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【プロ野球】神宮のマウンドに7歳「挑戦する人を応援する」始球式

WBC日本代表でもあるヤクルト・中村悠平捕手のミットめがけてボールを投げた吉次楽さん
WBC日本代表でもあるヤクルト・中村悠平捕手のミットめがけてボールを投げた吉次楽さん=2024年7月19日、神宮球場
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プロ野球の試合前に芸能人などが登場して試合に華を添える始球式。そんな始球式で先週、ひとりの少年が夢をかなえた。2024年7月19日の中日―巨人戦、バンテリンドーム ナゴヤでは元プロ野球選手の清原和博さん(56)が2年ぶりに始球式に登場して話題をさらった日の同じ時間帯、ヤクルトーDeNA戦があった神宮球場のマウンドには、ひときわ小柄な7歳の吉次楽(よしつぐ・がく)さんがいた。

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難病抱えても、できること増やす

WBC日本代表でもあるヤクルト・中村悠平捕手のミットめがけてボールを投げた吉次楽さん
始球式前、不安そうな吉次楽さん。大声援で「聴覚過敏」を心配した父の左腕にはイヤーマフが準備されていたが、使うことなく乗り切った

特別支援学級に通う小学2年生。地元チームのヤクルトスワローズを応援することが一番の楽しみだという吉次楽さんは身長110センチ、体重20キロ。発達の遅れや成長障害などの症状がある歌舞伎症候群という難病を抱える。

スキップができない。平均台に乗れない。ボールが投げられない。少し前までは障がいの影響でできないことが多かったが、家族の支えや治療プログラムを受け続けることで、最近はできることが一つひとつ増えてきた。今回の始球式への挑戦は「神宮球場で叶える夢」の公募に、父の吉次聖志さんが応募して実現した。(下に記事が続きます)

飛び跳ねて喜びを爆発

始球式の大役をこなした笑顔の吉次楽さんにヤクルトベンチからも拍手が送られた
始球式の大役をこなした笑顔の吉次楽さんにヤクルトベンチからも拍手が送られた

吉次楽さんは、大好きな村上宗隆内野手の背番号55のユニホームに袖を通し、父の聖志さんとともに登場した。セットポジションからじっくりと力を貯めて投げたボールは、地面に5回弾んで捕手のミットに届いた。ヤクルトベンチから「ナイスボール!」の声とともに、スタンドから拍手がわくと、吉次楽さんは飛び跳ねて喜んだ。

「人生を萎縮せず、乗り越えていけたら」

父の聖志さんが息子の興奮を代弁した。「最高です。大観衆のなかに息子が堂々と出ていけた。これまでの育ちを見てきたわけですが、息子がこうして投げられたことに感動しています」「今後、苦しいこともあると思いますが、難病を抱えたこの子が、人生を委縮してしまうのではなくて、チャレンジすることで乗り越えていけたら。この成功体験が大きな糧になったと思います」

神宮球場で踊る夢を叶えた中川友梨香さん
神宮球場で踊る夢を叶えた中川友梨香さん(中央)

「神宮球場で叶える夢」を企画・運営したのは戸建て住宅大手のオープンハウスグループ(本社・東京)だ。2018年からプロ野球ヤクルト球団のトップスポンサーを継続中。この日はいわゆる「冠スポンサー試合」の日にあたり、燕(つばめ)を応援する意味で「応燕ハウスナイター」と銘打った試合で「神宮球場で叶える夢」を一般から公募した。

始球式を務めた吉次楽さんのほかにも、千葉・浦安高校ダンス部出身の中川友梨香(なかがわ・ゆりか)さん(27)の「夢を追い続けるきっかけとして高校ダンス部で再結集して踊りたい」という思いを受け止め、球団公式ダンスパフォーマンスチーム「Passion(パッション)」と共に「We Are The Swallows」を踊る機会を提供。もう一つの夢が叶った。(下に記事が続きます)

「挑戦する人を応援する」企業風土

オープンハウスグループ コミュニケーションデザイン本部広告宣伝部の飯田大輔次長
オープンハウスグループ コミュニケーションデザイン本部広告宣伝部の飯田大輔次長(原田写す)

オープンハウスグループといえば、昨年、阪神甲子園球場などでの「あの夏を取り戻せ 全国元高校球児 野球大会」を全面支援したことでも話題になった。新型コロナの影響で戦後初めて中止になった2020年夏の全国高校野球選手権の「やり直し」という位置づけで企画した学生らの思いを、オープンハウスグループと荒井正昭社長個人が受け止め、必要経費の大半を出資することで実現にこぎつけた。スポーツ界では珍しい、企業PRの枠を超えた大型支援だった。

そもそも、戸建て・マンション販売を生業とするオープンハウスグループはなぜ今回、「神宮球場で叶える夢」を公募したのか。コミュニケーションデザイン本部広告宣伝部の飯田大輔次長に聞いた。

「オープンハウスは創業以来、やる気のある人を登用し、成長を遂げてきました。2023年9月期決算では初の『売り上げ1兆円超え』を達成しました。それは夢を叶えるために努力する人を応援してきた歴史でもあります。品質の高い住宅を手ごろな価格で販売する企業という枠を超えて『挑戦する人を応援する』という企業姿勢を社内だけでなく、広く社会に対して浸透させていきたいと考えています。性別や年齢、バックグラウンドなどを問わず、夢を叶えようと努力している人を、オープンハウスグループが応援していく。今回はその第一弾プロジェクトなんです」

スポーツを活用した企業ブランディングのなかでは、派手さや即効性はなく、手間もかかる手法だろう。それでも「神宮球場で叶える夢」にはオープンハウスグループのまっすぐなメッセージ性を感じた。難病を抱える吉次楽さんが始球式を終えた時、練習から見守ってきた同社広報の社員が筆者の隣で涙ぐんでいた。プロ野球も含めたスポーツ取材経験22年、始球式で泣く人を見たのは初めてのことだった。

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