2026年北中米ワールドカップにおいて、サッカー日本代表の長友佑都(39)はどのような位置づけになるのだろうか。日本代表サポーターの間で長らく激論が交わされているが、開催が近づくにつれて格段に解像度が高まってきた。歴代最多5度目のワールドカップ出場を目指すサムライブルーのダイナモの現在地について考察する。
長い空白期間の終焉
長友佑都は第一次森保ジャパンの主力としてプレーしたが、2022年カタール・ワールドカップのクロアチア戦でプレーして以来、数年間にわたり国際試合でピッチに立つことはなかった。
北中米ワールドカップ本大会で登録できる選手数は26。以前の23名から増加したものの、限られていることに変わりはない。「その貴重な1枠を出場見込みのない選手に使ってよいのか」という意見が噴出していた。
しかし「チームは体の動く選手を11人並べたら勝てる」というほど単純なものではない。どんなに個人の能力が優れていても、チーム一丸となって戦うことができなければ成功は難しい。そのまとめ役として長友佑都は適任なのだ。
しかし、代表合宿で一緒に練習はするが試合になるとベンチ外という日々が続き、サポーターの不満の声は収まらなかった。(下に記事が続きます)
ゲームキャプテンとして復活
他の選択肢として考えられるのは、長友佑都を代表チームのコーチにすることだ。しかし、選手とコーチでは距離感が違ってくる。現役選手を引退してまだ間もなく、アイントラハト・フランクフルトと日本代表のコーチを兼任している長谷部誠(41歳)が、選手と近い間柄で監督との橋渡しをする役回りだ。
長友佑都は、東アジアE-1サッカー選手権2025決勝大会でチームキャプテンを務め、中国戦ではゲームキャプテンとして先発フル出場し2-0で勝利した。この試合は、実に2年8カ月ぶりの出場で、しかも本職ではないセンターバックでのプレーだった。
一つ留意しておきたいのは、E-1サッカー選手権は国内組でチームを構成したということだ。海外組が不在時の「留守番」だったのではないかという見方は、あながち的外れとも言い切れない。(下に記事が続きます)
アメリカ戦で断じるのは酷、フルバックで評価すべき
長友佑都は、9月9日に行われたアメリカ代表との国際親善試合でゲームキャプテンを任された。日本代表として144試合目の出場だ。このアメリカ遠征には海外組も招集された。メキシコ戦から中2日でメンバー全体のターンオーバーがあったとはいえ、本大会の予行演習に位置付けられる重要な遠征だ。その試合でセンターバックとして先発出場しハーフタイムまでプレーした。0-2で敗れたこの試合の1失点目の場面で、相手に対して体を寄せきれずに反省の弁を述べた。
しかし、そもそも日本代表のセンターバックでプレーできていること自体が驚きだ。長友のベストポジションはフルバック(サイドバック)だからだ。イタリア・セリエA時代であれば、ウイングバックも適任といえただろう。現在は39歳という年齢的に大ベテランであり、以前のような爆発的な走力があるわけではない。しかし、それを経験で補って3バックのセンターバックでプレーしている。
アメリカ遠征でセンターバックとして起用されたのには、守備陣が軒並み故障した台所事情もあるだろう。長友佑都のパフォーマンスを正当に評価するのであれば、フルバックとしてプレーさせるべきだ。おそらく、森保一監督は長友佑都のフルバックでの能力をすでに計算できている。そうでなければ、アメリカ戦の後半に3バックから4バックにした際に本職ではない瀬古歩夢を左フルバックに投入したことが説明できない。長友佑都が相手選手に脚を削られて痛がるシーンがあったが、深刻な負傷ではなかった。森保ジャパンにとって、アメリカ戦は壮大な実験だった。(下に記事が続きます)

はっきりした役割、お飾りではなく貴重な戦力
長友佑都の選手キャリアのタソガレが近づいていることは共通認識だろう。しかし、その人間性とリーダーシップに疑問を呈することができる者がどれだけいるだろうか。
選手としてのこれまでの実績をしっかりと振り返ってみてほしい。イタリア・セリエAで唯一降格したことがない名門インテル・ミラノで8年にわたりプレーし、2013年12月22日に行われたミラノダービーでは日本人としてクラブ史上初のゲームキャプテンを務め、ACミランを1-0で下して見事に勝利に導いた。
現在、日本代表でサブメンバーながらも快活に振るまい率先して練習に取り組んでいる。このような大ベテランを前にして一回りも年齢が若い選手たちが腐るような素振りを見せることができるだろうか。
長友佑都の森保ジャパンでの位置づけは「お飾り」でもなければ「コーチ」でも「プレーヤー・コーチ」でもなく「プレーヤー」であることがはっきりした。一つ役割を加えるとすれば「ムードメーカー」だろう。
所属するFC東京で調子を上げており、日本代表の守備陣にケガ人が続出し、貴重な戦力としてピッチに立つ機会を得た。もし今、本大会が始まれば長友佑都はケガ人が出た際の重要なバックアップだろう。しかし、それは現時点での話だ。大会に合わせて負傷者が全員復帰する保証はどこにもないし、さらにケガ人が増える可能性もゼロではない。(下に記事が続きます)

北中米W杯に出場すればジャパンの士気は爆上がり
過去のヒトと思われていたが、尻上がりに調子を上げてワールドカップに出場した日本代表選手がいる。2014年ブラジルワールドカップの大久保嘉人が、その代表例だろう。すでにベテランの領域に達していたが「再び日本代表になる」という亡き父との約束を果たすべく一念発起し、当時所属していた川崎フロンターレで得点を量産し2013シーズンのJリーグ得点王に。アルベルト・ザッケローニ監督も無視できなくなり、サプライズ選出された。
長友佑都は、すでに日本代表歴代最多のワールドカップ15試合出場を誇る。2026年北中米ワールドカップに出場することになれば、単独最多となる5大会目の出場だ。
実際に長友佑都がワールドカップに出場すれば、サムライブルーの士気は爆発的に上昇するだろう。
異論を唱えるサポーターがいるのであれば、ピッチの内外で長友佑都の代わりを務められる選手の名前を挙げてみてほしい。果たしてその案に日本国民は納得するだろうか。
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