【編集長コラム】10年前の署名記事「カヌーの聖地」で偶然の再会

Pen&Sports編集長コラム
10年前に書いた自分の署名記事を見つけた筆者=2026年4月、愛知県みよし市の三好池カヌーセンターで
  • URLをコピーしました!

先週末の出来事だった。運命的なつながりを感じる不思議な体験をした。

2026年9月19日に開幕するアジア最大のスポーツの祭典、愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会の組織委員会にジョインして3週間。カヌー・カヤック(スプリント)競技のVGM(べニュー・ジェネラル・マネジャー)を拝命した。カヌー競技会場の安全・安心で円滑な運営を計画、統括するのが私のミッションだ。

カヌー・カヤック(スプリント)競技会場は名古屋市から車で1時間ほどのみよし市にある三好池。1994年愛知国体のカヌー会場だった場所で、それを契機にみよし市は「カヌーの聖地」として全国トップレベルの選手を輩出してきた歴史がある。2028年度には全国高校総体(東海総体)のカヌー競技がここで開催される。

目次

壁に貼られた見覚えのある記事

三好池のほとりにある「カヌーセンター」で愛知県カヌー協会会長に初めてあいさつし、しばらくそこで事務作業をしていると、会長席の後ろの壁に貼ってある新聞記事の切り抜きに目が留まった。そのうちの一番大きな記事に見覚えがあった私は壁に近づいて思わず声を出して驚いた。朝日新聞記者時代の10年前に私が書いた署名記事だった。

「2016年7月26日」の日付が刻まれた色褪せた紙面は、リオ五輪直前にカヌー・スラロームの羽根田卓也とその親友とのエピソードを綴ったものだった。高校卒業後に事故で脳に障害を負い、全身が麻痺して車いす生活になった親友は羽根田の活躍を励みにリハビリを続け、奇跡的に回復中だった。羽根田はLINEでリオデジャネイロ五輪前、「今度会うときは(車いすから)立って話すぞ。俺もがんばる」と励ましていた。私はその話を羽根田自身から聞いて記事にした。(下に記事が続きます)

想定していた羽根田卓也のメダル

私はその記事で羽根田が「五輪の表彰台を狙える力がある」と書いた。愛知県カヌー協会会長ですら、それが現実になるとは思っていなかったそうで、メダル獲得翌日の朝は取材依頼などでカヌーセンターの鳴りやまぬ電話対応に追われたという。羽根田が実際にカヌー競技でアジア人初の五輪メダルを獲得した瞬間を現地で取材していた日本人記者は私を含めて数人だけ。その巡り合わせ自体も奇跡のような出来事だった。

羽根田の実家はみよし池から車で15分ほどの愛知県豊田市にある。小・中学生のころは、毎週水曜日に三好池で練習したと本人から聞いた。羽根田の専門は急流で競うカヌー・スラロームだが、池などの静水で競うカヌー・スプリントがカヌーを始めた原点だった。

その記事に「再会」してしみじみ感じた。10年前は新聞社を辞めてPen&Sportsを運営していることも、こうしていまアジア大会組織委員会でカヌーに関わっていることも、みよし市に来ることも全く想像していなかった。それなのに、私が書いた記事を10年間も貼ってくれている場所に偶然、カヌーの担当になっていざなわれたーー。ペンの引力が「カヌーの聖地」との縁を引き寄せてくれたと感じた。

愛知・名古屋アジア大会でカヌー・カヤック(スプリント)競技の会場となる愛知県みよし市の三好池カヌー競技場(原田写す)
愛知・名古屋アジア大会でカヌー・カヤック(スプリント)競技の会場となる愛知県みよし市の三好池カヌー競技場(原田写す)

Pen&Sports ニュースレター(無料)に登録する

スポーツ特化型メディア“Pen&Sports”[ペンスポ]は毎週、無料ニュースレターを配信しています。原田亜紀夫編集長が勝ち負けを伝えるだけに終わらない、舞台裏のストーリーや本質に焦点を当てたコラムをお届けします。読めばニュースの見方が多面的になり、きっと気づきがあるはずです。登録・解除はいつでも可能です。

個人情報の扱いはプライバシーポリシーをご覧いただき、同意の上でお申し込み下さい。

  • URLをコピーしました!

\ 感想をお寄せください /

コメントする

目次