華やかに水中を舞い踊るアーティスティックスイミング(AS)の日本代表(マーメイドジャパン)は2026年9月26日から3日間、静岡県浜松市で開かれる愛知・名古屋アジア競技大会に出場する。2028ロス五輪に向けた試金石で、ライバル中国を上回っての金メダルをめざす。マーメイドジャパンはパリ五輪後から宮川美哉(旧姓:立花)ヘッドコーチ(HC)が選手の若返りを図り、チーム作りをしてきた。この記事では日程と見どころ、宮川HCによる選手評を紹介する。工夫の凝らされたテーマにも注目したい。競技はU-NEXTやTVerで視聴できる予定だ。
アジア競技大会のアーティスティックスイミング
アジア競技大会では8人の選手で演技を行う「チーム」と、2人のペアで演技を行う「デュエット」の2種目が行われる。チームは3種目(フリールーティン・テクニカルルーティン・アクロバティックルーティン)の総合得点で、デュエットは2種目(フリールーティン・テクニカルルーティン)の総合得点で順位を競う。
9月26日(土)11:00~デュエット・テクニカルルーティン
テーマ:アンドロイド
佐藤友花と比嘉もえがアンドロイドを演じる。機械にはない呼吸、鼓動を感じ、生きていることの喜びから人間の心を取り戻す。
9月26日(土)17:00~チーム・アクロバティックルーティン

テーマ:ハンター
土台となる選手の上で新体操のような技を繰り出したり、人の上をジャンプで飛び越えたり、派手な大技が見どころ。
アクロバティックルーティン担当・柴田こころコーチのコメント 日本のアクロバティックは世界に通用しないと言われてきた。それを払拭するために今シーズンは特にアクロの練習に力を注いできた。アーティスティックスイミングというサバンナで、世界のトップ国を「ハント」しにいく、という意味を込めた。ジャンパーである石井小夏選手が獲物で、周りの選手が石井選手を狙っているという構図で技が構成されている。そこに注目してほしい。
9月27日(日)11:00~デュエット・フリールーティン
テーマ:共生
佐藤と比嘉、2人の異なるアイデンティティが出会うことで、互いに影響を与え合い、自分の殻を破って新しい自分へと生まれ変わる。デュエットらしくない世界観をあえて目指した。
9月27日(日)17:00~チーム・テクニカルルーティン

テーマ:イバラ
テクニカルルーティンは決められた技の正確性や同調性を競う。同調性が一番求められるため日本が長年得意としてきた種目だが、気は抜けない。2026年6月に行われたワールドカップカナダファイナルではテクニカルルーティンは6位。
テクニカルルーティン担当・小野茜コーチのコメント 美しいバラにはトゲがある。美しくも妖艶な世界観をアーティスティックスイミングで表現した。また、イバラ道という言葉もある。これはまさに、マーメイドジャパンが置かれている現状だと思う。このイバラ道を乗り越えて、選手たちに美しく咲き誇ってほしいという願いを込めた。
9月28日(月)11:00~チーム・フリールーティン

テーマ:武士道
足技とアクロバティック技を自由に組み合わせる。フリールーティンで必要となるのは表現力。アーティスティックスイミングの真骨頂だ。
フリールーティン監修・宮川美哉HCのコメント 武士は常に自分と戦っている。アーティスティックスイミングもまさに自分との戦い。苦しい練習の中でいかに自分と向き合い自分を乗り越えられるか。その思いを選手にも持ってほしいという願いを込めた。曲は「武士道」、櫻井浩二氏に作っていただいた。途中で出てくる詩は私が書き、声は櫻井さんに当てていただいた。あえて日本語にすることで海外の方にも印象を残せるようにした。
宮川美哉HCによる選手評
宮川HCは優しい人柄なのに、練習やミーティングでは辛口だ。ワールドカップ 2026 スーパーファイナルのチームフリーで金メダルを獲得した快挙にも、ひとことも選手をほめなかったほど。元オリンピアンの高みをめざす思いにしびれたが、今回は選手をほめるコメントをお願いした。NHKのスポーツドキュメンタリー番組『スポーツ×ヒューマン』の取材で2カ月半、チームに密着した筆者が見た選手の「素顔」も紹介する。(名前の跡のカッコ内はアジア競技大会での出場種目、年齢、所属)
比嘉もえ「ASにおける日本の国力」

宮川HC 誰もが認める日本のエース。背も高く、手足も長い。柔軟性もあって、ここまでそろっている選手はいない、日本の逸材であるとジュニア時代から言われ続けていました。彼女は国力です。私たちももっと彼女を活かせるような指導を目指しています。国際大会で海外の審査員からは「彼女は笑顔が魅力的、演技中の表情がとてもすばらしい」と評価をいただいています。

筆者より 合宿中は施設の外にでる機会もなかなかなく、娯楽が少ないので、たまにチームメイトとシャンプーを交換して香りの変化を楽しんでいるそうです。現代っ子らしくスマホのフリック入力はとても速いのですが、PCのタイピングが苦手なようで、ある日、メールをなかなか打ち進められない比嘉選手に代わり、佐藤友花キャプテンが添削しながらメールを打ってあげていました。
佐藤友花(キャプテン)「東京・パリ五輪の経験いかして」

宮川HC 責任感が非常に強いのでキャプテンとして信頼もしていますし、非常にありがたく思っています。チームで唯一、東京五輪(2021年)を経験していて(この時は補欠だったが)その間合宿も1年間やり抜いたので、2度の五輪の経験をいかして走り続けてほしいと思っています。

筆者より 自他共に認めるメモ魔で、海外チームの演技をビデオで見ながらコーチカード(技の種類)を書き写すのが趣味だそう。専用ノートがあるほか、練習ノート、日記用ノート、日記とは別に自分の思いを書き出す用のノート4冊を使い分けているそうです。すごく真面目な佐藤キャプテンが好きなキャラクターはクレヨンしんちゃん。
小林唄「どれだけしんどくてもやり抜く」

宮川HC めちゃくちゃ明るくて、ムードメーカー。チームの場が和む。どの選手にも好かれるタイプなんじゃないかな、先輩後輩の隔てがなくて愛されキャラ。競技中も安心感があります、どれだけしんどくても、この子やったらやり抜くだろうと。あと、競技中、移動が速いです。技術力がとても高いのでチームではオールマイティーにいろんなポジションをこなすことができます。

筆者より 私は人見知りな性格で、取材当初は選手たちとどう距離を取っていいか迷っていたのですが、小林選手はスッと懐に入るように話しかけてくれました。これをきっかけに他の選手たちにも話しかけることができました。とても感謝しています。取材の合間にも他愛のない話に付き合ってくれて、私の中では癒し系でした。
島田綾乃「世界観を表現する力はピカイチ」

宮川HC 演技、表現力がチームの中でも一番上手です。こちらから言われなくても、自らやれる。音楽の世界に入り込める。それにパワーと柔軟性を兼ねそろえているので、アクロバティックルーティンでも、彼女がセンターで前にくるとすごく存在感がある。トランジション表現力はピカイチです。

筆者より 何にでも興味津々の綾乃選手は取材班が持っている機材など何に使うのかとよく話しかけてくれました。カメラを手渡すと、自ら選手にインタビューをしてレポートをしてくれたのですが、これがなかなかお上手!将来はレポーターなどにも挑戦してもらいたいと思っていました。
藤井萌夏「チームには絶対的に必要」

宮川HC 縁の下の力持ちなので、彼女がいなければアクロバティック技はできない。ジャンパーは1人では飛ぶことはできない。下でしっかり支え飛ばす人間がいて初めて飛ぶことができるので。チームには絶対的に必要だと言われるのが彼女です。チームの中で表現力は一番あると思う。そしてすごく優しい性格です。

筆者より 萌夏選手は2026年春から夏にかけては、ジャンパーを支える土台として安定感をつけるために体重を増やしていました。ところが安定感は出たものの、今度は足技などのキレが鈍くなってしまったので、練習が終わってからさらに1時間ほど、ナショナルトレーニングセンターの周りを走るように。その姿を撮影しようと並走しようとしたのですが結構速くて私はすぐリタイアしてしまいました。「疲れていますが外に出ると気分転換にもなるので、最近は楽しいですよ」と笑顔で答えてくれました。
川瀬由華「気づかいの人」

宮川HC チームで一番気がつかえる人です。あと、周りをしっかり見るタイプ。自分のこともよく見ているので、練習中、競技においても分析がよくできています。ただ繊細でストイックすぎるところがたまにキズ…。まあそれはおいておいて。プールの外でも、例えば試合会場とかで応援席に行くときに人の前を通らないとか、日本代表だけでなくなかなかできない人もいますが、気づかいにおいて当たり前のことが当たり前にできる選手です。大切なことです。

筆者より 普段の合宿での練習着は選手が自分の好きな水着を着用しているのですが、由華選手の水着は、一体どこで買ったんだろうと思わせる、非常に目を引く個性的なデザインのものが多くて、同じ関西人としてファッションセンスのシンパシーを感じました。筆者のお気に入りは全面ヒョウ柄のものと、高島屋の紙袋をイメージさせる、上品で鮮やかな花柄の水着です。
相高花帆「生まれもった美しい脚が武器」

宮川HC 脚がきれい。アーティスティックスイミングにおいて脚の形はとても大事なので、めっちゃ身体的に恵まれていると思います。中国チームの選手に多い脚の形をしていて、筋が出ててシャープで細くて、線が強く見える。非常に武器ですね。彼女のような脚をみんなにも作りたい。かわいくて好感度も高いです。

筆者より 花帆選手の弟・相高平蔵選手もアーティスティックスイミングの男子選手でジュニアの日本代表選手です。日本選手権でもその存在感は異彩を放っていました。ナショナルトレーニングセンターでも平蔵選手とお会いすることがあり私がなれなれしく話しかけていると、番組カメラマンから「親戚のおばちゃんか!」と突っ込まれてしまいました。平蔵選手と会話をする花帆選手はお姉さんの顔つきでした。
白波瀬菜桜「魅力的な目ヂカラ」

宮川HC 末っ子キャラで甘えたちゃん。でもなんか大人っぽいというかパッと見つめられるとやっぱり魅力的ですね。目ヂカラがあります。化粧映えするので演技中も目がいく。アーティスティックスイミングにおいて大事な要素です。

筆者より 宮川HCのコメント通り、化粧や髪型1つでお顔の印象がすごく変わるので、実はメンバーの中で最後までお顔を覚えるのに時間がかかりました。(こんな選手いたかな?と思ったら白波瀬選手だったことが多い)。合宿中はとてもおとなしい印象でしたが、アジア競技大会の日本選手団結団式では、レスリングの女子選手と一緒にクレーンゲームで盛り上がっている様子がニュースで取り上げられていました。
三橋理沙子「体操選手のような身体能力」

宮川HC 愛されキャラでみんなの妹的な存在。その一方で辛抱強い、1つの練習や特訓をコツコツと黙々とやれるタイプ。体操選手のような身体能力の高さが武器です。学業でも勉強ができて成績優秀です。

筆者より チームの最年少。練習が終わってからも一人壁に向かって倒立からの開脚練習を黙々と行っていた姿が印象的でした。理沙子選手は練習のあとにビデオ機材を準備したり、チームのi-Padから動画データを転送したり、一人でプールサイドにいることが多かったので、私の話し相手になってくれました。まだ高校3年生。自分を信じて頑張ってほしいと思っています。
石井小夏「飛ぶ能力は日本一」

宮川HC 根性があるんじゃないですか?度胸あると思います。選考会を通ってきたわけではなくて、それでも私たちの期待に応えようとしてくれている。持っているものは、天性のものでフライヤーとしての能力、飛ぶ能力は日本一。彼女に勝る人はいない。彼女が代表に入ってくれたことでチームとしてできることも増えたのでとてもワクワクしています。

筆者より 通常、日本代表選手は選考会に通過する必要がありますが、石井選手は今シーズンの選考会で29位でした。しかし、その身体能力の高さとポテンシャルを見込んで、宮川HC自らが声をかけ、2025年10月初めて代表入りを果たしました。プレッシャーを力に変えて戦った今シーズン。アジア大会ではさらに成長した姿を見せてくれることでしょう。
Pen&Sports ニュースレター(無料)に登録する
スポーツ特化型メディア“Pen&Sports”[ペンスポ]は毎週、無料ニュースレターを配信しています。原田亜紀夫編集長が勝ち負けを伝えるだけに終わらない、舞台裏のストーリーや本質に焦点を当てたコラムをお届けします。読めばニュースの見方が多面的になり、きっと気づきがあるはずです。登録・解除はいつでも可能です。





![Pen&Sports[ペンスポ]スポーツ特化型メディア](https://sports.pen-and.co.jp/wp-content/uploads/2026/01/スポーツを深くしる手書き_白字.png)





\ 感想をお寄せください /