陸上男子20キロ競歩の世界記録保持者(1時間16分36秒)で、2019年世界陸上ドーハ大会50キロ競歩金メダル(4時間4分20秒)の鈴木雄介(36)が2024年7月末日限りで現役を引退する。23日、所属先の富士通が発表した。鈴木の柔軟な足首を生かした地をはうようなフォームは「世界一美しい」と称された。今後は新たに競歩選手の育成・強化をスタートする新潟食料農業大でコーチを務めるという。
ドーハ世界陸上金メダルに「深い思い入れ」
鈴木は富士通を通じて「競技人生を振り返ると、国際大会も含め数多く出場し、どのレースにもそれぞれ思い出はありますが、やはり2015年の全日本競歩能美大会20km競歩で世界記録を樹立できたことと、2019年のドーハ世界陸上50km競歩で金メダルを獲得できたことに対しては深い思い入れがあります」とコメントした。
ドーハ世界陸上の「圧勝」は筆者の記憶にも深く刻まれている。
スタート時の気温は31度、湿度74%。中東ならではの劣悪な条件のなか、鈴木は断トツで優勝した。出場46人中フィニッシュできたのは28人。「完歩率」は60.8%の過酷なレースだった。国際陸上競技連盟はこの大会を見かねて、猛暑対策のため、東京五輪のマラソンを札幌市に移転する異例の要請を大会組織委員会にしたのだった。
鈴木はその高温多湿の条件をものともせず、スタートから独歩態勢に入った。30キロ手前ではトイレに駆け込みながらも逃げ切った。自ら開発に協力した通気性に優れたキャップAirpeak(LIVE BORN株式会社:本社東京都中央区)のPROシリーズを着用し、世界陸上本番はそのキャップに氷を仕込んで暑さに耐えた。
東京五輪は「コンディション不良」で辞退
鈴木は「一方で、良い思い出ばかりではなく、恥骨の故障やオーバートレーニング症候群といった長引く苦難の時期もあり、波乱万丈な競技人生だった」ともコメントした。2019年世界陸上ドーハ大会50キロ競歩を制したことで東京五輪代表に即内定したが、2021年6月、「コンディション不良のため」五輪代表を辞退していた。
「選手時代にいただいた多くのご支援を、次世代の選手に還元していく姿をお見せできればと思います」とコメントを締めくくった鈴木。セカンドキャリアでも前進あるのみだ。
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