日本バドミントン協会が2023年7月4日、目を疑うような事務ミスを発表した。カナダ・カルガリーで同日、開幕したカナダ・オープンに出場予定だった大堀彩選手(トナミ運輸)の入国書類に不備があり、その影響で2024パリ五輪を目指す大堀選手のカナダ・オープンへの出場が叶わなくなったという内容だった。
大会欠場が影響、女子単の世界ランク降格
大堀彩選手プロフィール
日本バドミントン協会が7月4日に発信したプレスリリース
大堀選手は7月4日時点で、女子シングルスの世界ランキングで20位だったが、大会欠場を余儀なくされたことにより、7月7日には24位に降格。国内では山口茜選手(再春館製薬所)に次ぐ2位につけるパリ五輪代表有力候補の一人だけに、代表争いへの影響が避けられない事態となっている。パリ五輪の男女シングルスの出場枠はそれぞれ「16」。パリ五輪の出場選手は、出場したオープン大会のうち成績上位の10大会分でランキングが作られて決まる。
関係者によると、日本バドミントン協会は代表選手の入国手続きをオンラインでおこなった際、大会側から大堀選手に対して健康診断の書類を追加で提出するように求められた。ところが協会はこれを見落とし、放置してしまったという。
協会は「大堀選手および所属チーム関係者の皆さまには、多大なるご心配とご迷惑をおかけしますことを深くおわび申し上げます」と謝罪。他の大会への派遣を行なうとしたが、パリ五輪出場を目指す選手にとってのチャンスの芽が、日本協会のずさんなミスで一つ摘まれてしまったことに変わりない。
リオ五輪女子ダブルス「金」高橋さん「非常に残念」
この事態に、バドミントン元日本代表でリオデジャネイロ五輪女子ダブルス金メダリストの高橋礼華さんも、7月4日のうちにYahooニュースにコメントを寄せる形で反応。大堀選手の心情を思いやり、激励するとともに、協会には「選手が競技に懸ける思いと同じように、協会の方々も一緒に歩んでほしい」と訴えた。
高橋礼華さんのコメント
今回のカナダオープンはSUPER500というグレードの大会ですが中国、韓国という強豪国が出場していない大会のため大堀選手は十分上位進出ができるチャンスはありました。
オリンピックレース中の大会を1つ欠場するだけでも選手にとってはかなり痛手となります。 ましてや世界ランキング1桁の選手が数人しか出ていない大会も中々ないと思うので非常に残念です。 昨年、ジャパンオープンの混合ダブルスで齋藤夏選手の名前を間違ってエントリーしてしまい同じ間違いは二度としてはいけないはずなのになぜこのような事がまた起きてしまったのか疑問に思います。
また違う大会にエントリーすればいいという問題では済まされないと私は思います。 大堀選手は今は悔しい気持ちでいっぱいだと思いますが、また次の大会に向けて調整に励んでほしいなと思います。 そして選手が競技に懸ける想いと同じように協会の方々も一緒に歩んでほしいと強く願います。(原文)
Yahoo!ニュースコメント
手続きミスの黒歴史
五輪にまつわる「手続きミス」をめぐっては過去に、もっととんでもない事件が起きている。日本の男子ホッケーだ。ホッケー男子日本代表は1970年アジア大会(バンコク)でパキスタン、インドに次ぐ3位に入り、1972年ミュンヘン五輪への出場権を確実にしていた。
日本ホッケー協会は当時、五輪関連の派遣事務を担っていた日本体育協会(現日本スポーツ協会)に予備エントリーを依頼した。
ところが、日本体育協会が国際オリンピック委員会(IOC)にエントリーに関わる必要文書を提出し忘れ、出場が叶わなくなった前代未聞の事件が起きた。ホッケー協会百年史には、体協・JOCが五輪出場に必要な「予備エントリーに関する処理を忘却」と悲しい歴史が記されている。
人間誰にでもミスはある。しかし4年に一度、いや一生に一度のオリンピックにすべてを懸けているアスリートの夢が、他者のヒューマンエラーによってついえる悲しみは計り知れない。スポーツにデスクワークで関わる身としては自戒もこめてダブルチェック、トリプルチェックを心がけたい。
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