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【ハンドボール】おりひめジャパンの切り札、グレイ クレア フランシスの決定力とスター性

第27回女子世界選手権の日本代表(おりひめジャパン)に選出されたグレイ クレア フランシス=2025年10月24日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで(原田写す)
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相手ゴール手前の6メートルライン。そのディフェンスの密集エリアで、もみくちゃにされながら体を張る彼女の片手にひとたびボールが収まると、チャンスだ。日本に得点の匂いが漂う。

2025年11月26日に開幕するIHFハンドボール女子世界選手権(オランダ・ドイツ共催)にアジア女王として挑むおりひめジャパン(女子日本代表)に選ばれたPV(ピヴォット)のグレイ クレア フランシス(熊本ビューストピンディーズ)。今年7月に就任したデンマーク人のモーテン・ソウバク監督(60)は、日本選手の特徴を生かす数々の戦術オプション「ジャパン・ウェイ」を追及しているが、その一つが彼女のポジションPV(ピヴォット)を生かしたポストプレーだ。

11月8日に都内であった代表メンバー発表記者会見でソウバク監督は言った。「ポストを使ったダイナミックな攻撃は世界と渡り合える日本の武器になる」。昨年12月のアジア選手権でベスト7(最優秀PV)にも選ばれた28歳は、ディフェンスに当たり負けしないフィジカル、プレッシャーを受けながら点を決めきる決定力、そして、女子ハンドボール人気に火をつけるだけのスター性に発信力も備えている。

グレイ クレア フランシスのInstagramよりPVトレーニング動画

目次

大けが乗り越え代表復帰

グレイ クレア フランシスが女子世界選手権の代表に選抜されるのは2021年スペイン大会以来、2度目だ。その間の2024年パリ五輪出場をかけて挑んだおりひめジャパンのメンバーリストには彼女の名はなかった。2023年3月の練習中、左足の前十字じん帯を断裂して、プレーできない時期が続いた。

2021年女子世界選手権(スペイン)に出場したグレイクレアフランシス(JHA提供)
2021年女子世界選手権(スペイン)に出場したグレイクレアフランシス(JHA提供)

「大学3年(筑波大)の時に1度、同じ左足の前十時じん帯を断裂していて、それが2度目でした。その後、代表からは外れていました」

「ケガしている時、本来だったら自分が出て活躍しているはずなのに、という葛藤がありました。広島であったパリ五輪アジア最終予選(2023年8月)も会場の2階席から観ていました」と唇をかむ。

「もちろん日本のみんなを応援していたけれど、ハンドボールをプレーする立場ではなく、観る立場になった悔しさは今も忘れていません」という。「しかも、韓国に1点差で負けてパリ五輪出場権を逃す結果に。その1点の重み、その1点を乗り越えて日本が勝つために、自分には何ができるか、リハビリの段階から考えていました。なので、代表復帰は常に頭に入れて取り組んできました」(下に記事が続きます)

2024年アジア選手権でベスト7選出

パリ五輪出場権を逃した女子日本代表は楠本繁生元監督が2024年春に退任した。グレイ クレア フランシスは同年12月のアジア選手権で代表に再び呼ばれた。その大会で、日本は韓国を破って20年ぶりにアジア選手権女王に返り咲き。アジア1位で世界選手権出場権を獲得した。

「監督が変わっても変わらなくても、自分はアジア、世界で戦えるおりひめジャパンをつくっていきたいという思いで、ずっとリハビリとトレーニングに励んできました。アジア選手権では、相澤菜月さん、中山佳穂さん、金城ありささんのように、私の強みであるライン際のポストプレーを生かせるバックプレーヤーに助けられました。自分だけの力ではなく、周りが生かしてくれたおかげで、ベスト7も獲得できました」と自信を深めた。

気がかりなのは、古傷のコンディションだ。合宿中も左ひざにはサポーター、練習後はアイシングを欠かさない。ただ本人の表情は明るい。

「左ひざは、右足と同じぐらい元気で、曲がりづらいとか、不安定感もありません。ただ2回同じところを断裂しているのでサポーターは外さないようにしています。練習後はひざは大丈夫でも、熱をもってしまうのでアイシング。ケアと練習中の予防は常に心がけています」(下に記事が続きます)

ソウバク新監督の構想にジャストフィット

就任間もないソウバク監督は日本選手の強味を生かす「ジャパン・ウェイ」を模索中。練習では選手に「スピード」の意識を植え付けようと「君たちはフェラーリなんだ」などと大げさな表現を使って鼓舞している。さらに監督が切り札になると考えているのが、PV(ピヴォット)によるポストプレーだ。その重要ポジションを担うのは代表18人中3人。最も高身長で180センチのサイズがある佐原奈生子(ハニービー石川)、165センチだが賢くユーティリティ性がある初見実椰子(三重バイオレットアイリス)、そしてフィジカルを生かしたディフェンスもいいグレイクレアフランシス。タイプの異なる三者三様のPVを選んだ。

グレイクレアフランシスは、「私の強みは(ディフェンスの手が届かない)低いポジションのワンハンドキャッチから、相手を振り回すピヴォットプレー。そこで自分がシュートまで行けたり、行けなくても相手の退場を誘ったりできる。そんな自分の強みを出したい。なので、意識的にパスを下に出すことをチームで徹底できたら」と話した。

インスタフォロワーは3千人間近

「父がオーストラリア出身なので、最初に話せるようになった言葉は英語でした。ソウバク監督の英語のコーチングで選手が理解できないときは、新井翔太コーチが通訳してくださるのですが、私も補助的にサポートしています。特に試合になれば、20秒も30秒も話していられない。私がパッと聞いてパッと伝達する。代表でもベテランの年齢に差し掛かってきたので、そんな『つなげる』存在でもありたいです」

Instagramのフォロワーは3千人間近。女子ハンドボール界きっての人気選手でもあるグレイ クレア フランシスは、強靭なフィジカルと技術、そして抜群のコミュ力でもおりひめジャパンを引っ張っていく。

グレイ クレア フランシス 1997年6月3日、神奈川県藤沢市生まれ。小学2年でハンドボールを始める。筑波大を経て、リーグH女子オムロンビューストピンディーズ所属。2021年12月にスペインで開催された第25回女子世界選手権で日本代表初招集。2024年アジア選手権でベスト7に選出。ポジションはピヴォット。

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