スペイン・スーパーカップ(スーペルコパ・デ・エスパーニャ)決勝が2026年1月11日に開催され、勝ち上がったFCバルセロナとレアル・マドリードが対戦。異国サウジアラビア・ジッダの地で伝統の一戦「エル・クラシコ」が実現した。
結果は3-2でFCバルセロナが勝利したが、わずか5分間で3得点が決まるという驚きの展開に。サッカーにおいて1試合の平均得点は約3ゴールだが、なぜこれだけ短時間にゴールラッシュが起きたのか。
前半アディショナルタイムに3得点
試合は、36分にブラジル代表ハフィーニャがピッチ中央で前を向いた状態でボールを受けると、ドリブルでリズムをとりながら左足を一閃。相手ディフェンダーの股を抜くようにしてゴール右に突き刺さりFCバルセロナが先制(1-0)。
すると45+2分にレアル・マドリードのこちらもブラジル代表ヴィニシウス・ジュニオールが左サイドから長距離ドリブルを仕掛け、股を抜き相手をかわしながらゴール至近まで迫り右足でゴール右に決めた(1-1)。ハーフタイムに入ろうかという前半アディショナルタイムの、この物の見事な個人技による同点弾で、怒涛の3ゴールの口火が切られた。
レアル・マドリードの選手達が喜んだのもつかの間、FCバルセロナは45+4分にスペイン代表ペドリの縦パスを相手ディフェンダーの間で受けながらポーランド代表ロベルト・レヴァンドフスキがゴール前に抜け出す。そして飛び出してきたベルギー代表GKティボ・クルトゥワの上を越すように右足で柔らかく蹴り上げ、ボールはゴールポストに当たってゴールネットに収まった(2-1)。
負けてはいられないレアル・マドリードは右コーナーキックを獲得し、45+6分にそのCKをブラジル代表ロドリゴが右足でクロスするとスペイン代表ディーン・ハイセンがヘディングシュート。高く跳躍したハフィーニャがどうにか防ごうと頭の先に当てて方向が変わったボールは、クロスバーに跳ね返りゴール前に落ちる。そこに反応したゴンサロ・ガルシアが、後方からの圧力で倒れながらもトラップし右足を伸ばしてトゥキック。ボールは再びクロスバーに当たり、今度はゴールに吸い込まれた(2-2)。
ようやく長いようで短かったアディショナルタイムが終了し、両者譲らずに同点でハーフタイムに突入した。この5分間の3得点は、いずれも前半アディショナルタイムに決まったものだった。
そして73分にゴール中央に走り込みながら横パスを受けたハフィーニャがそのままの勢いで相手をかわし、倒れながら右足ミドルシュート。ブロックしようとした相手の足に当たり方向が変わったボールは高く浮き上がり、すでに横っ飛びしていたGKは対応ができず。先制点を挙げたハフィーニャのこの日2点目となるゴールが決勝弾となり、FCバルセロナが優勝を決めた(3-2)。(下に記事が続きます)
延びた「アディショナルタイム」という魔界
以前のアディショナルタイムは前半が1~2分、後半が2~5分というのが相場だった。これは、無駄に失われた試合時間を補うもので、とりわけリードしているチーム(あるいはドローに満足しているチーム)が時間稼ぎをして試合を有利に運ぼうという企てを抑止・緩和する効果がある。
そして近年に入り、負傷や時間稼ぎ行為、ゴールを祝う行為、選手交代、VAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)などによる時間をより細かくカウントするようになった。これによりアディショナルタイムという魔の時間帯が延びることとなった。
試合終了間際は特に、そのスコアが試合の勝敗に直結するため両チームともに心血を注ぐ局面だ。そして前半終了間際も戦略的に重要な時間帯となる。ハーフタイムに入る際の形成次第で、後半に向けた戦い方やミーティングの内容が大きく変わってくるのだ。
試合の魔界となるアディショナルタイムが延びたことが、この試合のゴールラッシュの一因だ。
学校の課題や仕事のプロジェクトにおいても、締め切り間際というのは力が入るものだ。その熱を帯びた時間帯は、集中力が増す者もあれば、疲労困憊で意識朦朧とする者もいる。疲れれば、走って戻るべき所まで戻れず、逆に集中力が増せば通常以上の力が出る。ここで無理をした差分によってもゴールが生まれやすい状態になる。
「本来は終了しているはずが、試合が継続している」という状態はスリリングであり、試合を盛り上げるのにも一役買っている。アディショナルタイムは試合を公正に進行させるためのものだが、サッカーのエンタメ性を高めることにもつながっている。(下に記事が続きます)
得点という転換点
得点を決めたチームは喜ぶあまりに気が緩み、逆に失点したチームは取り返そうと反撃に力が入ることがある。
得点でアドレナリンが出てさらに士気が高まり、試合の流れを手繰り寄せて追加点が入ることもある。そして失点に気を落として、さらに失点を重ねることもある。
得点とは試合の大きな転換点となりうるもので、その際の心持ちや戦い方次第で試合結果が大きく左右されることがある。
この試合においても、その得点による作用を見ることができた。(下に記事が続きます)
一撃必殺のクオリティー
見逃してはいけないのは、両チームのクオリティーの高さだ。1つ1つのプレーの質が高く、一撃必殺の極芸を実践可能なレベルにある。ミスばかりの試合であれば、これだけの精度で得点が決まることはなかっただろう。
FCバルセロナは最高水準の育成システムを確立している。対するレアル・マドリードは巨額の資金で世界中からスーパースターをかき集めており、フランス代表キリアン・ムバッペを切り札として76分から途中出場させる贅沢ぶりだ。他のクラブであれば、これだけの実力のある選手は先発で起用するだろう。
90+1分にはキリアン・ムバッペに対する危険なタックルにより、オランダ代表フレンキー・デ・ヨングが一発退場になった。試合を変えうる危険なスーパーサブを潰そうと激しくチャージした結果だ。こちらもアディショナルタイムの出来事だった。(下に記事が続きます)
強烈なライバル意識
そして、何と言ってもスペインにおけるエル・クラシコは2大巨頭が激突し両者が一歩も譲れない一戦なのである。そこには、深い歴史と文化的背景がある。
サッカーの1試合という枠を越えて、国民的な行事として位置づけられている。FCバルセロナとレアル・マドリードのサポーターでなくてもエル・クラシコは観戦するという者は少なくない。
また、サッカーを普段は気にかけない層も、スペインではトップニュースとして試合結果が報道されるので無視できない。
そしてタイトルがかかったこの大舞台で、5分間に3得点という正気の沙汰とは思えないような劇的なシーンを超満員62,345人の観衆が目撃することとなったのである。

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