ハンドボールの日本選手権はリーグHで戦うチームだけでなく、高校や大学、さらには社会人のクラブチームが参加します。カテゴリーミックスの大会だから、様々なチームが見られる面白さがあります。2025年12月に広島市で開かれた77回大会女子には、チーム発足わずか1年のデレフォーレ岡山が初出場を果たしました。初戦で関西学院大学と対戦、25-28で敗れましたが2027年のリーグH参入を目指し、「確実にレベルアップしている」と前向きです。
デレフォーレ岡山、初出場尽くしの1年

デレフォーレ岡山は、2024年11月に発足した岡山のクラブチームです。2025年3月から本格的に活動を開始し、8月のジャパンオープン(リーグHに加盟していないクラブチームの大会)で初出場初優勝。12月の日本選手権の出場権を手にしました。もちろん日本選手権も初出場です。(下に記事が続きます)
元日本代表・角南果帆が大黒柱

チームの核となるのは、岡山県倉敷市出身でキャプテンの角南果帆。ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(現ブルーサクヤ鹿児島)などでプレーした、日本有数のクレバーなピヴォットです。日本代表として2020東京五輪にも出場した角南は、2024年の開幕直前に引退しました。一時期はハンドボールから離れていましたが、地元岡山にハンドボールチームができることを知り、現役復帰を決意しました。角南は「ソニーで引退した時に悔いを残していたから、もう一度現役でやりたい」と、思いを語っていました。
角南を筆頭に「もう一度競技者として挑戦したい」という思いを持った選手の集まりが、デレフォーレ岡山です。13人の選手のなかには会社員や保険の外交員もいれば、看護学校の学生もいるし、子育てをしながらの選手も3人います。トップゾーンでのプレーを一度は諦めかけたものの、デレフォーレ岡山でチャンスをつかみ、仕事や家庭とハンドボールを両立させています。新しい女性アスリート像を示しながら、2027年のリーグH参入を目指しています。(下に記事が続きます)
持ち味は速攻の展開力

2025年12月の日本選手権に出場したデレフォーレ岡山は、初戦で関西学院大学と対戦しました。立ち上がり、デレフォーレは速攻で押します。センターの平松有加は大阪ラヴィッツでプレーしていました。ライトバックの髙橋弥那は、筑波大学~ブルーサクヤ鹿児島でセンターでの経験があります。ピヴォットの角南にも展開力があるので、速攻をコントロールできる人材が3人いるのが強みです。20m×40mのコートをフルに使いながらボールをつなぎ、速攻へと持ち込みます。前半6分では5-3と、デレフォーレがリードを奪いました。
シュート決まらず、劣勢に

しかし徐々にシュートミスが目立つようになり、関西学院大に逆転を許します。高橋のロングシュートが微妙に枠を捉えきれず、両ウイングのサイドシュートもなかなか決まりません。頼みの綱であるピヴォットの角南まで、シュートを止められていました。キャプテンの角南は「私のシュートミスで、若い子のリズムを崩してしまった。私の力不足」と、責任を感じていました。
「攻めのDF」できず

DFでは、関西学院大の大型ピヴォット本田心那を、最後まで守れませんでした。175㎝の本田が気になるから、DFラインが下がってロングシュートを打たれ、ロング警戒で前に詰めたら、ライン際で本田に点を取られる悪循環でした。デレフォーレ岡山の大熨嘉彦監督は「気持ちが連動したDFが、今日は見られなかった。相手が何回か攻めていくうちに穴がみえるような、それくらいのフットワークしかできなかった」と、厳しい表情でした。6:0DFでもアグレッシブに仕掛けて、得意の速攻に持ち込む展開に持ち込めませんでした。(下に記事が続きます)
三村亜美、反撃の起点

後半22分19-26から、デレフォーレが反撃します。起点になったのは、レフトバックの三村亜美でした。特に印象に残ったのが、2次速攻からコンタクトしながら決め切った得点です。巧さはありながらも、初めての大舞台でミスが続いていたチームに、必要なのはシンプルな強さでした。三村は言います。
「ずっとリードされていましたが、試合が終わったら絶対に勝っているイメージが私のなかにありました。1つずつ得点を積み重ねる。シュートに行ったら絶対決める。みんながつないでくれたボールは、責任を持ってシュートする。そんな気持ちでいました。私は上からも打てますが、スピードに乗ったカットインも持ち味なので、ロングシュートを生かしつつ、カットインを効果的に使えました」
消防士パワー、リーグHめざす

身体能力の高い三村は、普段は消防士として働いています。玉野光南高校(岡山)を卒業後は、一度はトレーナーを志したものの、消防士の仕事に魅力を感じて、現在の仕事に就きました。
「職場でもトレーニングはしますね。ロープレスキューの訓練をしたり、救助、救急の現場にも携わっています。消防士の仕事で直接ハンドボールに結びつく動きはないけど、体幹やパワーは鍛えられました。私が前半からもっとガツガツ行って、相手を退場させればよかったかな」
巧さに走りがちだったチームのなかで、シンプルな「個の強さ」で対抗できていたのが、三村のカットインでした。(下に記事が続きます)
角南「このチームには可能性ある」

25-28で敗れたあと、キャプテンの角南が試合を総括しました。
「若い選手は確実にレベルアップしているし、私としても、チームとしても、やっていることは間違っていない。だからこそ、個々の弱さ、プレーの精度の差を痛感しました。仕事をしながら、子育てをしながら、大変なこともあるけれど、全員がリーグHを見据えて練習しているから、このチームには可能性があります。大学生に負けたことは真摯に受け止めつつ、もう一度このチームで、日本選手権で勝ちたいです」
そして角南は「負けた悔しさはありますが、こうして取材してもらえる舞台に戻って来られたうれしさもあります。ありがとうございました」と一礼をしてロッカーに戻っていきました。
リーグHで戦うには、現時点ではまだ個の強さが足りないかもしれません。とはいえ、まだ時間はあります。あと1年半でしっかりと個を鍛えたうえで、速攻の展開力を生かしていければ、いいチームになりそうです。日本選手権初出場初勝利はなりませんでしたが、デレフォーレ岡山のこれからに期待です。
デレフォーレ岡山 岡山県に本拠地を置くハンドボールチーム。岡山市に本社がある「菅公学生服」が2024年11月に運営会社を立ち上げ、チームが発足。2025年3月から本格的に活動を始めた。チーム名の「デレフォーレ(dellefore)」は、岡山弁の「でーれー(すごい)」と「放れ(投げろ)」に、イタリア語の「フィオーレ(花)」を組み合わせた造語。地元岡山に根ざし、互いに尊重し、多様性を認め合う姿を表している。2025年8月にジャパンオープンに優勝し、同年12月の日本選手権に初出場。2027年のリーグH参入を目指している。

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