2024年9月に開幕したリーグH。注目のチームのここまでの戦いぶりなどを紹介していきます。女子の三重バイオレットアイリスは、元女子日本代表監督でもある黄慶泳(ファン・キョンヨン)監督体制で3年目。中断期間に入った10月6日時点で1勝5敗の9位と苦戦していますが、大型ルーキーの小林愛など、久しぶりにチームの背骨になってくれそうな人材が出てきました。
新人トリオ擁し再建の年に
司令塔の林美里、DFの要だった中田夏海、スピードスター團玲伊奈など主力選手が引退し、バイオレットは転換期を迎えています。しかも新キャプテンの飯塚美沙希に横田希歩と、センター2枚が揃って膝の手術でリハビリ中。攻撃をまとめられる選手がいなくなりました。大型新人の小林愛は、いずれは日本代表のセンターになれる逸材ですが、現時点では60分間ゲームメークを担えるレベルにはありません。ハンドボールIQの高いピヴォットの初見実椰子を即席でセンターにする「応急処置」も、苦しい台所事情の表れです。
リーグH開幕から6試合目の大阪ラヴィッツ戦でようやく今季初勝利を挙げて1勝5敗と、スタートでつまずいた感があります。ただ、小林愛、藤澤舞子、南川満帆の新人トリオ(まな、まいこ、まほの頭文字を取って「スリーM」と呼ばれています)が揃って戦力になりそうなのが、大きな救いです。今季の女子は3巡目まで対戦があります。若いチームが経験を積めば、2巡目、3巡目には見違えるほど強いチームになっている可能性があります。(下に記事が続きます)
黄慶泳監督「日本一になれる」チーム作り
1年目にチームカラーを変えて、2年目に黄監督らしいDFがチームに浸透してきましたが、3年目の今季はまたしても再建の年となりました。女子日本代表やオムロン(現熊本ビューストピンディーズ)を何度も勝たせてきた名将にとっては、苦しいシーズンが続きます。とはいえ、黄監督の信念は揺るぎません。「三重バイオレットアイリスを優勝できるチームにする」ために、もう一度土台作りから着手しています。
黄監督は「3年後、初見たちがいるうちに、小林たちを主力に育てて日本一になる」と言っていました。初見、山口眞季らがベテランになった時、小林、藤澤、南川の「スリーM」が中堅になり、新人でまた次代の核となれる選手を獲得する――。これが黄監督の考える「バランスの取れた強いチーム」です。ここ数年は新人獲得で後手に回ってきたチームを立て直し、さらにスケールアップさせるには、根気と時間が必要です。今年の種まきが、数年後に振り返ったら「黄金期の入り口」だったと、のちのち語り継がれるような1年になればいいですね。才能だけをえこひいきせず、地道に努力してきた塩田成未や後藤早耶にも出番を作るあたりは、黄監督の優しさです。(下に記事が続きます)
山口眞季、攻守に若手フォロー
ソニーから移籍して2年目。DFでは3枚目に入り、今季はスタートからOFでレフトバックに入ります。昨年も今年も山口がいなかったら、チームは目も当てられない状態になっていたでしょう。サイズがあって、攻守に体を張れる山口は、実に黄監督好みの強いプレーヤーです。打点の高いステップシュートやロングシュートもありつつ、新人の藤澤の1対1を生かしたい時間帯には、藤澤と入れ替わってレフトウイングに入ることもあります。
今季はDFで新人の小林と3枚目のコンビを組み、なおかつ2年目のGK千葉夏希との連携を構築しないといけません。昨季終盤に完成しつつあったDFラインが、今季は崩れる場面が増えていますが「千葉の捕りにくいコースもカバーできるようなDFをしていかないと。小林は本来の持ち味が出せたら、周りも生きてきます」と、山口は若手をフォローしていました。穏やかな人柄で、副キャプテンの初見とともに再建中のチームを支えています。(下に記事が続きます)
小林愛、チームの背骨に
小松市立高校(石川県)では、古橋健太監督の「一番うまい子をセンターで育てる」信念のもと、大型センターとしてプレーしました。東海大学ではピヴォットに転向しましたが、栗山雅倫監督お得意の「ローリング攻撃」では、バックプレーヤーと入れ替わって9mラインの外からロングシュートを打っていました。そして黄監督から「センターで育てたい」との熱烈なラブコールを受けて、三重バイオレットアイリスに入団しました。バイオレットの歴史では、永久欠番の原希美(元女子日本代表キャプテン)以来とも言える、攻守両面でチームの背骨となれる逸材です。
1年目からセンターの一番手で、DFでは3枚目を任され、ちょっと混乱しているようにも見えます。しかし小林が飛び抜けた才能の持ち主であることは、誰もが疑いません。2024年9月16日の香川銀行戦の終盤には、引っ張りへの強烈なロングシュートを打ち込み、会場を沸かせました。小松市立高校の先輩でもある石立真悠子コーチは「勝負の責任を背負ってプレーすることで、大きく成長できる」と、後輩の小林にすべてを背負う覚悟を持たせようとしています。小林も「コートに立ったら『自分が行くんだ』と、強い気持ちを心がけています」と話していました。香川銀行戦で見せたロングシュートのような、豪快なプレーが増えることを期待しています。
リーグH 男子14チーム、女子11チームが参加して、9月から来年5月までのレギュラーシーズンを戦う。レギュラーシーズンは、男子は2回、女子は3回の総当たり戦。男子上位6チーム、女子上位5チームは、来年6月のプレーオフに出場する。
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