第26回ハンドボール女子世界選手権(デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3カ国共催)メインラウンドで日本代表(おりひめジャパン)は2023年12月8日(現地時間7日)、強豪・デンマークに27-26で勝利しました。同点に追いつかれた直後の後半終了間際に、相澤菜月から松本ひかるへのスカイプレーが決まって、これが決勝点に。過去にはオリンピックで3連覇しているデンマークを相手に、歴史的な白星を収めました。
デンマーク、五輪3連覇もある強豪
予選ラウンドF組3位(1勝2敗)の日本は、メインラウンドの初戦でE組1位のデンマークと対戦しました。デンマークはヨーロッパの女子を代表する強豪国で、1996年のアトランタ、2000年のシドニー、2004年のアテネとオリンピックで3連覇しています。2年前の世界選手権では銅メダルでした。メインラウンドの舞台はデンマークのヘアニング。日本にとっては「完全アウェー」のなかでの戦いになりました。
日本、DFの奮起カギ
日本はここまで3試合で、それなりに点を取れています。点数が止まった時間帯には7人攻撃でしのいできました。問題はGKを含めたDF。中央からディスタンスシュートを決められるシーンが、予選ラウンドでは多く見られました。3枚目のDF陣の奮起と、GK陣の大当たりがないと、格上のデンマーク相手には厳しくなります。
前半30分、12-12 楠本監督「間を割って」
立ち上がりこそデンマークのペースでしたが、9分過ぎから日本が4連取で7-6と逆転に成功します。エースの佐々木春乃(ドルトムント/ドイツ)の連続得点などもあり、流れをつかみました。佐々木の得点、特にディスタンスシュートが入ると、日本のセットOFのバランスが整います。
前半終了間際に追いつかれて12-12。スコアの上では悪くありません。タイムアウトで楠本繁生監督が「もっと間を割って、フリースローを取って、ロースコアに」と言っていたように、時間をかけて攻撃できていました。ただ心配なのは、佐々木、相澤菜月(北國銀行)ともに7mスローを外していること。大黒柱の2人が、ポーランド戦で7mスローを外した悪いイメージを引きずっていないか。ちょっと気がかりです。
後半38分、18-14 服部のシュート確実
後半立ち上がりの日本は、7人攻撃や相手の退場などで生まれた数的優位をうまく利用しました。38分で18-14と、この日最大の4点差をつけました。やはりライトウイングの服部沙紀(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)の得点が伸びると、チームに勢いが出ます。服部はどんな試合でも淡々とシュートを決めてくれます。43分には7mスローを決めて、チームを落ち着かせてくれました。「相澤、佐々木が7mを外して、誰が決めるんだ?」という状況で、確実に決めるあたりはさすが精密機械・服部。高確率で決めてくれる服部のシュートは、日本のストロングポイントです。
GK亀谷が好セーブ、阻止率38%
後半に主導権を握れたのは、GK亀谷さくら(ブサンソン/フランス)の好セーブのおかげです。ノルウェー時代には代表にあと一歩届かず、日本代表になる道を選んだ亀谷ですが、好調時の迫力は間違いなくワールドクラス。世界選手権で上位に行くには、GKの阻止率で33%以上が求められます。この日の亀谷は38%。チームの課題だったディスタンスシュートを止めて、サイドシュートや速攻のノーマークにも大当たりでした。この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)にも選ばれています。
終了5秒前、松本が劇的スカイプレー
しかし56分26-23から、日本はデンマークに追いつかれます。残り20秒で、デンマークのホールンドに同点のカットインを許してしまいました。簡単に終わらせてくれないあたりが、デンマークの底力。体育館に詰めかけた8000人以上の大歓声が、アリーナに響きます。残り10数秒で、日本が冷静にプレーを続けられるか。最後の最後に、この日一番の見せ場がやってきました。
勝ち越しを狙う最後のセットOF。佐々木と相澤のクロスから、相澤が空中へパスを出しました。パスに合わせて跳んだレフトウイングの松本ひかる(北國銀行)がキャッチして、シュートを決め切りました。鮮やかなスカイプレーで27-26。日本が劇的勝利でデンマークを下しました。日本のハンドボール史に残る大金星。番狂わせが少ないと言われるハンドボールで、ここまでの格上に勝てたのは初めてのことです。IHF(国際ハンドボール連盟)のニュースでは「the biggest shock of this edition of the IHF Women’s World Championship(今大会最大の衝撃)」と報じています。
松本、レフトウイング専従のフィニッシャーで活躍
改めて思うのが、松本の勝負強さです。代表では絶対的なレギュラーでもない。1試合に10点取るタイプでもない。だけど勝負どころの1点を確実にもぎ取ってくれる選手です。途中でシュートを外していても、必ず立て直して、勝負の節目で仕事をしてくれます。8月のパリ五輪アジア予選では出番が少なかったですが、世界選手権は相性がいいみたいですね。今大会はオールラウンダーというより、レフトウイング専従のフィニッシャーで活躍しています。
1勝2敗、準々決勝進出へ望み
デンマークに勝った日本は、これでメインラウンド1勝2敗。予選ラウンドの2敗(ドイツ戦とポーランド戦の惜敗)が持ち越しになるのが厳しいですが、残りのルーマニア戦、セルビア戦に勝って、なんとかグループⅢの2位以内に入りたいところです。上位2チームに入れば、準々決勝に進出できます。史上初の準々決勝進出へ向けて、勝つしかありません。
次戦のルーマニア戦は12月9日(土)。日本時間の23時30分からと、見やすい時間帯になっています。リアルタイムの中継はIHFのYoutubeで。
フルマッチのアーカイブはSPORTSBULLからご覧ください。
ペンスポニュースレター(無料)に登録ください
スポーツ特化型メディア“Pen&Sports”[ペンスポ]ではニュースレター(メルマガ)を発行しています。ペンスポの更新情報やイベントのご案内など、編集部からスポーツの躍動と元気の素を送ります。下記のフォームにメールアドレスを記入して、ぜひ登録ください。
\ 感想をお寄せください /