ハンドボールの各ポジションに求められる技術や役割を紹介するシリーズ。2025-2026シーズンのリーグHでプレーする各チームの主力選手の特徴を、ポジションの役割ごとに分類していきます。 第6回はピヴォット(PV)。ポストと呼ぶ方がなじみがあるかもしれません。ライン際でもみくちゃにされながら、ボールを持たずに動き回り、裏からチャンスを作ります。体が強くて、ハンドボールIQの高い選手に任せたいポジションです。
酒井翔一朗(レッドトルネード佐賀)スクリーンプレー

ピヴォットの見せ場はブロック。専門用語だと「がめる」「勝ちの位置を取る」とも言います。最近はバスケットボール風に「スクリーン」と呼ぶことが増えてきました。DFより先に位置を取り、さりげなく相手をせき止めて、OFのための空間を作ります。お尻でグリグリ押し合うとオフェンシブファウル(ブロッキング)になってしまうので、相手の力をいなしつつ、押され負けない強さが必要です。
力強いスクリーンプレーと言えば毎年恒例になりますが、酒井翔一朗(レッドトルネード佐賀)と兼子樹(アランマーレ富山)が、男女の代表格です。酒井は背中を丸めて、相手との接触をかわしながら、大事なところでは体格を生かしたスクリーンからのキャッチで得点します。力勝負だけでなく、最近はスライドプレーも織り交ぜて、ピヴォットの完成形に近づいてきました。
兼子は試合開始早々の2対2で、見せ場を作ります。強さを生かしてなだれ込み、最悪でも7mスローを獲得。挨拶代わりのスクリーンプレーは「2対2でいつでも点が取れるよ」という意志表示です。色んな人が、色んなところで2対2をするアランマーレ富山を象徴するプレーヤーです。
ブロックプレーで思い出すのが朴重奎(パク・ジュンギュ/元大同特殊鋼ほか)です。韓国代表史上最強かつ最重量の大型ピヴォットは、肩甲骨を巧みに動かしながら、DFの圧をかわしていました。押してもビクともしない重さに加えて、大きい魚のような「つかみどころのない」動きで、ライン際を制圧していました。190㎝で100kg越えの巨大な魚がいたら、捕まえられませんよね。(下に記事が続きます)
川上勝太(安芸高田わくながハンドボールクラブ)スライドプレー

スクリーンと対をなすのがスライドプレーです。空間にスッと動いて、DFがついてくれば、別のところにスペースができます。ついて来なければ、そのままノーマークでパスをもらえば即シュート。小柄なピヴォットは、このスライドプレーが生命線になります。
スペースの嗅覚が優れているのが川上勝太(安芸高田わくながハンドボールクラブ)です。180㎝と小柄でも、スクリーンを張れる強さがありつつ、DFが出っぱなしになった裏のスペースに走り込み、好調時には1試合10点を取ることもあります。湧永製薬の時代から、わくながのセットOFはピヴォットを絡めた理詰めの得点なので、川上が健康であれば上質な得点が期待できます。
内藤佑哉(アースフレンズBM)は典型的な機動力タイプのピヴォット。守ってはトップDF、攻めては空間を動き回ります。地味だけど、攻守に欠かせない選手なので、ケガからの復帰が待たれます。
初見実椰子(三重バイオレットアイリス)の得意技のひとつが、スライドでDFを連れ去る動き。タイミングよくターンを繰り返し、2対2を作りながら、タイミングよく裏のスペースへ抜け出し、DFをおびき寄せます。7人攻撃では、妹の初見巴菜子(三重バイオレットアイリス)とライン際に並ぶ「分身の術」もありますが、最近は妹の巴菜子が髪型を変えて、姉との違いを強調しています。
藤井愛子(香川銀行シラソル香川)は強そうな身体つきと見せかけて、空間への移動が得意です。チームのピヴォットでは最も得点感覚に優れているので、香銀伝統の2対2には欠かせません。
市原宗弥(豊田合成ブルーファルコン名古屋)粘り強さ

ピヴォットはボールを失った時点で、相手の速攻を食らうリスクがあります。キャッチミスだったりラインクロスなどの、シュートに持ち込む前のテクニカルミスは避けたいところ。ずっとボールを持たずに動き回るのに、ボールキープ力が求められる、難しいポジションです。
ライン際の粘り腰なら、日本代表の市原宗弥(豊田合成ブルーファルコン名古屋)が真っ先に思い浮かびます。きれいな形ではないけれど、ボールを確保しながらシュートに持ち込み、ラインギリギリで粘ります。リバウンド、ルーズボールも一級品。「泥臭い」のひと言では片づけたくない「執着心」を感じます。
木村公(アルバモス大阪高石)はバスケットボール風に言うと「セカンドチャンスに強い」ピヴォット。いい位置でリバウンドを拾って、味方のシュートミスを帳消しにしてくれます。
アルトゥル・モルゲルソン(大同フェニックス東海)キャッチング

日本歴代屈指の名ピヴォット・山口修(元湧永製薬、現高知中央高校監督)は「ポストパスが少しでも手に触れたら、それはパスミスじゃなくて俺のキャッチミス」と言っていました。ポストパスは逸れたら即失点につながるので、それくらいの気持ちでキャッチしないといけません。山口の代名詞だった片手キャッチも、今ではピヴォットの標準装備になりました。
片手キャッチが鮮やかなのはアルトゥル・モルゲルソン(大同フェニックス東海)。しっかりとスクリーンをかけながら、片手でポストパスをキャッチします。ライン際の得点が課題だった大同の救世主とも言える存在。まだ23歳と若いですが、受け答えに知性が感じられます。
小林歩夢(大同フェニックス東海)も片手キャッチが得意な選手。空間への難しいパスでも片手でつかんで、シュートまで持ち込みます。
橋本明雄(ジークスター東京)もキャッチングが上手で、東江雄斗の曲芸パスをいとも簡単に片手キャッチします。若い頃は定着しきれなかった日本代表に、30歳を過ぎてから再び呼ばれるようになり、今が最盛期。若い世代に「日本代表とはなにか」を背中で示せる存在です。
石亀萌夏(香川銀行シラソル香川)は攻撃型のピヴォットで、ゴールエリア内へのバウンドパスを、腕を伸ばして片手で捕球します。





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