日本ハンドボール協会(JHA)は2024年8月16日、東京の味の素ナショナルトレーニングセンターで、ハンドボール男子日本代表(彗星ジャパン)の新監督を発表しました。新監督は、スペインのFCバルセロナなどで指導し、若い年代の育成に定評があるトニー・ジローナ氏。パリ五輪で結果を残したカルロス・オルテガ監督のスピーディーなハンドボールを継承しつつ、若手の育成にも力を入れていきます。
台風の影響、会見はオンラインに
2024年8月16日の記者会見は、本来であれば東京の味の素ナショナルトレーニングセンターで男子日本代表の公開練習とともに行われる予定でした。台風7号の影響を考慮して、急遽オンラインでの会見のみに変更となりました。
トニー・ジローナ新監督は1973年生まれの51歳。2024年ヨーロッパチャンピオンズリーグを制した世界屈指の強豪・FCバルセロナでは、アシスタントコーチやBチーム(リザーブチーム)のヘッドコーチを務めました。またチュニジアやセルビアの代表監督の経験もあります。
「日本、スピードが優れている」
「はじめまして」と、自己紹介を日本語から始めたジローナ監督。「日本代表の監督になれて光栄です。次のロサンゼルス五輪へ向けて、責任を持って取り組んでいきたい」と抱負を語りました。
「パリ五輪のアジア予選、世界選手権のアジア予選、さらにはパリ五輪を見て、日本のパフォーマンスはどんどんよくなっているし、ポテンシャルを感じた。ここからさらに若手を育てて、日本のさらなる成長に関わっていきたい。日本人は世界のトップほどのサイズはないけど、スピードが優れている。速さにポテンシャルを感じている」とも言います。
大学やクラブとの連携にも意欲
荷川取義浩・JHAハイパフォーマンスディレクターは「パリ五輪で通用した部分、通用しなかった部分を分析して、オルテガ監督のあともスペインのハンドボールを継承していくことにした。ジローナ監督は若手の育成に定評があるので、アンダーカテゴリーの育成にも関与してもらうことになる。GKコーチやアナリストの講習会も開いていきたい」と、選考の経緯を明らかにしていました。ゾラン・ジョルジッジGKコーチ、パウ・レイシャアナリストからも、世界のGK指導や分析方法などを教わり、日本全体に広めていきたい考えがあるようです。
ジローナ監督も「今回の日本での仕事で大事になってくるのは、大学やクラブチームとの連携。フィジカルやコーディネーションの強化についても、しっかりと話し合っていきたい」と言っていました。これは楽しみです。
あくまでも私のイメージですが、日本のハンドボール界は身体作りの土台がないまま、テクニックや駆け引きに膨大な時間を費やす印象があります。うまさを過大評価し過ぎるところがあります。当たり負けしない筋力や、成長段階で養っておきたい身体を操る力があれば、もっとシンプルに強くプレーができるはず。その土台の上に、日本の強みであるスピードが乗っかれば、世界で勝ち切れるようになるでしょう。(下に記事が続きます)
育成の仕組みづくりに期待大
仕組み作りという点でも期待が持てます。ダグル・シグルドソン監督(現クロアチア代表監督)は時間をかけて多くの選手を代表に招集し「代表はパッと集まって、国際試合をする場」にしました。安平光佑や吉田守一といった海外組の若手が、短期間で力を発揮できるような仕組みを作ったのが、シグルドソン監督の大きな功績です。
シグルドソン監督のベーシックなハンドボールの土台をもとに、カルロス・オルテガ監督は短期間で「スピードとアグレッシブさ」というエッセンスを加えました。日本人の適性に合ったハンドボールにシフトし、藤坂尚輝(日本体育大)のような新たなスピードスターを見出しました。
この流れを受けて、ジローナ監督が育成年代の仕組み作りをしてくれたら、日本はさらに上を目指せます。経験則が主流になっているGKの育成、成長期に覚えておきたいコーディネーション、まだまだ足りないフィジカル、これらの課題がクリアできれば、ヨーロッパ勢に勝ち切れる日がくるはずです。
任期は2028年ロス五輪まで
宮本英範JHA専務理事は「ジローナ監督にはロサンゼルス五輪までの4年間、腰を据えてやってもらいたい」と言っていました。ジローナ監督も「セルビア代表監督時代(2020~2024年)はクラブチームの監督と兼任だったが、今回は日本代表監督に専念する」と意気込んでいます。8月22日に東京の代々木第一体育館で行われるパリ・サン=ジェルマン戦が、ジローナ監督のお披露目となります。(下に記事が続きます)
8/22PSG戦、パリ五輪代表は玉川だけ
22日に向けての代表メンバー19名も、同時に発表になりました。パリ五輪メンバーから選ばれたのは玉川裕康(ジークスター東京)1人だけ。リーグH(旧・日本リーグ)のレギュラークラスは中田航太(トヨタ紡織九州レッドトルネードSAGA)、中田凌河(福井永平寺ブルーサンダー)、川上勝太(安芸高田わくながハンドボールクラブ)ぐらいです。あとはリーグHの若手と大学生の有望選手といったメンバー構成になりました。パリ五輪直後で、社会人選手権やリーグH開幕が近いといった難しさもあったと思われます。
公益財団法人 日本ハンドボール協会:ニュース:男子日本代表「彗星JAPAN」 新監督発表 及び PSGハンドボールジャパンツアー2024 代表メンバー発表 (handball.or.jp)
ハンドボール日本代表はこれから多くの選手を試しながら、2025年1月の世界選手権で「32カ国中、20位以内」(ジローナ監督)を目指していきます。新たなスタートを切る彗星JAPANを応援しましょう。代表監督が空位になることなく、スムーズに交代できたあたりにも、日本ハンドボール協会のやる気が感じられました。
トニー・ジローナ(Toni Gerona)1973年7月31日生まれ(51歳)、スペイン国籍。スペインの強豪FCバルセロナでアシスタントコーチ、Bチーム(リザーブチーム)のヘッドコーチを歴任。現在活躍するFCバルセロナの選手を若手時代からよく知り、育ててきた実績がある。2017年から4年間はチュニジア代表監督、2020年からの4年間はセルビア代表監督を務め、2024年8月から男子日本代表監督に就任した。前任のカルロス・オルテガ監督と同じFCバルセロナ出身で、パリ五輪の前後には日本代表について話し合ったという。
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