【ハンドボール】勝利と育成を追う監督26人 | リーグH名鑑vol.8[終]

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佐藤智仁監督(ジークスター東京)チームに血を通わせる

佐藤智仁監督(ジークスター東京)は我慢強く若手を起用して、一本立ちさせている
佐藤智仁監督(ジークスター東京)は我慢強く若手を起用して、一本立ちさせている

各ポジションに「それっぽい」選手を集めて試合をすれば、なんとなく「ハンドボールぽい」形になりますが、それは真のチームではありません。個々が成長しながら、全員が同じ方向を向いて、一体感を持って戦うのが、血の通ったチームです。 

法政二高(神奈川)を長く率いた阿部直人監督は、停滞気味だったトヨタ自動車東日本レガロッソ宮城を立て直しました。DFは法政二高時代からのアグレッシブな4:2DFを導入し、OFでは全員のよさを引き出し、最初に預かったメンバーを9年ぶりのプレーオフに連れていきました。脳科学やスポーツ心理学を勉強し、とことん理詰めでチームを作りながら、勝負の際では「理屈じゃないだろ!」とちゃぶ台をひっくり返せるのが、阿部監督の魅力です。短期決戦に強いのも、理屈じゃない勝負強さを理解しているからだと思われます。

ジークスター東京の佐藤智仁監督は、オールスター軍団を束ねながら、若い選手にも寄り添い、少しずつですがチームの体質を改善しています。負けると「他責思考」になりがちだった選手たちを諭しながら、チームの文化を変えていこうと努力しています。これからは世代交代が大きな仕事になるでしょう。チームの本質は「若者が育つ」姿にあります。次世代の主力が育った時に、ジークはオールスターから本物のチームになり、佐藤監督の手腕が評価されると思います。(下に記事が続きます)

國分晴貴監督(ゴールデンウルヴス福岡)選手に寄り添う

徐々に監督らしくなってきた國分晴貴監督(ゴールデンウルヴス福岡)
徐々に監督らしくなってきた國分晴貴監督(ゴールデンウルヴス福岡)

コートに立つ選手が気持ちよくプレーできれば、最大限に力を発揮できます。自分の理論よりも、プレーヤー重視のスタイルでチームを作る監督です。

ゴールデンウルヴス福岡の國分晴貴監督はGK出身で、監督就任当初は見ていてかわいそうなくらいにテンパっていました。今はOF面をセンターの原健也に任せつつ、落ち着いてチームを見るようになりました。ウルヴス生え抜きの伊藤極は「國分さんは監督というより、(前身の)フレッサ時代からの兄貴のような存在。しんどい思いをいっぱいしてきただろうから、みんなで國分さんを勝たせたい」と言っていました。選手からも愛されている國分監督は、選手とともに「当たり前のレベルを上げよう」とがんばっています。

2024-25シーズンに福井永平寺ブルーサンダーを率いた小川俊監督は、選手に寄り添うタイプの代表格。選手がプレーしやすいスタイルを聞いて、竹内功コーチとの協議制でチームを作っていました。リーグ2巡目には明らかに判断のタイミングが改善されていただけに、1年限りでの退任はちょっともったいなかった気がします。心優しい「ブーちゃん」が、チームとともに成長していく姿を、もう少し見たかったです。

小澤広太監督(大崎オーソル埼玉)自主性を重んじる

キャプテンの末岡拓美とともに戦況を見守る小澤広太監督(大崎オーソル埼玉)
キャプテンの末岡拓美とともに戦況を見守る小澤広太監督(大崎オーソル埼玉)

強豪校で育った選手は「鍛えられている」と言われがちですが、やらされているだけでトップゾーンに来てしまった選手もなかにはいます。自分の内側から燃え上がるような気持ちがないと、トップゾーンで勝てる選手にはなれません。

小澤広太監督(大崎オーソル埼玉)は就任以来、選手の内発的モチベーションを引き出そうとしています。出場機会を平等に割り振るのも、競争意識を高めるためです。ただプレータイムを平等にシェアしすぎると、責任の所在が曖昧になり、チームのコアになるべき選手が育ちにくくなる怖さもあります。次の段階では、1試合に10点取れる松岡寛尚以外のコアプレーヤーをどう作っていくかが課題になるかと思われます。2026年3月に豊田合成ブルーファルコン名古屋に勝った試合が、大崎復活の足がかりとなるでしょうか。

シーズン途中の難しいタイミングで就任した鳥平裕紀監督(大阪ラヴィッツ)は、選手からの意見を引き出すスタイルで、チームを再建しています。タイムアウトでも選手同士で会話させながら自覚を持たせています。主力選手には「今できることに、もうひとつ新しいものをプラスしよう」。控えの選手には「どんどんアピールしていこう」と、やる気を引き出しています。(下に記事が続きます)

河合辰弥ヘッドコーチ(ハニービー石川)アナリスト出身

アナリスト出身の河合辰弥ヘッドコーチ(ハニービー石川)。選手起用も的確で、理にかなっている
アナリスト出身の河合辰弥ヘッドコーチ(ハニービー石川)。選手起用も的確で、理にかなっている

最近のトレンドとも言えるのが、アナリスト出身の指揮官です。世界のトレンドにも精通し、的確な根拠を持って選手にアプローチできるので、高度になった現代ハンドボールでは打ってつけの人材です。

ハニービー石川の河合辰弥ヘッドコーチは、トヨタ自動車東日本、北國銀行で長くアナリストを務めた実績があります。年間を通しての理詰めな選手起用で、現有戦力を上手に育てています。河合ヘッドは「分析をすれば、正しいことは言える。でも荷川取義浩監督のような選手の持っていき方、気持ちの奮い立たせ方は、自分にはない部分だし、そこを勉強していきたい」と言っていました。分析が発達した今、正しいことは誰でも言えます。いかに響かせるかが監督の本質だと、河合ヘッドも実感しているようです。

大同フェニックス東海の芳村優太ヘッドコーチは名門・大同特殊鋼では初の、生え抜きではない指揮官です。語学堪能で、外国人獲得でも力になるなど、トータルでチーム作りができるのが、芳村ヘッドの強みです。選手個々の育成ビジョンもしっかりしていて、国内で勝つだけでなく、常に世界を見据えた視点で、チームを強化しています。

ラース・ウェルダーヘッドコーチ(ブレイヴキングス刈谷)熱血漢

ラース・ウェルダーヘッドコーチ(ブレイヴキングス刈谷)は、選手に最大限の出力を求める
ラース・ウェルダーヘッドコーチ(ブレイヴキングス刈谷)は、選手に最大限の出力を求める

理論もあるけど、それ以上にモチベーターとして優秀なタイプです。選手のやる気に火をつけて、よさを引き出し、チームをまとめていきます。

ラース・ウェルダーヘッドコーチ(ブレイヴキングス刈谷)は、選手の出力を引き上げるモチベーター。練習から激しさを求め、高出力のプレーを引き出します。酒巻清治監督から代々受け継がれてきたロジカルなハンドボールに、理屈を超えて激しさが加わり、あとはプレーオフで勝つだけ。試合で劣勢になると、采配がやや硬直化する傾向があるので、ファイナルで勝つなら大差でぶっちぎるのがベストかもしれません。

玉村健次監督(堺リエゾン)シュートにこだわり

ベテラン監督笑顔の2ショット。玉村健次監督(堺リエゾン、写真左)と黒島宣昭監督(琉球コラソン、写真右)
ベテラン監督笑顔の2ショット。玉村健次監督(堺リエゾン、写真左)と黒島宣昭監督(琉球コラソン、写真右)

現役時代に大エースだった監督は、シュートへのこだわりが人一倍です。細かい駆け引き、タイミングなどを選手に教え、それが受け継がれていきます。

日本歴代屈指のサウスポーだった玉村健次監督(堺リエゾン)は、ジャンプシュートの跳び方を細かく工夫して、湧永製薬時代に点を取っていました。地面に対して垂直に跳ぶだけでなく、わざとDFから遠ざかるように跳んだりと、細かい技術を語りだしたら止まりません。左利き特有の独自の感性もあるので「左利きのロングシューターを育てたいな」とも言っていました。サイズがあって将来有望な左利きが獲れた時の、玉村監督の手腕が見ものです。

稲毛隆人(安芸高田わくながハンドボールクラブ)選手兼監督

いつでも試合に出られる状態の稲毛隆人兼任監督(安芸高田わくながハンドボールクラブ)
いつでも試合に出られる状態の稲毛隆人兼任監督(安芸高田わくながハンドボールクラブ)

いわゆるプレーイングマネージャーです。選手兼任の「青年監督」がもてはやされた時代が他競技でもありましたが、高度になった現代ハンドボールで兼任監督はなかなか大変です。

稲毛隆人監督(安芸高田わくながハンドボールクラブ)は、兼任監督になった年にヒザの大ケガに見舞われました。松葉杖をついてベンチ入りした時期を乗り越え、2025-26シーズンにはライトバックのポジションに戻ってきました。試合に出る時は助安功成コーチにベンチワークを任せて、ベンチに下がればAの札をつけて采配を振るいます。自身のコンディションを上げないといけないし、試合では選手起用に気を配らないといけないので、大変そうです。特にわくながの場合は、充実したGK3枚の使い分けがカギを握るので、GKを見られるコーチがベンチにいれば、稲毛監督の負担も軽くなると思うのですが。 

東長濱秀作監督(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)勝負師

東長濱秀作監督(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)は、ハンドボールの本質を捉えている
東長濱秀作監督(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)は、ハンドボールの本質を捉えている

監督には勝負と育成の両方が求められます。選手を育てる教育者タイプは、えてして勝負弱い傾向にあります。目の前の試合を物にする勝負師タイプは、どの競技でも昔の方が多かったような気がします。

琉球コラソンを初のプレーオフに導いた東長濱秀吉監督(現スーパーバイザー)は、根っからの勝負師気質。日本リーグでのプレー経験はありませんが、選手あがりの監督よりも明らかに勝負勘で上回っていました。限られた戦力で勝つことに執念を燃やす姿は、今も健在です。 

東長濱秀吉監督の長男、東長濱秀作監督(ザ・テラスホテルズラティーダ琉球)も、勝負師の血を受け継いでいます。見た目でとやかく言われがちですが、審判への抗議も「秀作はちゃんとルールブックを読み込んだうえで抗議しているから、筋が通っている」と言われています。お父さんよりも育成寄りで、若いメンバーが揃ったラティーダで上を目指しています。

リーグHの監督のまとめでした。名鑑シリーズは今回でラスト。ディフェンダーはうまくまとめられなかったので、また後日、違った形で紹介できればと思います。

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