ハンドボールの第27回IHF女子世界選手権(オランダ・ドイツ共同開催)第10日は2025年12月5日(日本時間12月6日)、オランダのロッテルダム・アホイでメインラウンド・グループ1の第2戦があり、予選ラウンドを5大会連続で突破した日本(おりひめジャパン)は、パリ五輪6位のハンガリーに26-26(前半7-8)で引き分けた。後半17分、日本は一時6点のリードを奪ったが、ハンガリーがゴールキーパーを下げて、コートプレーヤーを増やす7人攻撃で猛追し、試合終盤に同点とされた。日本はこの結果、各グループ上位2チームが勝ち上がる準々決勝進出を逃した。一方、ハンガリーはグループ1の2位以上が確定し、8強入りを決めた。この試合のPOM(プレーヤー・オブ・ザ・マッチ)には、日本のGK亀谷さくらが選ばれた。日本は中1日の12月7日、今大会最終戦でセネガルと対戦する。
「5点差以上の勝利」しかない

試合前から日本のゲームプランは決まっていた。それは準々決勝進出のわずかな可能性にかけ、「一発逆転」を狙うことだった。グループ5位の日本が準々決勝に進める2位以上に浮上するには、ハンガリーにただ勝つだけではだめ。勝ち点を積み上げ、さらに得失点差で他チームを上回るために「5点差以上の勝利」が求められた。高いハードルは承知の上。日本はリスクを冒して、大勝負に出た。
7-8で折り返した後半の立ち上がり。日本はゴールキーパーを下げ、コートプレーヤーを増やして数的優位をつくる7人攻撃を仕掛け続けた。ゴールはがら空き。ボールを奪われたり、シュートをミスすれば、たちまち失点するリスクを伴う。それでも「5点差以上の勝利」のために、ギャンブルに出た。7:6の数的優位をつくり、シュートコースをこじ開けることに専念した。(下に記事が続きます)
「大会最大のサプライズ」は幻に

「5点差で勝つという意識は、1秒たりとも忘れなかった」というグレイ クレア フランシスのループシュートに続いて、吉留有紀、中山佳穂が次々と決めた。後半4分、日本が3連続ゴールで10-9と逆転に成功した。その間、GK亀谷さくらが相手の7mスローを左手1本で止めるスーパーセーブも出た。
さらに相澤菜月の連続ゴール、GK亀谷のエンプティゴールなどで点差を広げ、ついに後半16分だ。PV佐原奈生子が6mラインから叩き込んで日本はハンガリーに5点のリードを奪った。日本のゴール裏を陣取ったハンガリーサポーターがわめき、荒れた。
たまらずハンガリーはタイムアウト。直後には相手のシュートミスに乗じて大松澤彩夏がエンプティゴールに流し込み、試合終了まで残り13分でこの試合最大となる6点リードを奪った。
日本のモーテン・ソウバク監督は試合後に言った。「あの点差のまま、私たちが勝っていたら、この世界選手権の全試合を通じて、最大のサプライズになっていただろう。選手たちはゲームプランを着実に実行したのだが…」
ハンガリーは試合巧者だった。残り10分で一時6点あった点差を17-20まで詰めた。ディフェンスシステムを5-1ディフェンスに切り替えて、日本に重圧をかけた。オフェンスはそれまでの日本の株を奪うかのように、7人攻撃で応戦してきた。3日前にハンガリーチームに合流したアネット・コヴァチらにスペースが生まれて、日本は失点を重ねていく。一方、日本は1対1のシュートを連続して外した。試合終了のブザーが鳴った時には6点のリードをすべて吐き出して、追いつかれていた。(下に記事が続きます)

POMの亀谷「5点差で勝つチャンスあった」

2024年パリ五輪世界最終予選では28-37の大差で敗れたハンガリーに食い下がり、引き分けた結果は、評価に値するという見方もできる。ただ、試合後の大半の選手たちの表情は晴れなかった。
11本のシュートを止め、阻止率33%と気を吐いたGK亀谷は「ハンガリーと互角にやれたチームのことを誇りに思うけれど、結果は残念です。私たちは5点差で勝つチャンスがあった。でも、ハンガリーは後半のわずかな時間で修正してきた」と首を横に振った。
3本のシュートを放ち、1得点にとどまったPVグレイ クレア フランシスも「本当に悔しい。ミスが多い。シュートを決めきれない。そんな課題が出てしまった。自分たちのミスで崩れてしまった時間帯が多かった」
要所で3得点を決める活躍を見せたLB佐々木春乃はベテランらしくポジティブに総括した。「パリ五輪世界最終予選でボコボコにやられたハンガリーに前半は8失点に抑えて、同点ですからね。チームとしては戦えた。きょうもし、勝つことだけにフォーカスできれば、勝てたと思うし、すべては『5点以上の勝利』という呪縛があったから。監督にアグレッシブに行けと言われて、リスクを取って勝負した結果です。でも、やってて楽しかったですよ」
強豪ハンガリーを追い詰めた激闘を終え、おりひめジャパンのここ1年半の進化を感じたとともに、6点のリードをわずか13分で吐き出した流れのスポーツの怖さを思い知った。
個人スタッツ
| 背番号 | 選手名 | 得点 | 総シュート数 | 成功率 |
|---|---|---|---|---|
| 13 | 中山 佳穂 | 3 | 3 | 100% |
| 17 | 大松澤 彩夏 | 1 | 1 | 100% |
| 19 | 佐原 奈生子 | 2 | 2 | 100% |
| 20 | 秋山 なつみ | 3 | 6 | 50% |
| 23 | 相澤 菜月 | 6 | 8 | 75% |
| 24 | 岡田 彩愛 | 0 | 0 | — |
| 29 | 笠 泉里 | 0 | 0 | — |
| 3 | 初見 実椰子 | 0 | 1 | 0% |
| 30 | 亀谷 さくら | 1 | 1 | 100% |
| 32 | 佐々木 春乃 | 3 | 6 | 50% |
| 37 | 松浦 未南 | 0 | 1 | 0% |
| 5 | 金城 ありさ | 0 | 1 | 0% |
| 51 | 吉留 有紀 | 6 | 9 | 67% |
| 55 | グレイ クレア フランシス | 1 | 3 | 33% |
| 77 | 上嶋 亜樹 | 0 | 0 | — |
| 89 | 石川 空 | 0 | 0 | — |
| 合計 | 26 | 42 | 62% | |
GKスタッツ
| 背番号 | 選手名 | セーブ数 | 被シュート | セーブ率 |
|---|---|---|---|---|
| 30 | 亀谷 さくら | 11 | 33 | 33% |
| 77 | 上嶋 亜樹 | 0 | 4 | 0% |
| 合計 | 11 | 37 | 30% | |
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