バレーボール女子日本代表で2026-2027シーズン、イタリア・セリエAでプレーするのは4人。そのうちなんと3人がブスト・アルシツィオに所属する。ブストといえば、昨季はレギュラーに定着し、イタリアも3季目となるセッターの関菜々巳だが、今季はさらに日本代表の絶対的OPである和田由紀子と、将来のエースを期待される高身長アタッカー・大友美空も加入し、注目を集めている。10月4日に行われたノヴァーラとの開幕戦では3人とも出場、惜敗したものの奮闘した。筆者は開幕前、3選手にホーム近郊の町で取材、新シーズンにかける思いを聞いた。
イタリア到着翌日から練習参加

ミラノ中央駅から鈍行電車を乗り継いで約1時間、長年イタリアに住む筆者も初めて聞くヴェネーゴノ・インフェリオーレという田舎町にやってきた。というのも、9月10日にホームアリーナの天井の落下事故があり、クラブは練習も試合も近郊の町で行わざるを得ない状況になっているからだ。
筆者が到着したのは練習の最後の1時間。6対6のフォーメーションで実戦に近い練習を行っていたが、前日に到着したばかりの3人の日本人選手もしっかりコートに立っていた。ボールを入れるのは、タイ代表でアシスタントコーチを務め、今季からアシスタントコーチに就任した吉田伸コーチだった。
練習が終わった後、和田が吉田コーチにレセプションの自主練に付き合うようにお願いすると、大友も一緒にコートへ。「5分だけだよ」と声をかけたバルボリーニ監督も、大友のレセプション練習のため、うれしそうにサーブ役をかってでた。終始なごやかな雰囲気で、新加入の2人もとてもリラックスしているように見えた。
関「日本の3選手が来てよかったと思われるように」

「移動からずっと(和田、大友と)一緒にいて、なんか違和感はありましたね。イタリアに行く気がしなかったっていうか」。
日本人選手が新たに2人加入したことについて、イタリアで3季目を迎える関は笑いながらこう答えた。和田と大友には「いろんなアクシデント、日本ではあり得ないようなこともありますけど、それさえも楽しむような気持ちでいた方がいいよ」と伝えたと言う。バレーボールはもとより、イタリアで2シーズンを過ごした関の実体験からのアドバイスだ。「一緒に話したりすることで2人がなじみやすくなればいい」と言う関のコミュニケーション面でのサポートも、新加入の2人には心強いに違いない。
和田や大友のほか、ドイツ代表のOHグロゼル(19)やイタリア代表のMBマルケジーニ(20)など若い選手が多く加入し、関は上から数えて3番目の年長者になる。「新しいチームのほうが緊張感がありますが、今季は同じチームで監督も同じだし、知ってるメンバーもいるし。上から3番目とはいえ、特にやってきたことを変えるわけでなく、勝つためにやるべきことをやっていくだけです」
同日の夜に行われたチームのプレゼンテーションでは、「日本の3人が来てよかったと思われるように」3人で力を合わせてチームへ貢献することを誓った関。個人では、トスの精度を高めること、チームでは昨季よりひとつでも多く勝つことを目標にしている。
和田「淑乃とお出かけするのが楽しみ」

「来る前はワクワクが大きかったが、来てみると不安なところも見えてきている」と今の心情を語った和田。それでも来伊前、すでに1季を過ごしていた関から監督やチームについて話を聞いており、「ブストが一番成長できるチーム」と初めての海外挑戦の場にブストを選んだ。
この日は練習の初日だったが、「若い選手が多くてエネルギッシュ、とてもパワフルです」という印象を受けた。自身については「攻撃の部分でチームを勝たせられる選手になりたい。今までは日本でプレーしていたが、これからは世界のトップオポジットの選手たちに負けないくらいオフェンスの存在感に磨きをかけていきたい。守備に関しては世界のオポジットで一番になりたいです」。実際に練習後にレセプション練習を志願したのも、レセプションを自分の武器の一つにしたいからだそうだ。
チームとしては、優勝を目指す。そのために毎日いろんなことを積み重ねていきたいーー。どの質問に対してもすぐに言葉を出さず、じっくりと考えたうえで一言一言を丁寧につなげていく話し方が印象的だった。
即答したのは、海外に来て楽しみにしていることを尋ねた時だ。「ミラノに佐藤淑乃選手がいるので、一緒にお出かけするのが楽しみです」。その言葉通り、10月5日のオフでは2人のインスタグラムのストーリーで、ツーショット写真が投稿された。ミラノの他に行ってみたいのはローマ。オフの日がうまく合えば、今度はコロッセオを背にした2人の写真を見られるかもしれない。
大友「スタートから出られるように」

移籍のきっかけは「ずっとイタリアに行きたいと思っていた」。ブストから声をかけてもらったのはちょうど1年前だったと言う。
練習初日では「ブロックがないとレシーブが飛ばされちゃうな」と思ったほど、イタリアの選手のパワーが印象的だった。そんな中での課題はディグで崩れないことと、OHで出るからには欠かせないレセプションの強化。そして高さとパワーのあるブロックを使って、うまく得点につなげていけるようにすることだ。新キャプテンのバッティスタ、昨季からスタメンだったメキシコ代表のパッラに、同じく今季から加入のドイツ代表グロゼルと、OHのスタメン争いは熾烈だ。「日本人はディフェンスが得意だと思われているので私もそこを頑張りたい。スタートから出られるようになりたい」と顔を引き締めた。
とはいえまだ20歳の大友。プライベートで楽しみにしていることを訊くと、「ずっとヴェネツィアに行きたいと思っていたので、機会があればぜひ行ってみたい。パスタやピッツァを食べたいけど、ドイツ時代に太っちゃったので無駄なものは食べないようにしないと」と顔をほころばせた。
若いチームメートは、テンションが高くチームの雰囲気はとても良いと感じている。「私はそういう(テンションが高い)タイプではないですけど」と言いつつも、1日目にしてすでに充実したシーズンを確信しているようだった。
開幕戦は強豪ノヴァーラから1ポイント

10月4日の開幕戦は、昨季レギュラーシーズン4位、プレイオフ準決勝進出のノヴァーラとの対戦だ。昨季よりスタメンに定着した関はもちろん、和田も第1セットからコートイン。第1セットを接戦でものにしたものの、第2、第3セットでノヴァーラに逆転を許したブストだったが、続く第4セットを和田のスパイクで奪い返す。第5セットは10点まで追いつ追われつの展開だったが、サーブとレセプションのミスで2連続得点を献上すると、リズムを取り戻すことができず、12-15で惜しくも力尽きた。
とはいえ、強豪から1ポイントを奪取する大健闘の試合だった。なかでもドイツ代表OHの19歳、グロゼルが28得点と暴れまくった。海外リーグデビュー戦となった和田は5セットを通してコートに立ち、チーム2位の13得点を挙げてチームに貢献。大友は大幅にリードを許した第2セット中盤グロゼルと交代してイタリア初得点をあげた。関は安定したトスワークに加え、2エースを含む3得点で要所を締めた。
第2節は10月10日、リーグ8連覇中のコネリアーノとの対戦だ。古巣のホームでの関の活躍、そしてイタリアリーグ1季目の和田と大友がどのように対応していくか、目が離せない。

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