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【サッカー】W杯予選 オーストラリアへの敗戦で見えた日本の課題と解決策

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サッカー日本代表は2025年6月5日、豪州のパーススタジアムで北中米ワールドカップ・アジア最終予選グループCのオーストラリア戦に臨み0-1で敗れた。同予選の初黒星で、オーストラリア代表に負けるのは実に16年ぶり。

代表チームが敗戦を許容することは、あってはならないが、森保ジャパンがW杯本大会に向けて積極的にテストを行った結果だ。この一見塩試合に隠された大きな収穫について検証する。

目次

強豪相手にアウェイで最高のテスト試合

すでにグループ首位が確定しワールドカップ本大会出場が決まっている日本のイレブンのうち実に9人が最終予選で初先発となり、テスト的な位置づけが明確になった。

日本代表は常連組の多くを招集しなかったが、2024年10月の日本での試合の時よりもさらに守りを固めてきたオーストラリア。勝点が必要な状況でホームでの試合にもかかわらず守備的に戦ったオーストラリアは、明らかに日本を格上だと見なしていた。また、予選終盤になり、勝点1以上を狙う計算があったことがうかがえる。このままグループ2位を維持できればワールドカップ出場が決まるからだ。

試合は日本がボールを支配し、シュートこそ打ったが大半が遠くからで、ゴール前ではほとんど有効打は繰り出せなかった。

そして、そのままスコアレスドローかという90分に、絵に描いたようなサヨナラ弾が飛び出した。豪州は、ジェイソン・ゲリア(アルビレックス新潟)のゴール中央への強いパスを受けたライリー・マッグリー(ミドルズブラ)が、鋭いターンで右サイド深くに抜け出して折り返す。そのボールをアジズ・ベヒッチ(アル・ナスル)が右足で強烈に叩き込み、これが決勝点になった。

オーストラリアにとっては願ってもない成果だ。個を強調する森保ジャパンだが、逆に個の力で破られてしまった。日本は土がつき、6勝1敗2分になった。(下に記事が続きます)

ポゼッション貧乏を脱却せよ

2024年10月にもW杯予選でオーストラリアと対戦しているが、今回とあわせた2試合のデータを比較すると見えてくることがある。

日本のボールポゼッション率は69%で、2024年の埼玉での試合の65%よりも今回のほうが高くなり、シュート数も増えた。一方で、2024年の試合で豪州に打たれたシュートは1本(枠内0本)だったのに対して、今回は6本(枠内3本)のシュートを打たれた。2024年の試合では、日本が支配し優勢に進めながら、惜しくも1-1で引き分けた。得点は、いずれもオウンゴールだった。

一方で、今回の試合では、日本はボールを持たされながら攻めあぐねてチャンスらしいチャンスをつくることができずに、オーストラリアの方が決定機をやや多くつくった。ディフェンスラインに5枚を配置した豪州は、ある程度、日本にボールを持たれるのは想定していたはずだ。

2024年の試合はオーストラリアにとってアウェイだったが、まだグループリーグの序盤であり細かい星勘定はせずに、守備的で堅実なプレーをしながらも前に出るところは出てきていた。そして58分にオーストラリアが先制後は、丁度今回の試合のように後方をガッチリと固めた。ホームでビハインドという、どうしても得点がほしい状況の日本は打開を試みた。そして76分、中村敬斗がドリブル突破からのクロスで相手のオウンゴールを誘発。その後も個の突破が目立ったが、勝ち越すまでには至らなかった。

シュートをあまり打てなかった試合でも、日本はコーナーキックを獲得している。フリーキックやコーナーキックといったセットプレーも有効活用したい。そのままボールを上げても、日本は空中戦の高さがあるわけではない。W杯本大会まで隠しておいてもいいので、勝負用のFK・CKのパターンをつくっておきたい。

[北中米ワールドカップ・アジア最終予選データ]日本:オーストラリア

2025年6月5日、パーススタジアム(豪州パース)

  • [スコア]0-1
  • [ボールポゼッション]69%:31%
  • [シュート数]13本:6本
  • [枠内シュート数]1本:3本
  • [コーナーキック数]8本:1本

2024年10月15日、埼玉スタジアム2002

  • [スコア]1-1
  • [ボールポゼッション]65%:35%
  • [シュート数]12本:1本
  • [枠内シュート数]3本:0本
  • [コーナーキック数]9本:0本

3バック・5バックはサイドを突け

この2試合から分かることは、相応の実力があるチームに引いて守られると、日本は攻め手を欠くということだ。

主力が揃っていた2024年の試合では、ある程度は個々の力で崩すこともできたが、今回の試合ではかなり限定的だった。そして、64分に常連組の久保建英と中村敬斗が途中出場してから、アタッキングサードでの有効な攻撃が増えた。

個人の能力が糸口になりうるが、今回の試合ではそのような場面はあまり見られなかった。個人で打開できないなら、連携でもいいのでバイタルエリアまで侵入する方法を編み出す必要があるだろう。また、W杯本戦になったら、日本の常連組のタレントでも打開が難しい状況も想定しうる。連携で崩す形も持っておきたい。

まず、オーストラリアのように3センターバックの場合、両脇のスペースが弱点になりうる。サイドをうまく突くことで、中央のスペースも空いてくる。

ただし、守備固めをするチームが必ずしも3CBとは限らない。相手がどんなシステムでも有効な手段がある。(下に記事が続きます)

守備固めをするチームの攻略法は?

この試合の49分に光明が射した。GKからDFラインにつなぎ、縦にフィードを入れたパスを中盤で3人目の動きで細かくつなぐ。そして左サイドで俵積田晃太(FC東京)が前を向いてボールを受けるとペナルティエリア内に侵入してシュートまで行った。守備エリアから中盤を超特急で通過してシュートまでに要したのは、ほんの数秒だった。このプレーをモデルケースとして、チーム全体で共通認識を持ってほしい。

どんなに引いたチームであっても、相手GKにボールがあれば、さすがに前に出てくる。その際に中盤にできたスペースを素早い連携で突破して一気に前線に展開する。この形をオプションとして持っておくのが有効だろう。

攻撃の際に勇気を持ってDFが深く陣取ってボール回しをして選手をおびき寄せるのだ。現状だと、中盤までボールを運んだ際にDFラインを上げてスペースを埋めるようにしている。これは、ボールを奪われた際の守備への対応においては正しいし、守備エリアを脱して早く前に行き攻撃を厚くしたいという心理も理解できる。しかし、ボール保持ができる状況であれば、付け入るスペースをつくるために深くポジションどりをしてほしい。

判断を誤ると守備が出遅れるリスクもあるが、この戦術的な変更を行うことで、チームとしての突破力が増す。個人の突破力を1年で劇的に向上させるのは難しいが、ポジショニングを変えるのは、意識次第で今すぐにでもできることだ。

守備陣から統一された攻撃意識を

2024年の試合では、守備的MF守田英正(スポルティング・リスボン)が後方に下がってきてビルドアップをしながらシステムを変動させてアクセントになっていた。後方から攻撃をつくる意識は重要だ。

守備固めをしてくる相手に対しては、足元でのボールさばきが得意なGKとDFを後方に配置。一度GKにバックパスをしてつくり直してもいい。今回の試合では、そのようなシーンは皆無だった。守備の選手はどうしても攻めよりも守りの意識が高くなりがちだ。個を尊重する方針とはいえ、勝つための共通認識をチームが持つために、監督やコーチがイニシアチブを発揮することも必要になるだろう。

今回の試合には敗れはしたが、強豪との対戦でこのような引いて守る相手への対処法という課題が浮き彫りになった。強度が高い試合でテストができたことは非常に有意義だったといえるだろう。

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