47年ぶりのアジア制覇を目指したハンドボール男子日本代表(彗星JAPAN)が決勝進出を前に力尽きた。クウェートで開催されている第22回AHF男子アジア選手権は2026年1月27日、準決勝があり、前回準優勝の日本はバーレーンに25-35(前半14-17)で敗れ、決勝進出ならず。3位決定戦にまわった。来年の世界選手権(2027年1月、ドイツ)の出場権を獲得した日本だが、アジアのライバルに圧倒された準決勝の敗戦を今後どう生かすのか。元日本代表でリーグH男子・アルバモス大阪高石監督の銘苅淳さん(40)が語った。

10年前の超アウェーの記憶
10年前、僕が日本代表で出場した2016年アジア選手権の準決勝も相手はバーレーンでした。開催地もバーレーンの首都マナマで、会場はアラブの白い民族衣装だらけ。日本の国歌の時に大ブーイングが起きて「うわー、これ超アウェイやん」と思いながらやったのを覚えています。その時は日本が23-29で負けた。あの記憶がふっとよみがえるくらい、バーレーンって、その場の空気ごと持っていくチームなんですよね。
この日のバーレーンもやっぱりいいチームでした。バーレーンではサッカーよりもハンドボールが人気だという話も聞きましたけど、やはり、国内リーグのレベルも高いんだと思います。99番のキャプテン、CBアルサヤド・フサインのような存在感のある選手が残っているのも納得ですし、21番のGKアリ・アブドゥルフセインも俊敏に動くので厄介でした。(下に記事が続きます)
前半からディフェンスの間を割られた

試合に入ると、日本は(高い位置で相手のバックプレーヤーに圧力をかける)オープンディフェンスを織り交ぜながらスタートしました。攻撃はセンターポスト絡みで形は作れていて、田中大介のパスからの流れも悪くない。渡部仁のゼロステップ気味のクイックシュートも出ますし、藤坂尚輝の“切っていく動き”も見えて、狙いはハッキリしていました。
ただ、失点の形が気になりました。バーレーンはディスタンスシュートもうまいし、右利きの右バックも強い。ステップで(シュートを)打つ文化があって、さらに何が嫌かって「一人抜いて、二人引きつけて、コンタクトされながらパスを出す」。このコンタクトパスが強いんです。結果として、サイドシュートやポストシュートじゃなくて、とにかく「間、間、間」で割られていく。市原宗弥がどこまで上がるか、二枚目の高さをどうコントロールするか。高すぎると低い二枚目から割られてしまいます。
二枚目の厚みを出して、三枚目に1対1をさせない。アダム(部井久)が入ってディフェンスが締まる時間帯もあって、渡部仁のクイックが冴える場面も出てきます。
前半は結局、ディフェンスのシステムをいじる以前に、1対1で「やるべきことをハッキリ」させること。サイドシュートの決定率を上げること。ストロングサイドで簡単に抜かれないこと。これらがテーマでした。
後半も「同じ割られ方」が止まらない

後半もいきなり厳しい展開でした。3分30秒で15-20、6分11秒で15-21。点差が開いていってきついんですけど、何がきついって「同じ割られ方」が止まらない。オープンに入れても、途中で下げても、バーレーンはシンプルに1対1で来る。怖がってない。フリースローも怖がってない。パスで崩そうともしてない。重戦車みたいに運んで、最後はしっかり決め切る。しかも国際大会っぽい「戦う空気」を作るのもうまい。
日本はタイムアウトを使ってフォーバックやオープン(ディフェンス)で流れを変えようとしましたが、13分04秒で15-24あたりになると、正直「修正というより、整理し直し」のレベルでした。ディフェンスは間が広すぎて、そこを確実に運ばれる。1対1をされたら二人寄らざるを得ない。寄ったら次が空く。理屈として分かっていても、相手のフィジカルと決定力が上回るともう止め切れない。そういう試合でした。
「守れない入らない」なかで渡部仁が孤軍奮闘
攻撃は渡部仁が孤軍奮闘に近い内容でした。チームトップの7得点。「渡部がいなかったら攻撃できない」と思えるくらい、世界と戦えるフィジカルとプレーの強度を見せ続けたのが渡部でした。しかも、7メータースローを取りに行くのじゃなくて「点数を取りに行ってる」という評価が象徴的で、苦しい状況でも勝ち筋を探す姿勢がある。ゼロステップ気味の近め、1歩で飛んでいく踏み込み、あれは完全に武器です。
勝負の分かれ目は結局シュートの精度でした。近めを空けられても「外してきた心理」が残るから打ち切れない、という連鎖が後半に出た。クロース(近距離)の成功率が体感で10〜20%に見えるほどで、決めるべきシュートが入らない。そこに相手GKが当たり続けて、守れない、入らないのダブルパンチになりました。
最終的にスコアは25-35。切り替えて次に何を積み上げるか、宿題がはっきり見えた後半でした(下に記事が続きます)
3位決定戦に全集中
結果を出さないと、どれだけ意思や理想を語っても、日本代表は結局は評価されない、取り上げてもらえない。それが現実です。でもこの日のバーレーン戦は、もう引きずっても意味がない。切り替えて次に残っている3位決定戦に集中する。このメンバーで一緒にできる最後の試合の価値に集中する。これが一番大事です。
決勝に行けなかったのは悔しいけど、逆に言えば、このレベルでガチンコの国際試合をもう一度できる。3位決定戦の相手は再びクウェート。大会終盤の疲労も溜まった状態で、完全アウウェーのなかもう1試合できる。これは実戦教材としてデカいです。だから「次につながる、つながらない」じゃなくて、この1試合に全精力を傾ける。それが代表としての姿勢であり、選手個人として価値を発揮する場でもあります。
勝って締める大切さ。若手はもっと存在感を
3位決定戦は、メダル以上に「勝って終わる」ことが大事です。負けて終わるのと、勝って終わるのは、チームの記憶として全然違う。10年前も僕たちはバーレーンに負けて、最後にサウジに勝って3位だった。それしか覚えてないくらい、最後の勝ちは残るんですよ。
準決勝のバーレーン戦は、心理的に落ちていって、シュートが打ち切れなくなって、悪循環に陥った。ディフェンスも「やられちゃダメなところ」でやられ続けて、全局面で引きずった。相手は奇抜なことをしてないのに、ボールを失わず、愚直に強いプレーを繰り返した。日本はそこで後手を踏んだ。
だからこそ次は、自分たちがやるべきことを60分やり切って、勝って終わる。特に若手はビビらず、もっと存在感を出してほしいです。このチームでできるのはこれが最後。世界選手権はまた違うチームになる。つまり今のメンバーで戦える残り60分のラストダンスです。腹をくくって、最後に勝って締めてほしい。



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