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【ハンドボール】クウェート戦「ディフェンスに厚み、ポストも機能」銘苅 淳・アルバモス大阪高石監督 | 男子アジア選手権

銘苅の目
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クウェートで開かれている第22回AHF男子アジア選手権は2026年1月23日(日本時間24日)、上位8チームによるメインラウンドの第2戦があり、予選ラウンドD組2位の日本(彗星JAPAN)は、C組1位のクウェートを完全アウェーのなか、28-27(前半15-14)で振り切った。日本はメインラウンドで通算1勝1分けとし、準決勝進出と世界選手権(1月、ドイツ)への出場権獲得に前進した。この試合のポイントを元日本代表で、リーグH男子のアルバモス大阪高石監督を務める銘苅淳さん(40)が振り返った。

目次

前半の評価:ポストを抑え切った守備が試合を作った

対クウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)
日本-クウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)

15-14で折り返した前半を振り返ると、全体としてディフェンスはかなりよく機能していたと思います。特に良かったのは、真ん中から前のディスタンスシュートでは多少やられているものの、ポストにほとんどやられていなかった点です。前日(1月22日)の韓国戦ではポスト対応でかなりストレスを抱えていましたが、今日はそこがはっきり改善されていました。吉野樹が前に張られた場面もありましたし、二枚目がポストにしっかり被って守る意識が見えていました。

三枚目が真下で二人出てしまい、ポストを空けるような悪い形がほとんど出なかったのは大きいです。結果としてポストからの失点はかなり抑えられましたし、リードした状態で試合を進められていたことも評価できます。クウェートは退場が多かった印象がありますが(前後半で6回)、その数的優位をうまく使えていたことも、前半を落ち着いて運べた要因だったと思います。(下に記事が続きます)

攻撃の前進:ディスタンスシュートとポストの両立

攻撃面では、クウェートが3-2-1のオープンディフェンスを敷いてきても、6-0で構えてきても、日本はディスタンスシュートが比較的よく決まっていました。調子がいい日は、無理に崩そうとせず、振り切れている選手が思い切って打つ判断でいいと思います。吉野樹はその典型で、振り切れた時のシュートはしっかり決まっていました。

加えて、PV市原宗弥のポストシュートが出たことも大きなポイントです。昨日はポストでほとんど得点が取れていなかったので、今日は明確な前進だと感じます。前日の韓国戦では、ポストに入った瞬間にボールを失う場面もありましたが、今日はそういったミスがかなり減っていました。ピヴォットがきちんと仕事をした試合だったと思います。

後半のテーマ:6対6での我慢と好判断

後半に入ると、クウェートが簡単に退場しなくなり、6対6の時間帯が増えてきました。ここからが本当の勝負で、数的優位を前提にしない攻め方が求められました。どうやってズレを作るのか、どこで勝負するのか、その判断の積み重ねが重要な時間帯でした。

ディフェンスでは、クウェートのディスタンスをどう抑えるかがテーマになります。日本がワントップを出す選択肢もあったと思いますし、後半から仕掛けるのは十分ありだと思います。ただ、市原宗弥のところは三枚目なので、どうしても1対1を狙われやすいエリアです。そこで個人で止め切ろうとするのではなく、フォローに入ってフリースローにする。1対1を1対1で終わらせない守りが今日はできていました。この積み重ねが、後半の粘りにつながったと思います。

日本ークウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)

終盤の攻防:戦術よりも「退場しない」こと

日本-クウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)
日本-クウェート戦より=2026年1月23日、クウェートのシェイク・サード・アル=アブドゥッラー屋内競技場で(提供:クウェートハンドボール連盟)

試合終盤になると、もう戦術というより判断の勝負になります。この時間帯で一番やってはいけないのは退場を出すことです。退場さえしなければ、多少点が取れなくても試合は壊れません。だからまずは失点しないこと、守ることを最優先にすべき時間帯でした。

6対5の数的優位の場面でも、点を取りに行きたい気持ちは分かりますが、焦ってシュートを打つ必要はありません。ルーズボールやリバウンドをしっかり取ること、当たり前のことを当たり前にやるだけで流れは大きく変わります。CB田中大介の終盤のディスタンス、ステップシュートによる決勝点は、あの場面で打てるメンタルの強さを象徴していました。

ゴールキーパーについても、岩下祐太が非常によく当たっていましたし、終盤の中村匠へのキーパースイッチもタイミングとしては悪くなかったと思います。こういう接戦では、当たっているキーパーをどう使うかが結果を左右します。そういう意味ではベンチワークが機能した勝利だったとも言えるでしょう。(下に記事が続きます)

クウェートの子どもたちに観た観戦文化と没入

会場の雰囲気を観ていて、改めて海外のハンドボール文化を思い出しました。クウェートでは、子どもたちが国旗を振って、シュートが決まるたびに抱き合って喜んでいました。あれは単なる応援ではなく、試合に完全に没入している姿だったと思います。

僕がスペインでプレーしていた時は、さらに衝撃的でした。小学生くらいの子どもでも審判に対して平気で声を上げますし、会場全体が審判に向かって叫ぶことも珍しくありません。危険だから、試合後に審判にセキュリティが付くこともある。それくらい、見る側が本気で入り込んでいるんです。乱暴に見えるかもしれませんが、彼らにとってはそれがスポーツの楽しみ方であり、地元のチームや町、国に対する感情の表れなんですよね。

日本には日本の礼節がありますし、それ自体は大切です。ただ、スポーツを見る側がどれだけ没入できているかという点では、まだ差があると感じます。僕は、日本にはまず「推しのチーム」を持つ文化が必要だと思っています。代表でもいいし、リーグHのクラブでもいい。自分が感情を預けられるチームを一つ持つことが大事です。

推しのチームがあれば、勝っても負けても試合を見ますし、自然と感情も動きます。勝ったから面白いのではなく、勝つまで、あるいは負けても一緒に苦しめる。その没入体験が、スポーツを文化として根付かせる土台になると思います。この日の日本戦を観戦していたクウェートの子どもたちや、スペインの子どもたちは、すでにそれをやっている。だからこそ、日本も競技力の向上だけでなく、見る文化、応援する文化を育てていく必要があると強く感じました。

この試合は、内容を積み重ねて勝ち切る重要性と同時に、日本ハンドボールの現在地と、これから向き合うべき課題をはっきり示してくれた一戦だったと思います。

銘苅 淳(めかる・あつし) ハンドボール・リーグH男子のアルバモス大阪高石監督。元日本代表。1985年生まれ、沖縄県浦添市出身。中学2年でハンドボールを始め、那覇西高ー筑波大からJHLの強豪トヨタ車体に加入。2012年にハンガリー1部に移籍、2014-15シーズンには得点王に輝く。日本代表に選出された2016年アジア選手権では、カルロス・オルテガ監督のもと、26年ぶりに韓国に勝ちアジア3位となって世界選手権出場権を獲得した。2016年にスペインリーガASOBALに移籍。2017年に帰国、JHL北陸電力でプレー。2020年に引退。関西学院大学男子ハンドボール部ヘッドコーチも兼任する。

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