日本のクラブチームがアジア、その先の世界へ挑戦するのは、サッカーやバレーボールでは今や当たり前の流れだが、ハンドボール男子でようやくそれが実現する。豊田合成ブルーファルコン名古屋とブレイヴキングス刈谷。このリーグH男子の2強クラブが2026年春、クウェートで開催される第28回アジア男子クラブリーグ選手権(4月6日〜16日)に日本勢として初めて、出場することが決まった。
優勝クラブはアジア王者として、2026年秋にエジプトで開催されるIHF男子クラブ世界選手権(スーパーグローブ)への出場権を得る。少し気が早いが、世界への唯一のルートに初めて踏み出すことで、日本のクラブがFCバルセロナなどのトップクラブと対戦する可能性も広がる。サッカーでは古河電工サッカー部(現・ジェフユナイテッド市原・千葉)がアジアクラブ選手権に初出場してそのまま初優勝したのが1986年。つまり、サッカーに遅れること40年、ようやく日本の男子ハンドボールクラブがアジア最強を決める舞台に立つ。
「中東の笛」の名付け親、「機が熟した」


2025年に休刊した『スポーツイベント・ハンドボール』元編集長で、現在は日本ハンドボール協会広報の野村彰洋さんは「ここにきてようやく機が熟した。アジアナンバーワンの座を争う大会に出場することは国内リーグの上位クラブにとっての悲願でした」と話す。野村さんは2007年に北京五輪予選の「やり直し」に発展した審判の中東びいきの判定を指す「中東の笛」の名付け親として知られる。
「アジア男子クラブリーグ選手権」はアジアハンドボール連盟(AHF)が主催するアジアの男子クラブを対象とした国際大会。年次開催で今年で28回目と歴史はあるが、伝統的にカタール、サウジアラビア、クウェートなどの中東のクラブが中心となって運営されてきた背景がある。開催地も中東に偏っている。
今年の大会も当初、サウジアラビアで開催予定だったが、「不測の事態」を理由に大会誘致を辞退。急遽、2月中旬にクウェートに開催地が変更された。中東ではこのように会場や日程が直前で変わることが珍しくなく、その「不確かさ」や遠征費の負担がこれまで日本のクラブにとっては、出場に二の足を踏む要因の一つになっていた。(下に記事が続きます)
リーグの価値向上、日本代表の経験値に
しかし、日本ハンドボール協会の野村さんは「中東のハンドボールもずいぶん変わった」と話す。「笛は正常化され、観客の雰囲気も変わりました。中東といえば以前は女人禁制、男性だけの異様な雰囲気でしたが、女性や子どもの姿もみられるようになり、試合に熱狂しています。1月に彗星JAPAN(男子日本代表)が出場したアジア選手権(クウェート)では、ロッカールームにいる日本選手を女性リポーターが取材していた動画に驚きました」
「中東の笛の力がなくても、もともと中東勢は強かったし、力があった」と野村さん。そして近年も、多額の資金を背景に、欧州から世界トップクラスの選手を帰化させたり、指導者を招いたりして高いレベルを維持している。「中東勢は今大会のためだけに選手を短期契約で補強したりすることもあるでしょう。(日本代表主力の)安平光佑が所属するブルガンSC(クウェート)と日本のクラブチームが対戦する可能性もあるかもしれません」と野村さんは話す。五輪出場権獲得を目指す日本代表でも、中東勢は避けて通れない相手。挑戦する価値は存分にありそうだ。出場チームが出そろい、ドロー(組み合わせ抽選)がどうなるのか。今から楽しみである。
プロリーグ化を標ぼうするリーグHの代表、豊田合成ブルーファルコン名古屋とブレイヴキングス刈谷がアジアクラブリーグ選手権に初挑戦し、競争力を高めることは、リーグ全体の価値向上への一歩に繋がりそうだ。さらにはこの2クラブから多数選出されるであろう彗星JAPAN(男子日本代表)にも、2028年ロサンゼルス五輪の出場権獲得へ向け、その経験値が蓄積されるだろう。 日本ハンドボール界のプロ化と国際化を象徴する重要な遠征になることを期待する。(下に記事が続きます)
【豊田合成ブルーファルコン名古屋】田中 茂 監督コメント

「日本のチームとして史上初めてアジアの舞台に立てることを、大変光栄に思うと同時に、身の引き締まる思いです。我々が「世界に通用するチーム」に成長していくための、本大会は大きな挑戦となります。最善の準備をし、アジアのパワーやスピードを肌で感じながら、挑んでまいります。チームの次なる目標へ向けて、そして日本ハンドボール界の先駆者として、アジアの頂点、さらには世界へと続く道を切り拓いていけるよう戦い抜きます」
【ブレイヴキングス刈谷】ラース ウェルダー ヘッドコーチコメント

「私たちは、4月6日から16日にクウェートで開催されるアジアクラブ選手権への出場権を獲得できたことを、大変誇りに思い、非常にうれしく感じています。また、出場を支援し、参加を認めてくださったトヨタ車体に心より感謝申し上げます。これは、チームとして成長し、非常にレベルの高い国際チームと対戦できる素晴らしい機会です。国際舞台において、日本ハンドボールおよびトヨタ車体を代表できる貴重なチャンスでもあります。
豊田合成ブルーファルコン名古屋も同様に出場権を獲得しており、私たちが協力して、日本を良い形で代表する責任があります。両チーム合わせて12~14名の日本代表選手が在籍しており、これらの試合は選手個々のレベル向上につながり、日本代表チーム全体にとっても大きなプラスとなります。したがって、私の考えでは、これは私たちのチームにとってだけでなく、日本ハンドボール界全体にとっても「Win-Win」の状況です。大会に良い足跡を残せるよう、全力を尽くし、懸命に取り組んでまいります」
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