サッカー男子日本代表DF・伊藤洋輝が所属するFCバイエルン・ミュンヘンは、2026年4月19日にホームでVfBシュトゥットガルトに4-2で勝利。30節終了時点で25勝4分1負の勝点79で、2位のボルシア・ドルトムント(勝点64)に15ポイント差となり2季連続35度目の優勝を決めた。
伊藤洋輝は、優勝が決定した試合に先発フル出場し勝利に大きく貢献した。欧州屈指のビッグクラブに加入しながら、なかなか日の目を見ることのなかった伊藤洋輝にとって、この試合はどの様な意味があったのだろうか。
上昇のキッカケとなった古巣に逆転勝利
優勝を決めた試合の対戦相手だったVfBシュトゥットガルトは、2025-2026シーズン幕開けのDFLスーパーカップでも勝利(2−1)した相手だが、伊藤洋輝にとっては前所属でビッグクラブ加入の足がかりとなっただけに感慨深い対戦となった。
Jリーグのジュビロ磐田から名古屋グランパスへの期限付き移籍を経て、ドイツに渡った伊藤洋輝。可能性を見込まれて育成も視野に入れたVfBシュトゥットガルトへの期限付き移籍だったが、期待以上の活躍で評価はうなぎ登りに上昇していった。
この試合は引き分け以上で優勝が決定するという状況でバイエルン・ミュンヘンはホームながら21分に先制点を許すという不覚を取った。しかし伊藤洋輝が、31分の同点弾につながるパスの起点となった。中央の伊藤洋輝が左サイドに出したボールを受けたドイツ代表MFジャマル・ムシアラが強引にドリブルで突破し左クロスを送るとポルトガル代表MFラファエル・ゲレイロが押し込んだ(1-1)。
その後、セネガル代表FWニコラス・ジャクソンとカナダ代表DFアルフォンソ・デイヴィスが追加点を決め3-1に。
そして52分にバイエルン・ミュンヘンは右CKをフランス代表MFミカエル・オリーズがクロスすると伊藤洋輝が頭で折り返しゴール前でGKが片足で弾き返す。そのボールを伊藤洋輝が再び左足でダイレクトで折り返すと、ドイツ代表MFレオン・ゴレツカが左足シュート。GKが片手で弾くもイングランド代表FWハリー・ケインが左足で詰めて得点した(4-1)。
バイエルン・ミュンヘンは88分、VfBシュトゥットガルトに1点を返されたが、4-2で勝利した。
試合終了のホイッスルが鳴ると、伊藤洋輝はチームメイトとともに祝福した。そして伊藤洋輝の復活の過程を温かく見守ってきたヴァンサン・コンパニ監督は、満面の笑みで両拳を天に突き上げて喜んだ。(下に記事が続きます)
タイトル総なめの可能性も苦労の連続
バイエルン・ミュンヘンはブンデスリーガ優勝時点でドイツ国内のカップ戦DFBポカールと欧州チャンピオンズリーグでも勝ち上がっており、3冠達成の可能性を残して、国内外で圧巻の実力を見せつけている。
日本時間の5月24日にあるDFBポカール決勝の相手は、奇しくもVfBシュトゥットガルト。欧州チャンピオンズリーグ準決勝は日本時間の4月29日と5月7日にパリ・サンジェルマンと対戦する。そこを突破すれば、アトレティコ・マドリードとアーセナルFCの勝者と決勝で相まみえる。
一方で、伊藤洋輝はビッグクラブに加入した矢先に大ケガに見舞われ苦労の連続だった。
2024年夏にバイエルン・ミュンヘン加入直後の7月28日、下部クラブの1.FCデューレンとの練習試合で右足中足骨を骨折した。2025年2月12日のセルティック戦(欧州CL)でようやく移籍後初出場を果たすも、2025年3月の練習中に右中足骨を再骨折し、長期離脱を余儀なくされた。この頃になると度重なる大ケガにより、北中米ワールドカップ出場に暗雲が立ち込めはじめた。
2025年11月にようやく公式戦に復帰したが、2026年3月には右脚ハムストリングの肉離れを負った。そして今シーズン、尻上がりに調子を上げてピッチ上で優勝の瞬間を迎えたのである。
前途洋々とした気持ちで世界的なビッグクラブに加入しながらも、ほぼ2シーズンをケガで棒に振り、治療とリハビリに費やす時間が大半を占めた。ついにピッチで90分間走り続けて優勝の喜びを仲間と分かち合った。その気持ちは、なんとも言葉にしがたいものがあっただろう。(下に記事が続きます)
北中米W杯に照準
伊藤洋輝は、身長188cm・体重81kgでセンターバックを務めるのに十分なサイズがあり、セットプレーの空中戦も得意とする。それでいて身のこなしが軽やかでボールコントロールも巧みで地上戦も同じくらい得意だ。左利きで左フルバック(サイドバック)としてもプレーが可能。さらにはウイングバックやアンカーでもプレー経験がある。能力が高いだけでなく、複数のポジションでプレーが可能という類まれな逸材だ。さらには絶対数が少ない左利きという点も大きい。左フルバックや左ウイングバックは左足で蹴れないと務まらないポジションだからだ。これが、バイエルン・ミュンヘンという世界的なビッグクラブから声がかかった所以だろう。
日本代表の森保一監督が多用してきたシステム【3-4-2-1】でセンターバックとウイングバックという適性が大きく異なる両方のポジション、さらにはシステム変更時に4バックの左フルバックでもでプレーできるのは有効な武器となり、頼もしい限りだ。
伊藤洋輝は、元アーセナルFCの冨安健洋(現アヤックス・アムステルダム)と同様にビッグクラブでの経験が豊富でポリバレントなディフェンダーながら、ケガがちでなかなか見通しが立たなかった。しかし、ワールドカップが目前に迫るなか、ここにきて2人そろって日本代表メンバーに選出される目処が立ってきた。
一時は故障者が続出し危機的な状況にあったが、その間に新戦力が成長し、ここに来てケガ人も戻ってきたことから、センターバックは激戦区になっている。しかし、伊藤洋輝はコンディションさえ維持できれば、アメリカ大陸でも存分に実力を発揮することだろう。
日本代表にデビューして間もなく迎えた前回2022年カタール・ワールドカップでは、コスタリカ戦でベテランの長友佑都に代わって途中出場するも81分に被弾して0-1で敗れた。その記憶が伊藤洋輝の脳裏には刻まれているだろう。
その雪辱を果たす時は、刻一刻と近づいている。北中米ワールドカップでその苦々しい思い出を払拭すべく、伊藤洋輝が長いトンネルを抜けて完全復活を遂げた。

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