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【ハンドボール】日本リーグ男子は豊田合成が4連覇 |トヨタ車体との激戦制す

MVPの中村を、豊田合成セブンが全員で祝福(久保写す)
MVPに選ばれたGK中村を、豊田合成メンバーが祝福=2024年5月26日、久保写す。以下すべて
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第48回日本ハンドボールリーグプレーオフ、男子ファイナルは2024年5月26日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで、シーズン1位の豊田合成と同2位のトヨタ車体が対戦。日本リーグだけに限らず、日本選手権でも数々の名勝負を繰り広げてきた愛知の両雄の戦いは28 – 27。またしても豊田合成が競り勝ちました。豊田合成はリーグ4連覇。MVPには勝負の節目で活躍したGK中村匠が選ばれています。試合を時系列で振り返ります。

目次

2023ファイナルは7mスローコンテストで決着

豊田合成とトヨタ車体は、日本リーグの中でも抜きん出た存在です。ワールドクラスの外国人に、ハイレベルなGK陣を誇る豊田合成。日本代表選手を数多く抱え、強くて理にかなったハンドボールをするトヨタ車体。2023年のプレーオフファイナルでは両チームが対戦し、第2延長でも決着がつかず、7mスローコンテストにまでもつれ込みました。

前半1分:合成・バラスケスが1点目

マークを外さずバラスケス(豊田合成)を守っていた櫻井(トヨタ車体・写真右下)に、市原(豊田合成)がスクリーンをかけていた
マークを外さずバラスケス(豊田合成)を守っていた櫻井(トヨタ車体・右下)に、市原(豊田合成)がスクリーンをかけていた

両チーム通じて最初の得点は豊田合成。レフトバックのヨアン・バラスケスが流しの上(右利きのバラスケスから見て右上)にロングシュートを決めました。トヨタ車体の右の2枚目DFは長身の櫻井睦哉。バラスケスの動きを封じようと、積極的に前に出ていきました。そこに合成のピヴォット市原宗弥がサイドスクリーンをかけて、バラスケスが打ちやすい状況を作っていたのです。バラスケス封じの切り札・櫻井の積極性を利用して、逆にチャンスを作り出した合成のセットOF。2023年12月の日本選手権決勝やレギュラーシーズンを経て、合成がしっかりと対策を練ってきたなと感じさせるファーストゴールでした。(下に記事が続きます)

前半12分:車体・櫻井、ベンチに退く

櫻井が後頭部を打って、担架で運ばれる
トヨタ車体・櫻井が後頭部を打って、担架で運ばれる

前半12分7-6で1点リードのトヨタ車体にアクシデントが起こりました。ライトウイングの櫻井が、DFでバラスケスを止めた際に倒れ、後頭部を打ちました。脳しんとうの恐れもあるため、担架でコートの外に運び出されました。右の2枚目でサイズと運動量を誇る櫻井が抜けると、車体のゲームプランが崩れかねません。チームメイトも「右の2枚目は櫻井ありきだから」と言っていただけに、車体からするとかなり心配なアクシデントでした。幸いにも大事には至らず、櫻井は後半から試合に戻っていますが、櫻井のいない時間帯は右の2枚目に冨永聖也を入れるなど、車体はやりくりに苦労していました。

前半16分:合成の水町・古屋・原田が見せ場

右利きライトバックの原田(豊田合成)。いい位置取り、いいタイミングでの攻撃を心がける
右利きライトバックの原田(豊田合成)。いい位置取り、いいタイミングでの攻撃を心がける

豊田合成は途中、趙顯章(チャオ・シェンチャン)、バラスケスと左右の大砲をベンチに下げ、バックプレーヤーを日本人だけにしました。ピヴォットでディエゴ・マルティンを使う時間帯なのですが、外国人選手はオン・ザ・コート2。もう1人入れられる状況なのに、水町孝太郎、古屋悠生、原田大夢の右利きの日本人3人でバックプレーヤーを固めました。いつもの合成と比べてスケールダウンしたようにも見えたこの布陣が、実は今回のファイナルでのキモでした。3人のパス回しはとても速く、運動量豊富な車体DFをパスで翻弄。粘り強く正確にパスを回したあげくに、ピヴォットのマルティンに落としたり、水町のスイングフェイントに合わせてセンターの古屋がレフトバックの位置から走り込んだりと、OFのリズムを変えました。

ライトバックの原田は「趙とヨアン(バラスケス)はシュートがえげつない。水町さんと古屋は頭がいいし、ライン際にいるディエゴ(マルティン)にパスを落とせる安心感もある。素早いパス回しでスタートのメンバーとの違いを出しつつ、僕もパス回しでアホなことをしないよう、一生懸命やりました」と話していました。判断力で勝負する右利き右バックの原田は、この日3得点。素早く正確な判断とアイデアで、攻撃の流れを呼び込んでいます。前半24分から水町、原田の連続得点で14-12と合成が抜け出し、結局前半は16-14。合成リードで前半を折り返しました。(下に記事が続きます)

後半15分:23-21、合成最大のピンチ

温かい声かけもありつつ、いつも以上に気迫を前に出していた中村(豊田合成)
温かい声かけもありつつ、いつも以上に気迫を前に出していた中村(豊田合成)

後半も車体が同点に追いついても、合成が逆転を許さず、合成リードで試合が進んでいました。ところが後半15分23-21で、合成に最大のピンチが訪れます。退場、失格が相次ぎ、2人少ない状況になりました。車体もエース吉野樹が7mスローを決めて、さらに17分にライトバックの渡部仁が間を割り、23-23の同点に追いつきました。そんな苦しい状況で、しっかりと仲間に声をかけ、言葉とプレーでチームを落ち着かせていたのが、合成のGK中村匠でした。「起こってしまった出来事は変わらない。失格でモチベーションが落ちないよう、ポジティブな声かけをしました」と言うように、ピンチの時ほど冷静で、仲間を救えるのが中村匠です。

後半21分:合成のGK中村、杉岡止める

杉岡(トヨタ車体)のシュートを止めた中村。田中監督とハイタッチ
杉岡(トヨタ車体)のシュートを止めた中村。田中監督とハイタッチ

後半20分にキャプテン古屋の7mスローが、車体のGK加藤芳規に止められました。激しくガッツポーズする加藤を見て、中村は「加藤さんナイスキー!よし、次は僕の番だぞ」と、気持ちを入れ直したそうです。直後の21分、車体のレフトウイング杉岡尚樹のサイドシュートを防ぎました。「杉岡さんには絶対負けたくないから、ずっと見方には『杉岡さん勝負で』と言っていました。あの場面は、関口さん(勝志・トヨタ自動車東日本)の捕り方を参考にしました」。近め(手前のゴールポストに近い側)に位置を取り、さらに近めを止めに行ったあの捕り方は、日本リーグ最年長GK関口のプレーがヒントだったとは…。対戦相手の好セーブすら自分の力に換えて、ここ一番では新たな引き出しで勝負する。中村の感性にはいつも驚かされます。(下に記事が続きます)

後半28分:合成・マルティンのポストシュート、退場誘う

マルティン(豊田合成)は知性と教養あふれるスペイン人ピヴォット
マルティン(豊田合成)は知性と教養あふれるスペイン人ピヴォット

25-27と2点差を追うトヨタ車体は、7人攻撃で最後の望みをつなぎます。エース吉野のアウト割り、さらにはライトウイングに入った伊舎堂博武の速攻で、27分40秒で27-27の同点に追いつきました。しかしここでも豊田合成は冷静でした。ピヴォットのマルティンを、車体の右1枚目DFにいる小柄な伊舎堂の横に置き、ミスマッチを狙います。ポストシュートに行こうとするマルティンを止められず、伊舎堂は2分間の退場に。後半終了まで、車体は1人少ないままになり、7人攻撃を仕掛けられなくなりました。

マルティンは「そういうフォーメーションなのは分かっていたから」と、退場を誘ったプレーは当たり前だと言います。相手の弱点に、自分たちの一番の強みをぶつけるのは、戦いのセオリー。クレバーなマルティンだけに限らず、合成は全員が勝ち方をよく知っています。

29分:合成・水町がスカイプレー、28-27に

豪腕・水町も年齢を重ねてクレバーなプレースタイルに
豪腕・水町も年齢を重ねてクレバーなプレースタイルに

CPが6対5の数的優位の場面で、合成はじっくりとボールを回します。審判の手が挙がりパッシブプレー寸前で、趙からライトウイングの出村直嗣にボールが渡りました。角度のないところでの勝負かと思われたところで、出村は真ん中から飛び込んできた水町にパス。スカイプレーが決まって28-27。この1点が決勝点となり、豊田合成が4連覇を達成しました。(下に記事が続きます)

2チーム分の厚みと使い分け

田中監督の応援団も大喜び。お揃いの「茂Tシャツ」がまぶしい
田中監督の応援団も大喜び。お揃いの「茂Tシャツ」がまぶしい
豊田合成・田中監督(左)と古屋キャプテン

豊田合成の田中茂監督は「今回の優勝は、選手層の厚みがあったから。相手からすると2チームと対戦するくらい、神経を使ったと思う」と勝因を述べました。バラスケス、田中大介、趙顯章の3枚は、パワーと個人能力で押しまくるユニット。水町、古屋、原田の3枚は「1人を2人で守ってくる車体DFを振り切るために、速いパス回しで勝負する」ユニット。この2つを上手に使い分けていました。司令塔でもあるキャプテン古屋は「それぞれによさが違うから、組み合わせが変わるたびに頭をリフレッシュさせながら、誰が強みなのか、どこが狙い目なのかを整理して、普段の練習からやっています」と話していました。個々の持ち味を全員が理解し、相手と時間帯に応じて的確に使い分ける――。まさに組み合わせの妙。「こういう勝ち方もあるのか」と驚かされた、豊田合成の戦いぶりでした。

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