JOC(日本オリンピック委員会)の山下泰裕会長(66)は2023年10月29日、家族とプライベートで行動中に転倒し、頸椎(けいつい=首の骨)を損傷したと11月2日にJOCが発表した。手術は無事終えたというが、現在も入院中で面会謝絶状態。山下さんより年長のスポーツ関係者は「いつもメールするとすぐに返ってくる律儀な人なのに、今回はメールしても返信がないんだ」と心配している。2019年6月にJOC会長に就任して3期目(任期は2年)を迎えた中での突然の「事故」だった。容体が気がかりである。
11月21日にはJOCの三屋裕子副会長(65)が山下会長の現状について「リハビリに専念したいという意向であると聞いています。今は留守をしっかり守る」と説明した。山下会長の早期回復が待たれるが、この調子だと、少なくとも数か月は職務復帰が難しそうだ。
五輪招致・談合・札幌…「説明責任」ストップ
1984年ロサンゼルス五輪で柔道男子無差別級金メダルを獲得し、アマチュアスポーツ選手として初めて国民栄誉賞も受賞した山下会長は、世界からリスペクトされる柔道界、日本スポーツ界の「顏」だ。
自身もIOC委員(国際オリンピック委員会委員)であることから、馳浩・石川県知事が講演内容を撤回した「東京五輪招致活動で、IOC委員に官房機密費(内閣官房報償費)を使ってアルバムを渡した」と発言した問題や、現在も尾を引く東京五輪にまつわる談合・汚職問題、2030年招致を断念してフェードアウト気味の札幌冬季五輪招致についても、本来なら矢面に立って説明責任が求められる立場だ。だが、いまそれは完全にストップしている。
後任の人選検討は、日本スポーツ協会との「収まり」
Pen&Sports [ペンスポ] は、「永田町がJOC山下会長の後任の人選検討に着手し始めた」という情報をキャッチした。なぜ永田町なのか。麻生太郎・自民党副総裁に伺いを立てるためだ。麻生氏は1976年モントリオールオリンピッククレー射撃日本代表で、超党派のスポーツ議員連盟会長。スポーツの政治依存を抜け切れず、麻生氏が日本スポーツ界の人事に絶大な影響力を持っているのが現実だ。
「本来なら東京2020大会組織委員会会長も務めた橋本聖子氏が順当だが、日本スポーツ協会会長が遠藤利明・衆議院議員であることから、JOC、日本スポーツ協会の両輪のトップがいずれも国会議員では収まりが悪い」などといった主旨の話も聞こえて来ている。
朝日新聞嘱託社員だった山下氏
Pen&Sports編集長の原田亜紀夫が朝日新聞スポーツ部勤務時代、山下泰裕会長は朝日新聞の「同僚」だった。山下氏は1986年から2017年まで朝日新聞の「嘱託社員」だったのだ。本社に出社することはほとんどなかったが、朝日新聞社は定期的に「山下の目」というコラムを独占掲載するなどの契約を結んでいた。
2017年5月30日の自分の手帳を見返すと「山下先生、銀座〇〇ビアホール」とあった。
当時は山下氏がJOC選手強化本部長に抜てきされる直前の時期だった。事前にその情報をJOC関係者からキャッチしていた私は、山下氏に打診があったのか、その人事が既定路線なのかをその場で尋ねた。山下氏は記者が鋭い質問をすればするほど喜ぶタイプ。私の質問に何も言わず、にっこり笑ったことを覚えている。
山下泰裕さんの早期回復を心から祈る。日本スポーツ界の過ちを正し、信頼回復に一直線で立ち向かって欲しい。
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