2024年パリ五輪開幕まで416日となった2023年6月6日、全32競技を通じて日本勢初となる内定者が出ました。神奈川県茅ヶ崎市出身の20歳、サーフィン女子の松田詩野(しの)選手。中米エルサルバドルで開催されたワールドゲームズで、アジア1位が確定して五輪初出場の権利を射止めました。その2日後の6月8日には、東京五輪銀メダリストの25歳、米カルフォルニア州出身の五十嵐カノア選手も男子初の内定者に。スポーツジャーナリストの原田亜紀夫がその選考過程を解説します。
パリ五輪のサーフィン会場は仏領タヒチ
パリ五輪のサーフィンは男女とも出場枠は24。競技はフランス本土ではなく、仏領ポリネシアのタヒチで開催されます。
松田詩野選手、五十嵐カノア選手がパリ五輪の出場権を獲得したワールドゲームズは、サーフィンの「世界選手権」に相当します。今大会ではアジア、アフリカ、欧州、オセアニアの各大陸トップの順位の選手に「条件付き」でパリ五輪の出場権が与えられることになっていました。
その条件とは、2024年2月にプエルトリコで開かれるワールドゲームズにも出場すること。日本サーフィン連盟は条件を満たした松田、五十嵐両選手を、次回のワールドゲームズに派遣することをすでに決めています。
各紙報道で「事実上、パリ五輪代表に決まった」や「パリ五輪内定が決定的となった」と奥歯にものが挟まったような表現で書かれているのはそのためです。何らかの不測の事態に見舞われない限り、松田選手と五十嵐選手のパリ五輪出場は揺るがないでしょう。
東京五輪代表落ちのリベンジ
松田選手は地元、茅ヶ崎の海で両親のてほどきを受け、6歳からサーフィンを始めたそうです。2018年の世界ジュニア選手権U16の部で準優勝するなどして頭角を現しました。
東京五輪の新競技として採用されたサーフィン。その東京五輪選考会だった2019年のワールドゲームズでも松田選手は当時高校生ながら、アジア勢最高位となり、一時は東京五輪代表に内々定しました。ところが、コロナ禍で東京五輪が1年延期となったことが松田選手に逆風となりました。
松田選手は結局、続くその後の五輪選考会(2021年のエルサルバドルでのワールドゲームズ)で前田マヒナ選手と都筑有夢路選手の2選手に順位で逆転を許してしまい、最終的に東京五輪出場を目前で逃していました。今回は2年越しの大会でリベンジを果たし、見事五輪初出場を手繰り寄せました。
東京五輪内定第1号は飛び込みの寺内・坂井組
ちなみに2021年東京五輪の日本勢内定第1号は、当時38歳だった水泳・飛び込み男子シンクロ板飛び込みのベテラン寺内健選手と、坂井丞選手(いずれもミキハウス)でした。
パリ五輪内定第1号は一転、フレッシュな20歳のサーファー松田選手が決めました。内定が早ければ早いほど、五輪本番まで心身ともに余裕をもって調整できるアドバンテージがあると言われています。
そのメリットを最大限に生かし、パリ五輪(タヒチ)本番でも松田選手と五十嵐選手にはビッグウェーブをとらえて、波に乗って欲しい。そう期待しています。
五輪のサーフィン競技とは|ルールと試合フォーマット
サーフボードという板に乗って波に乗り、テクニックを競う採点競技。男女それぞれ24選手が競う。サーフボードには、ショートボード(約183センチ)とロングボード(約274センチ)の2種類があるが、五輪ではショートボードを採用している。
予選ラウンドは各ヒート(試合)を4~5選手で競うトーナメント方式。東京五輪の場合、ラウンド1は4名、ラウンド2は5名で競った。ラウンド1は敗者なしのノンエリミネーションラウンド。上位2名が次のラウンドに勝ち抜け、下位は敗者復活戦に回る。ラウンド2は上位3名がラウンド3に進出し、下位2名は予選敗退となる。ラウンド3以降及び本戦ラウンドでは2選手が1ヒートで対戦するマンオンマン(1対1)によるトーナメントとなる。
1ヒートの競技時間は20〜30分程度で、選手は10本ほど波に乗る。1本のライディングは10点満点で採点され、最も得点が高い2本の合計点で争う。5人の審査員が基準に従って一つひとつのライディングを採点する。技の積極性や難易度などが採点基準の要素となる。