方向を向いていました。そのあとに「自分たちがやってきたことを信じてやろう」「一致団結して、全員で戦おう」「恐れずに立ち向かおう」と再確認できたから、イラン戦では後半に最大5点ビハインドでも、ベンチから「絶対に下を向くなよ」という声掛けをして、最後は1点差で相手を上回れました。あのイラン戦が運命の分かれ道だったと思います。

自分たちのやってきたことは何か。トニーのハンドボールは、やることが明確になっています。対戦相手によって、チームのルールを若干変えるところはあるけれども、根っこの部分は変わらないので、そこをもう一回ちゃんとやろうよ。本当に基本的なところですけどね。そこをちゃんとやることを、全員で確認しました。

5点差を逆転した、イラン戦のハイライト(クウェート国営放送スポーツ公式Xより)

プレータイムを分け合う

メインラウンド日本ークウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)
メインラウンド日本ークウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)

今回はチーム全体で戦えました。固定されたメンバーだけでなく、全員が与えられた役割を全うしようともがいて、もがいて、もがいた末の結果だったんじゃないかな。プレータイムをシェアしながら、全員が自分の役割を全うしようという、チームの一体感はありましたね。

僕は同じレフトウイングの石田知輝(元トヨタ自動車東日本レガロッソ)とプレータイムを分け合いました。石田があんなに7mスローが上手だなんて、知らなかったですよ。迷いがなかったんじゃないですか。試合前もいい顔をしていましたし、思い切って打っていました。今回が初めての大きな国際大会で、緊張もあったと思いますけど、決めるたびに自信をつけているように見えました。

ライトバックの榎本悠雅(ヴォイヴォディナ/セルビア)がケガでベンチアウトしても、代わりに入った荒瀬廉(豊田合成ブルーファルコン名古屋)が独特のリズムで、いい仕事をしてくれました。1枚目DFでの弱みも出ましたけど、荒瀬の強みも十分に出せていました。そういった長所、短所は僕にも最年長の渡部仁さん(ブレイヴキングス刈谷)にもあるので、課題を次に向けてどう改善していくかが大切です。荒瀬に関しても、DFでの課題は本人が痛いほどわかっているから、そこは次に向けての伸びしろだと思っています。 (下に記事が続きます)

自分の課題は「自分を信じること」

イランのゴールは認められず、日本の勝利が確定した=2026年1月19日(現地時間)、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール協会ⒸKUWAIT HANDBALL ASSOCIATION)
イランのゴールは認められず、日本の勝利が確定した(提供:クウェートハンドボール協会ⒸKUWAIT HANDBALL ASSOCIATION)

僕自身の課題はメンタルですかね。「自信をもっていけば、間違いない」というところだと思います。トニーはずっと「もっと自分のことを信じろ」と言っていました。実際に大会序盤の気持ちと、最後(3位決定戦)のクウェート戦の気持ちでは、全然違っていましたし。いつも100%に近い状態で勝負できるよう、気持ちも含めた準備を追求していきます。

これからは所属(ブレイヴキングス刈谷)に戻って、また気持ちを切り替えていきます。2月のリーグ再開直後には、大事な2試合(2月13日ジークスター東京戦、21日豊田合成ブルーファルコン名古屋戦)があるので、まずはそこに向けて。男子アジアクラブ選手権も4月に入ったので気は抜けないですが、少し体を少し休めてから再始動します。

杉岡 尚樹(すぎおか・なおき) 1994年4 月18日生まれ、京都府京田辺市出身。178cm80kg、右利き。桃園小ハンドボールクラブ~京田辺市立大住中~桃山学院高(大阪)~中央大~トヨタ車体(現ブレイヴキングス刈谷)。ポジションはレフトウイング。リーグ通算900得点を達成した、日本を代表するレフトウイング。リーグHでベストセブン4回。2024~25シーズンには、シュート率88.3%の歴代最高記録をマークした。東京五輪、パリ五輪日本代表メンバー。

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