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【カヌースラローム】羽根田、5度目の五輪へGO‼ 9/19から世界選手権

カヌースラローム・羽根田卓也
世界選手権直前、スロバキアで強化合宿に励む羽根田=本人のX(旧Twitter)より
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私(原田)がリスペクトしてやまないアスリートが勝負の時を迎える。カヌースラローム・カナディアンシングルの羽根田卓也(36)。2023年9月19日から英国・リーバレーで始まるICFカヌースラローム世界選手権(24日まで)で自身5大会連続となる五輪出場をかけて、パリ五輪出場権獲得に挑戦する。上位12位までの国・地域(NOC※)にパリ五輪出場枠が与えられ、日本選手最上位ならパリ五輪に内定する。

※National Olympic Committee:各国・地域の国内オリンピック委員会

目次

羽根田、リオ五輪でアジア人初のメダル

羽根田は2016年リオデジャネイロ五輪で銅メダルをつかみとった。初出場の北京(2008年)は予選14位。2012年ロンドンは7位。3度目のリオで、カヌー競技でアジア人初のメダリストとなり、テレビや新聞、雑誌などで報道された。日本でなじみがなかったカヌースラロームという競技の存在を知らしめた。私も朝日新聞紙面とSports Graphic Number 「熱狂のリオ。」(2016/9/9特別増刊号)で、彼の偉業を思い入れたっぷりにつづった。

0.13秒。「瞬き」の差でメダリストに

リオ郊外のブラジル軍の敷地内に設けられた人工コース。その記者席で、彼の渾身のレースの一部始終を見ていた。準決勝6位で10人による決勝に進出。その時点でメダルは正直、微妙だった。競泳や柔道、レスリングなどと比べて日本の記者も圧倒的に少ない。それでも、私はリオ五輪開幕前の展望記事で「羽根田にメダルの可能性」とはっきり書いていた。

カヌーは伝統的にフィジカルに長けたヨーロッパ勢が強いが、リオのコースは水流が速く、ゲートのセッティングもいわゆる「くせ者」と聞いていた。フィジカル一辺倒で攻略するのは難しい。羽根田の持ち味はコース選択、水流をつかむ判断力や、ノーペナルティーでゲートをかいくぐる正確さにある。それがリオで生きるはずだ、と考えていた。

羽根田は決勝の2本のレースで、人生最高のパフォーマンスをした。世界の表彰台の常連選手が次々とゲートに接触してペナルティーを受けるなか、羽根田はロデオのように艇を操り、上体をそらし、一度もゲートに接触せずに漕ぎ切った。4位の選手との差は0.13秒。まさに瞬きほどのタイム差で羽根田はメダリストになり、自分の人生を変えた。

高校卒業後、すぐにカヌースラロームの強豪国スロバキアに単身、修行して10年。銅メダルに感極まる羽根田。その苦労を知る世界のライバル(米国、スペイン、チェコ)が祝福。

羽根田のメダルを信じ取材 プレスセンターで拍手

私は羽根田の銅メダル確定後、速報、大型雑観、解説、コラム、記者会見雑報など一心不乱に原稿を書いた。1面、社会面、スポーツ面。おそらく新聞紙面でカヌーがこれだけ扱われたことはない。MPC(メーンプレスセンター)の朝日新聞の部屋に戻ったときは深夜だったが、私が朝日新聞の部屋のドアを開けると、後輩記者たちが立ち上がって拍手をくれた。羽根田のメダルを信じて、読み切って、数年に渡って取材してきた自分をねぎらってくれたのだ。こんな記者冥利に尽きる経験をもたらしてくれたアスリートはほかにいなかった。

2017年富山でのNHK杯優勝後、ファンに囲まれる羽根田(原田写す)

羽根田からペンスポに「スポーツの魅力伝わる」

世界選手権を目前にした羽根田と9月上旬、連絡をとった。

私がPen&Co.を起業して「Pen&Sports」[ペンスポ]を創刊したことを伝えると、「起業されたとは知らず驚きました」と返事をくれた。「Pen&Sports」について「スポーツの魅力がとても伝わる素晴らしいサイトですね」とコメント、勇気をもらった。

冒頭に彼のことを「リスペクトしてやまないアスリート」と書いたのは、彼のそんな気づかいだ。そして自分の言葉で創意工夫しながら発信するところも、グローバルな感性も、「個性と自由ではみ出していく」キャラクターも含めて、常に気になるアスリートなのだ。私が東京2020オリンピック・パラリンピック大会組織委員会勤務時代にも「コロナ禍で先行きが見えない中、オリンピックを準備してくださっている人が一番大変ですよね」とメッセージをくれていた。

念願の国内初の人工コースで開かれた2021年の東京五輪は10位。しかも、コロナ禍の緊急事態宣言下での開催で、無観客だった。カヌー競技を多くの人に知らしめたい、競技を普及させたい羽根田にとってはもう一度、パリ五輪の大観衆の前で自身最高のパフォーマンスを見せることがほかならぬ願いだ。そしてこれが最後の五輪挑戦になるかもしれない。

「Pen&Sports」のパリ五輪内定者リストに「羽根田卓也」の名を書き加えるのを今か今かと待っている。

羽根田 卓也(はねだ・たくや)1987年、愛知県豊田市生まれ。7歳〜9歳までは器械体操に取り組み、9歳から父と兄の影響でカヌーを始めた。世界レベルで活躍することを目標に、高校を卒業後すぐにカヌー強豪国のスロバキアへ単身渡る。2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロ、2021年東京大会と4大会連続で五輪出場。リオ五輪で、この競技アジア人初となる銅メダルを獲得、一躍カヌーを国内に知らしめた。スロバキアの首都ブラチスラバの国立大学院卒業。愛称「ハネタク」はマツコ・デラックスさんが命名。

カヌースラローム競技 カヌーには大きく分けて急流で速さを競う「スラローム」と穏やかな水面で速さを競う「スプリント」がある。1972年のミュンヘン五輪で初めて採用された「スラローム」は近年、主にコース約200~300mの人工コースで開催され、艇をパドルで漕いで18~25か所のゲートを通過して競う。競技は1艇ずつのタイムトライアル方式で行なわれる。上には2本のポールでできたゲートが吊るされ、ゲートには上流から下流に通過するダウンゲートと、下流から上流に回り込むアップゲートがある。各ゲートに対して指定された順番、指定された方向から通過しなければならない。不通過なら+50秒のペナルティ。ゲートに接触した場合にも+2秒のペナルティーが課され、最終的なフィニッシュタイムが速い順で順位が決まる。レースは人が立てないほどの急流で行われ、艇をコントロールするバランス能力と柔軟性、急流のコース取りなどの状況判断力と敏捷性が求められる。

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