バレーボールのスーペルレガで2024-2025シーズン、コッパ・イタリア準決勝でペルージャを下し、決勝進出を果たしたヴェローナ。2025-2026シーズンはトレンティーノでスクデット(リーグ優勝)とチャンピオンズリーグを制したファビオ・ソーリ監督(46)を迎え、リーグ戦後半第8節終了時点で2位につけ、5ポイント差でペルージャを追っている。今季のヴェローナの変化は新監督だけではない。アメリカ代表で世界トップセッターのひとりであるマイカ・クリステンソン(32)が加入し、躍進を支えている。4シーズンぶりに復帰したイタリア・スーペルレガやヴェローナ、そして2026年2月7、8日に迫るコッパ・イタリアについて、ホームアリーナ・PALA AGSM AIMで話を聞いた。
若返ったスーペルレガに「おじさんの気分」
クリステンソンは2013年からアメリカ代表のセッターを務め、リオ、パリの2度のオリンピックで銅メダルに輝いた世界有数のプレーヤーだ。クラブでは2015年〜18年をチヴィタノーヴァで、2018年〜21年をモデナで、合計6シーズンをイタリアで過ごしてきた。前者では元イタリア代表OHユアンタレーナなどと共にコッパ・イタリアとスクデットを制し、後者でも元イタリア代表OHのザイツェフやMBアンザーニ、同じアメリカのOPアンダーソンらとともにスーペルコッパで優勝。その後4シーズンをロシア・カザンでプレーしたが、今季から再びイタリアに復帰した。
4シーズンぶりに帰ってきたスーペル・レガは、何か変わりましたか?の問いに、「なんだか自分がおじさんに感じるんですよ」とはにかむ。確かにチームメイトのモジッチやケイタをはじめ、トレンティーノのミキエレット、この日に対戦するチヴィタノーヴァのニコロフなど、25歳以下のスター選手が多い。
「それでも以前と変わらないのは、イタリアは世界最高峰のバレーボールリーグのひとつだということ。少しでも自分たちのレベルが下がると、順位に関係なくやられてしまう。毎試合全く気が抜けず、勝ち続けることがとても難しいと再認識させられています」と語る。
そしてうれしい再会も。「昔チームメートだった選手と連絡取り合うこともありますし、今日の対戦相手であるチヴィタノーヴァとの対戦ではカナダ代表のレプキーや、昔同じクラブだったポドラスチャニン(元セルビア代表)に再会できるのを楽しみにしています。バレーボールの世界はとても狭いですが、どこへ行っても友達がいるのは本当にすばらしいことですよね」と顔をほころばせた。(下に記事が続きます)
ヴェローナのプロジェクト、コミュニティが魅力
現在所属するヴェローナはクリステンソンがイタリアを去った後に設立されたクラブだが、他国に移籍した後でもスーペルレガは見ていたし、近年のヴェローナの活動にも注目していたそうだ。それゆえにオファーの話が来た時も、そして実際に入団してからも、ヴェローナのクラブに大きな魅力を感じている。
「バレーボールを総合エンターテイメントとして盛り上げるプロジェクトや、地域の活動に熱心でコミュニティを形成していくビジョンにもとても共感しています。このアリーナやすべての環境がすばらしい」
この彼の言葉を、筆者も取材後の試合で体感した。
試合1時間前の開場時間には、アリーナ前にはたくさんの人が集まり掛け声も聞こえる。地元団体の分別ごみを呼びかけるプロモーションに始まり、ミニバレーコートでゲームイベントがあったり、新しくスポンサーになった乳製品メーカーがサンプルを配布している。中に入ると観客席にはヴェローナカラーの黄色・紺色の紙がエリアごとに置かれ、試合前にアリーナを2色で埋め尽くす演出だ。スタメンコールでは選手は照明のトンネルを抜け、スポットライトを浴びてコートに入る。応援団のチャントや声援は途切れることなく、選手も観客も、アリーナ全体が高揚感に満ちあふれていた。(下に記事が続きます)
若き野獣たちにボールを託す

当然ながら、クリステンソンがより大きな期待を寄せていたのは、個性豊かでポテンシャルの高いチームメートたちだ。最高到達点380㎝の「マリの鷲」OHケイタ(24)やキャプテンでヴェローナの顔であるOHモジッチ(24)、まだ記憶に新しい昨年の世界バレーでイタリア代表の優勝に貢献したOHサーニ(23)、そしてクリステンソンと同じく今季に新加入のブラジル代表OPのダルラン(23)。フィジカルがとても強く、何よりもみんな若い。勢いよく成長を続ける、高いポテンシャルを持つ選手ばかりである。
クリステンソンはスターティングメンバーの中では最年長。なによりも代表・クラブでかけがえのない経験を積み重ねてきた。自分の立ち位置を意識しているのだろうか。
「自分のプレーをしっかりすることが最優先で、結果的にそれがチームに最も貢献できることです。それを前提としても、やはり経験豊富な選手としてチームをまとめるという責任感も少なからず持っています。数々の準決勝、決勝で勝ち負けを味わってきた経験をチームに還元したい。でもそれは言葉ではなく、プレーでしっかり見せていきたいです・・・時にはケツを蹴ったりもね」
「日本語で言う『飴と鞭』ってやつですね?」と言うと、「ESATTO(その通り)!」とうれしそうに肯定した。キャプテンを務めてもう3年目になるモジッチも、「経験豊かなマイカ(クリステンソン)が入ってくれたことはとても大きい。キャプテンは僕だけれど、彼と2人でチームをまとめています」と最大の信頼を寄せている。
今季のヴェローナのメンバーを見て、クリステンソンに聞いてみたい!と温めていた質問を投げかけてみた。「こんな『野獣』たちをどう操っているのですか?」
「いやぁ、セッターとしては楽ですよ。セットすれば『野獣』たちは決めてくれる。フィジカルが強いだけでなく才能もある。それを最大限に生かせるセットを心がけていますが、そうでなくても決められる能力がありますから。彼らとプレーするのはとても楽しいし、セッター冥利に尽きます」
コッパ準決勝、ペルージャと再戦
2025年のコッパ・イタリアでは準決勝で王者ペルージャから大金星を挙げたが、決勝ではチヴィタノーヴァ相手にあと一歩及ばなかった。
「チームとしてはまだ準決勝や決勝、一発勝負の試合の経験が浅い。だから唯一の経験だった昨年のコッパは今年のこのチームの大きな力になっているはず。この若いチームが全力で戦い、もがいて苦しみ、そして栄光に輝く、そんなプロセスを一緒にできるなんて本当に幸せです」
2026年2月7日(日本時間2月8日午前2時)に迫るコッパ準決勝の相手は、昨年と同じくレギュラーシーズンも首位を走るペルージャ。昨年のコッパだけでなく今季のレギュラーシーズンでもヴェローナに苦杯をなめているだけに、リベンジに燃えてくるに違いない。
「勝利をつかむキーポイント?完璧でなくてもいいんです。自分たちが今までやってきたこと以上のことをコートで出せるかどうか。自分たちのプレーを、自分たち自身を信じることでもっと遠くにいける」
それはコッパだけではなく、悲願のスクデットへも同じことが言える。
「勝利を目標としなければ、ここで戦っている意味はない。しかし、そこに到達するまでにはまだ長い道のりがあります。スーペルレガは一歩間違えると滑り落ちてしまう、だからまず目の前の一歩に集中します」
その言葉には、幾度となく大事な試合を戦ってきた重みが感じられた。(下に記事が続きます)
「日本ファンは特別」将来はSVリーグにも?

4シーズン前には1人だった子どもだが、現在は3人に増えてイタリアに帰ってきた。上の男の子2人はインターナショナルスクールに通い、ミニバレーやバスケットなどスポーツをはじめ多くの活動で忙しく、楽しく過ごせている。みんな忙しくても、家族で多くの時間を過ごすことが大事。あとでインタビューしたコーチ研修中の浅野博亮さんによると、和食レストランにも家族で通っているそうだ。
「日本のファンの皆さん、日本という国は僕にとっても、僕の家族にとっても、アメリカ代表にとっても特別なもの。遠くから応援してくださっている皆さんにハグと愛情を送ります」.
あまりのうれしい言葉に、時期尚早ではあるが日本でプレーする可能性も聞いてみた。
「まだ先のことですけれど、もちろん可能性はありますよ。日本は素晴らしい国、もしそこでプレーできるなら、これほど名誉なことはありません」
筆者が彼に会うのは初めてだが、試合当日の食事前という限られたなかで時間が押しても、「全く問題ない」と終始にこやかに応答するクリステンソン。当日の試合でも、すでにヴェローナの顔であるモジッチやケイタに負けず劣らずの大歓声を受けていて、すっかりファンの心をわしづかみにしているようだ。今週末に迫ったコッパ・イタリア、そして残るレギュラーシーズンとスクデットをいかに彼が指揮していくか。期待がますます膨らんだインタビューだった。
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