高校駅伝日本一を決める全国高校駅伝があす2024年12月22日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に開かれる。男子は7区間でフルマラソンと同距離の42.195キロ、女子は5区間でハーフマラソンと同距離の21.0975キロのコースで競う。そんな「都大路」で、私が密かに注目しているチームがある。北海道代表の「札幌山の手高校」だ。特に初出場となる女子はなんと陸上部員が足りず、バスケットボール部員1人を借りた5人で北海道予選で初優勝、全国切符をつかみとった。都大路も俊足バスケ部員の力を借りて、5人でタスキをつなぐ。
リーチマイケルの母校、女子駅伝は今年結成
札幌山の手高校は札幌市西区にある創立1911年(明治44年)の伝統校。スポーツが盛んで特にラグビーとバスケットボールは全国屈指の強豪だ。あのラグビー日本代表のキャプテンを務めたリーチマイケルの母校としても知られる。
しかし、女子駅伝チームは今年結成したばかり。今年3月までは全国中学選手権800mで優勝経験がある石川蘭(いしかわ・らん)選手(3年)が唯一の女子部員だった。
そこに、全国で実績がある石川選手に憧れて、宇都宮桃奈(うつのみや・もな)選手と、渡辺栞弓(わたなべ・しき)選手ら1年生が3人が今春入学。ただしそのうちの1人は転校生のため、今年度は駅伝を走る資格がない。さらにケニア人留学生のニヴァ・チェプテンゲニー選手が加わったが、駅伝を組むにはあと1ピース足りなかった。そこで抜擢されたのが、バスケットボール部でガードのポジションを担う、山下瑠花(やました・るか)選手(2年)だった。(下に記事が続きます)
監督「選手を貸してほしい」
指導する梶山一樹監督(53)が北海道予選の1カ月前、目下全道で敵なし、全国優勝の実績もあるバスケットボール部に「選手を貸してほしい」と頼み込んで山下選手の「レンタル」が実現した。オーダーは1区宇都宮、2区石川、3区ニヴァ、4区山下、5区渡辺と整い、4区を任される山下選手は「いい順位で来てくれると思うので、その順位を落とさないように全力で頑張りたい」と話している。
札幌山の手・女子バスケットボール部は全国高校駅伝翌日の23日に全国大会、ウインターカップ(東京体育館)の初戦を迎える。山下選手は駅伝を走り終えた後、その日のうちに京都から東京に移動。翌日の試合に備えるという。異なる二つの競技の全国大会に連日出場する稀にみる「二刀流」。応援せずにはいられない。
札幌山の手高校は男子も北海道予選で歴代最高の2時間5分14秒をマークして6連覇。1区(10km)の林柚杏選手(2年)や2区(3km)に5000m全国高校総体優勝のガユ・サミュエル選手(2年)ら強力なメンバーがそろい、全国での過去最高成績の7位(2017年)を上回る力がある。目標は「3位以内」。序盤から上位争いをするのではと予想している。
監督は元ユニバーシアード日本代表
札幌山の手高校の梶山一樹監督は、私が中学・高校時代、北海道の陸上1500mで競い合っていた憎らしくも、憧れの先輩だ。腰高のフォームから繰り出すラストスパートの切れ味が鋭く、高校時代は一度も勝てなかった。東海大四高から進学した順大時代には日の丸をつけ、1995年ユニバーシアード福岡大会の1500mで準決勝に進出した梶山監督。現役時代の勝負強さは日本の中距離ランナーでも屈指の存在だった。
一方で競技を離れれば、人懐っこく面倒見のいい性格は昔から。偉そうにしているところは見たことがない。11月の日体大記録会で再会したときも、梶山監督は男子にも女子にも留学生にも分け隔てなく気配りし、いい記録を出した選手を全力でほめ、レースに失敗した選手を全力でなぐさめる姿が印象的だった。
梶山監督は現在、家族とは別居し、男子駅伝チームのケニア人留学生2人と札幌市内のアパートで暮らしている。
全国高校駅伝で京都に遠征する前。梶山監督は留学生の成長に驚いたという。何も言わずとも部屋は埃一つなく整頓され、アパートの風呂やトイレはピカピカに磨いてあったのだ。札幌山の手高校の選手たちは、普段の練習だけでなく、数々の遠征や生活をもともにする監督に、精一杯の恩返しの走りをするに違いない。
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