”Unanimous MVP”(満場一致の最優秀選手)の見出しが全米を駆けめぐった。米大リーグ・エンゼルスの2Way-Player(二刀流)大谷翔平が11月16日(日本時間17日)、アメリカン・リーグのMVPに選ばれた。大谷の受賞は2年ぶり2度目。全米野球記者協会=Baseball Writers’ Association of America(BBWAA)の記者30人による投票で「満票」を獲得しての受賞だ。大谷をMVPに選んだ記者たちはBBWAAの規定で、発表前に誰に投票したかを明かすことはできない。しかし、発表とほぼ同時にどの記者が誰に票を入れたかがすべて明らかにされる。その詳細は?そもそもどんなメディアの誰が投票したのか。
日刊スポーツ記者も投票権
MVPは全米野球記者協会(BBWAA)の記者30人による投票で決まる。投票権を持つ記者リストには、AP通信、ESPN、MLB.comなど名だたるメディアの記者が並ぶ。その中には米ロサンゼルス在住のスポーツライターで日刊スポーツ所属の斎藤庸裕(Nobuhiro Saito)氏の名前もある。斎藤氏は「ノブ斎藤」の通名で日刊スポーツに定期的にコラムを書いている。
記者たちはMVP発表後、だれに投票したかすべてが開示されるため、その選考理由やどんな基準で投票したのかを明らかにする説明責任も求められることになる。彼らが自らのメディアで何を重視して投票したのか説明する記事にも注目だ。
シーズン終了直後に投票、プレーオフは対象外。すべて公表
投票したのは球団がある両リーグ各15都市の記者2人ずつの計30人。投票はレギュラーシーズン終了後に締め切られる。そのため、プレーオフの成績は加味されず、参考外となる。
全米野球記者協会(BBWAA)で投票権を持つ記者は実名、所属を明記し、まず、それぞれがMVPにふさわしいと思う選手上位10人を記入する。そのうえで、1位に14ポイント、2位9ポイント、3位以下は1ポイントずつ減っていき、10位は1ポイントで総合する。最も多いポイントを得た選手がMVPに選出され、どの記者が誰に投票したか内訳もすべて公表される。このほど、満場一致のMVPとなった大谷は14ポイント✕30人で上限の420ポイントを獲得した。
2022MVPは落選。大谷に入れた記者「地元びいき」と批判
ちょうど1年前、2022年シーズンのア・リーグのMVP争いをご記憶だろうか。当時はアーロン・ジャッジ(ヤンキース)と大谷翔平の争いが注目された。ところが、ふたを開けてみるとジャッジの圧勝。記者30人のうち28人がジャッジを1位に投票し、大谷に投票したのはわずか2人。いずれもエンゼルスの地元・ロサンゼルスを地盤とする記者だった。結果が公表されると、ジャッジに投票した記者がロサンゼルスの記者を痛烈に批判した。「投票は個人の自由だが、ロスの記者は恥を知れ。あなたたちは地元びいきしているだけだ」とかみついた。今回の大谷のMVPはそんな昨年のうっぷんを晴らす、満場一致のMVPでもあった。
日本のプロ野球MVP:投票権300人超、誰に入れたか非公開
NPB(日本のプロ野球)でもMVP、新人王、ベストナイン、三井ゴールデングラブ賞がプロ野球を担当する記者投票で決まる。新聞社やテレビ局などのプロ野球担当として5年以上、現場取材の経験がある記者が「選考基準」に達した選手の中から投票で選ぶ。投票権を持つ記者は、大リーグの10倍以上、300人以上に及ぶ。
以前は郵便で投票する方法だったが、コロナ禍の影響で投票資格を持つ記者宛てに日本野球機構(NPB)からメールが届き、返信する電子投票に変わった。記名投票だが、誰が誰に投票したかは明らかにされない。そのため、記者が担当する球団や特定の選手をひいきし、恣意(しい)的に投票するケースが散見される。大リーグのように誰が誰に投票したか、開示すべきだという意見も根強くある。
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